File No.0263
製作年/公開日 1999年 / 2002年05月25日 製  作  国 ドイツ / ハンガリー
監      督 ロルフ・シューベル 上 映 時 間 115分
公開時コピー  死へ誘う、禁じられた旋律
最初に観たメディア
 Theater  Television  Video
キ ャ ス ト
 エリカ・マロジャーン [as イロナ・ヴァルナイ]
 ヨアヒム・クロール [as ラズロ・サボー]
 ベン・ベッカー [as ハンス・ヴィーク]
 ステファノ・ディオニジ [as アンドラーシュ・アラディ]
あ ら す じ  ハンガリーの首都ブダペストにあるレストラン・サボーに、戦後のドイツに一代で財をなしたハンス・ヴィークが誕生祝いに家族と訪れる。彼は「暗い日曜日」の演奏をオーダーするが、曲の途中で苦悶のうちに亡くなってしまう。
 1930年代。レストラン・サボーの経営者ラズロと彼の美しい恋人イロナは、ピアニストのアンドラーシュを雇い入れたが、次第にイロナとアンドラーシュは惹かれあい、3人は奇妙な恋愛関係を成立させる。アンドラーシュはイロナのために作曲した「暗い日曜日」をレストランで演奏するが、その「暗い日曜日」が話題に上り、レコード化され瞬く間に世界中に広まった。しかし、「暗い日曜日」のレコードを聴きながら自殺する者が後を絶たないという知らせがアンドラーシュを苦しめる。
 その頃、かつてイロナに求婚までした客のハンスが、ナチスの幹部としてブダペストに戻る。彼は店で強引にアンドラーシュに「暗い日曜日」の演奏を要求したため、人前では決して歌わないイロナが歌って場を取り繕う。そんなイロナの姿を見たアンドラーシュは、自分の曲のためにイロナを苦しめたことを悲観して自殺してしまうのだった。
 やがてハンガリーにもナチスによるユダヤ人迫害の手が伸び、ハンスはイロナの身を呈した懇願を裏切ってラズロをアウシュヴィッツのユダヤ人収容所に連行してしまう。アンドラーシュの墓を見舞うイロナ。ついにラズロをも失った彼女だったが、彼女の中には新しい命が息づいていたのだ。
 そして、現在。店の洗い場には、「暗い日曜日」を口ずさみながら、かつてアンドラーシュが自殺のために常備していた薬の小瓶を洗う、年老いたイロナの姿があった。そして、ハンスの死を見届けた彼女は、息子と祝杯をあげるのだった。
たぴおか的コメント  「暗い日曜日」とは実在するシャンソンの曲で、1930年代にこの曲を聴いて自殺する者が続出したため、実際に各国で発売禁止になったという曰く付きの曲。作品は、第二次大戦前のナチスによるユダヤ人虐待の中で、ひとりの美しい女性と2人の男性の愛を描いた物語。「ひとりの美しい女性」と書いたが、その言葉通り主演のエリカ・マロジャーンが本当に美しく、一目彼女を観て参ってしまった(笑)。全体的に非常に丁寧に作られていると感じる作品で、例えばイロナとハンスの誕生日が同じ日だったり、アンドラーシュが自殺のために心臓を止める薬を持っていたりすることが伏線となり、クライマックスで見事に調和している。「暗い日曜日」の旋律とともに、心に余韻を残す名作だ。