『Shall We ダンス?』の周防監督が日本の裁判のあり方に疑問を抱き、その問題点を描くことを試みた社会派の作品。瀬戸朝香扮する新米弁護士はともかく、役所広司扮するベテランの荒川までが全力を注いで弁護に当たる、それほどの事件とは思えないし、また多額の弁護士費用と裁判費用を支払えるのか、などという現実的な疑問が浮かんだものの、140分を超える長い尺にもかかわらず、全く退屈させない出来はさすがだ。裁判は正義を行う場ではない、それはわかっていたのだが、今回改めてそのことを再認識させられた。裁判制度の問題点、それは日本に限ったことではないだろう。なぜなら、刑事事件において真実を知るものはただひとり真犯人のみであり、裁判から導き出されるものはあくまで「真実と思われるであろう」という推測に過ぎないから。しかし、裁判官は事前に先入観を持たないために、新聞などを読むこともできないと聞いている。それほどまでに神聖な職業であるにもかかわらず、所詮は自分の判決が上訴審で覆されることをおそれる、所詮は自分が可愛いただの人間なのだ。それはともかく、男性諸君、満員電車では気をつけましょう。この作品の主人公金子徹平は、明日の我が身とならない保証はありませんから。