評     価  

 
       
File No. 0265  
       
製作年 / 公開日   2004年 / 205年04月16日  
       
製  作  国   スペイン  
       
監      督   アレハンドロ・アメナバール  
       
上 映 時 間   125分  
       
公開時コピー   約束しよう。
自由になった魂で、きっとあなたを抱きしめる。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ハビエル・バルデム [as ラモン・サンペドロ]
ベレン・ルエダ [as フリア]
ロラ・ドゥエニャス [as ロサ]
クララ・セグラ [as ジェネ]
マベル・リベラ [as マヌエラ]
セルソ・ブガーリョ [as ホセ]
タマル・ノバス [as ハビ]
ホアン・ダルマウ [as ホアキン]
フランセスク・ガリード [as マルク]
 
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あ ら す じ    スペイン、ラ・コルーニャの海で育ったラモン・サンペドロは、19歳で船のクルーとなり世界中を旅して回る。だが、1968年8月23日に25歳の彼は岩場から引き潮の海へダイブした際に海底で頭部を強打し、首から下が完全に麻痺してしまう。
 以来、家族に支えられながらも、ベッドの上で余生を過ごさなければならなくなったラモン。彼にできるのは、部屋の窓から外を眺め、想像の世界で自由に空を飛ぶことと、詩をしたためることだけ。やがて事故から20数年が経ち、彼はついに重大な決断を下す。それは、自ら人生に終止符を打つことで、本当の生と自由を獲得するというものだった。そしてラモンは、彼の尊厳死を支援する団体のジェネを通じて女性弁護士フリアと対面し、その援助を仰ぐことになる。また一方、貧しい子持ちの独身女性ロサがドキュメンタリー番組でのラモンを見て心動かされ、尊厳死を思いとどまらせようと訪ねてくるのだった。
 ある日、ラモンの詩を読んでいたフリアが倒れる。実は彼女は治療法もない病に冒されていて、やがて体の自由を失い痴呆症になる運命にあった。彼女はラモンに、詩を本にして発刊することと、本が出来上がったら一緒に命を絶つことを持ち出すのだったが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    首から下が麻痺して動けない主人公を通して生と死の意味を問いかける作品で、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞を、ヴェネチア国際映画祭では主演のハビエル・バルデムが男優賞を受賞している。この作品を観た限りでは、ハビエル・バルデムはてっきり50歳を過ぎたオッサンだと思っていたら、実はまだ30代と知って驚いた。しかも、スペインでは二枚目俳優で通っているとのことでさらにビックリ。二枚目かどうかは主観の問題だから深く追求はしないが、30代の若さというのはどう観ても年齢詐称だとしか思えない(笑)。
 四肢を動かせない役だから、当然台詞と表情が通常の役柄よりも重要になってくるが、そのあたりの演技は見事なものだ。ラモンの細かな心の動きまで手に取るようにわかる、そんな巧みな演技が光る。とは言うものの、この作品のテーマとなっている「尊厳死」については反論せずにはいられない。そして、私は断じてラモンの選択には賛同することはできないのだ。
 自発的に生きているわけではなく、周囲の人々によって“生かされている”ラモンは、意識のある植物人間状態だ。そして、そんな状況ではもはや生きる目的や生きる意義を喪失してしまうのは充分に理解できるつもりだ。しかし、だからと言って尊厳死を認めるかというと、それは別問題だ。そもそも尊厳死とは何?死に尊厳などあるのだろうか?いかなる理由付けをしようと、どういう形を取ろうと、「死」は「死」以外の何物でもなく、従って死に尊厳などあろうはずがない、と私は思う。ラモンを生かしておきたいと思うのは、もしかしたら周囲のエゴなのかもしれない。けれども、ラモンに生きていて欲しいと周囲の人がが願う限り、そこに生きる意義・目的は存在する、そう考えるのは無謀だろうか。
 なんていう理屈を並べてみても、所詮は死を真剣に考えるような状況に追い込まれたことのない者の独善的な理論なのかもしれない。けれども、自殺とは一見相当な決意を要する行為のように思えるが、実は最も安易な手段なのだ。生きることは時として死を選ぶよりも難しい。それでもなお生きることを諦めずに、天命を全うするまでとことん生き抜く、そんなラモンであったならば、私は惜しみない賞賛を贈りたいと思うのだが。