[TOPに戻る] [利用方法] [アイコンの説明] [管理用]

  『おくりびと』恐るべし
2009年03月03日 (Tue)

 今日、火曜日は毎週興行成績が発表される日。そして、今週の興行成績で前代未聞の異変が起きた。アカデミー外国語作品賞を受賞したあの『おくりびと』が、堂々の首位に輝いたのだ。

 そもそも、公開以来25週という超ロングランを続けているだけでも信じ難いのに、25週目にして初の1位とは、もう奇跡を通り越して神懸かりだとしか言いようがない。ちなみに、前週の興行成績1位となった『チェンジリング』が、初日の金曜から日曜までの3日間で19万2,000人の動員に対し、『おくりびと』は2月28日(土)と3月1日(日)の2日間で、映画の日を含むこともあってか29万8,000人の動員数だから、その凄さがわかるだろう。

 もちろん、これだけの成績を挙げても不思議でない作品であることは間違いない。だが、公開1週目には同じ週に封切られた『パコと魔法の絵本』や『大決戦!超ウルトラ8兄弟』にかなわずに5位でのデビューだった作品がここに来て首位に立つとは、過去にこれほどアカデミー賞が興行成績を押し上げた作品はない。

 これには、日本人の「権威に弱い」という資質、殊に海外のオーソリティには盲従してしまうという資質が大いに影響していると思われる。10,000人が同じ作品を観た場合、10,000万人が残らず「面白い」と感じる作品は、私はあり得ないと思っている。たとえ9,999人までが面白いと感じても、残り一人にとっては「どこが面白いのだ?」と感じるのが当然だ。ところが、映画に関しては最も権威のある賞であるアカデミー賞を受賞したとなると、アカデミー賞受賞作なんだから面白いはずだ、という先入観を持ってしまい、ひいてはこれが面白い映画なのだと自分の正直な印象と無意識にすり替えてしまう。そして、感想は「本当に面白かった」ではなく、「さすがアカデミー賞を受賞した作品だ」となるのだ。

 ここでわかったような事を言っている私にしたって、その例には漏れないと思う。公開初日に観て星8個という評価を付けたが、もしもアカデミー受賞後に初めてこの作品を観ていたならば、星の数が9個あるいは10個に増えていないとは断言できない。

 ただ、この作品はその内容にもかかわらず、今までは告知不足のために今ひとつ集客ができなかった。そして、アカデミー賞受賞がこれ以上はない宣伝となって、観客の鑑賞意欲を喚起したというのもまた事実だ。

 ここまで来たらもう屁理屈をこねるのはやめて、素直に記録をどこまで伸ばすのか、期待して見守って行きたい『おくりびと』の狂い咲きとも言える異常人気である。





No.230

- WebCalen -