【File No.0491】
製作年/公開日 2006年 / 2007年02月10日 製  作  国 ド イ ツ
監      督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 上 映 時 間 138分
公開時コピー  この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない
最初に観たメディア
 Theater  Television  Video
キ ャ ス ト
 ウルリッヒ・ミューエ [as ヴィースラー大尉]
 マルティナ・ゲデック [as クリスタ=マリア・ジーラント]
 セバスチャン・コッホ [as ゲオルク・ドライマン]
 ウルリッヒ・トゥクール [as グルビッツ部長]
あ ら す じ  1984年、壁崩壊前の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓う真面目で優秀な男だった。ある日彼は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンとその恋人の舞台女優クリスタを監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。任務に成功すれば、出世が待っていた。早速ドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、予期しない事態にヴィースラーは戸惑った。音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界にヴィースラーは知らず知らずのうちに共鳴し、監視する自分自身が変えられていくのがわかったのだ。そして、ドライマンがピアノで弾いた“善き人のためのソナタ”という曲を耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられてしまう。
 ドライマンが友人と共に東ドイツの自殺の現状を記事にし、西側の雑誌に掲載する決意をする。もちろん、ヴィースラーはこれを察知したが、彼はドライマンが友人と新作の脚本を書いていると虚偽の報告をする。やがて、クリスタが薬物の不法所持で逮捕され、ドライマンが問題の雑誌の記事を書いた証拠と引き替えに彼女は釈放される。彼女の証言を元にドライマン宅の捜索が行われることになり、ヴィースラーは先手を打ってある細工をするのだが・・・・・。
たぴおか的コメント  東西ドイツを隔てるベルリンの壁が崩壊する直前の、東独の驚くべき監視社会を描いた傑作。主演のヴィースラー大尉を演じるウルリッヒ・ミューエが、その鉄仮面のような無表情で圧倒的な存在感を示しながら、時折見せる表情の緩みで見事に複雑な心情を表現している。彼ほどの冷徹で任務に忠実な男が、自分の地位をなげうってまでドライマンを助けようとした。その結果、彼は閑職へと追いやられてしまうのだが、後日ドライマンの著書に書かれた“感謝をもってHGW XX/7に捧ぐ”という言葉によって報われるのは、非常に快い。どんな暗い時代でも、わずかな良心や希望が未来に明るい光を投げかけるのだというポジティブな主義主張が感じられ、一方では人間の弱さや狡さといったネガティブな面も避けることなく描かれており、今年観た作品の中でもトップクラスの作品だ。