JR新大久保駅で、線路に転落した男性を助けようとして亡くなった韓国の留学生イ・スヒョンさんを、フィクションを交えて描いた作品。どこまでが実話でどこがフィクションなのかわからないが、全体としては不自然さのないしっかりとした作りの作品になっている。文化庁支援とあって、単にひとりの男性の人生を描くに留まらず、日韓両国間の理解不足による偏見や不当な扱い、さらには韓国と北朝鮮の対立までをも取り込むという、実に欲張った内容になっている。主人公スヒョンを演じるのは、2000人のオーディションから選ばれたという新進俳優イ・テソンで、嫌みのないさわやかな演技は好感が持てる。スヒョンと恋におちるユリ役は、沖縄出身のバンドHIGH and MIGHTY COLORのヴォーカル・マーキー。存在すら知らなかったバンドだが、そのヴォーカルの歌声は確かに観る者の心に響く。そして、そのピュアで瑞々しい演技も歌声に負けず、映画初出演とは思えない存在感がある。脇を固める俳優陣も竹中直人を筆頭に個性派が揃い、作品に膨らみを与えている。オススメ。