評     価  

 
       
File No. 0655  
       
製作年 / 公開日   2004年 / 2007年12月01日  
       
製  作  国   デンマーク  
       
監      督   スザンネ・ビア  
       
上 映 時 間   117分  
       
公開時コピー   戦死したはずの夫が帰ってきた。
別人になって・・・。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   コニー・ニールセン [as サラ]
ウルリク・トムセン [as ミカエル]
ニコライ・リー・コス [as ヤニック]
サラ・ユール・ヴェアナー [as ナタリア]
レベッカ・ログストロープ・ソルトー [as カミリア]
ベント・マイディング [as ヘニング]
ソールビョルク・ホイフェルト [as エルス]
ニルス・オルセン [as アレントフト]
パウ・ヘンリクセン [as ニールズ・ペーター]
ローラ・ブロ [as ディッテ]
ラース・ヒョーツォイ
ラース・ランゼ
 
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あ ら す じ    美しい妻サラと2人の娘に恵まれて幸せな毎日を送っていたエリート兵士のミカエルは、ある日アフガニスタンへの派遣を命じられる。出発前夜、銀行強盗での服役から出所したばかりの弟ヤニックや両親が夕食に訪れる。両親にとって自慢の息子のミカエルに対し、ヤニックは独り身で定職もなく、家族の中でもすっかり孤立していた。
 ミカエルが出発して間もなく、捕虜救出に向かっていたミカエルのヘリがアルカイダに撃墜されたとの訃報がサラに届いた。家族の誰もがミカエルの死を受け入れられずにいる中、ヤニックはミカエルが心残りにしていたキッチンのリフォームを始める。そんなヤニックに対して、彼をろくでなしの弟だと持っていたサラも、次第に心を開いていく。2人の娘もサラ同様にヤニックに馴染んでいき、サラたち3人とヤニックはミカエルを失った悲しみを互いに支え合うようになっていく。
 そんな時、死んだとばかり思っていたミカエルが生還した。しかし、戻ってきたミカエルは、アフガニスタンでの捕虜生活とそこで起きたある事件のために、精神状態に異常をきたし、まるで別人のように変わり果てていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『ある愛の風景』という邦題から、穏やかな内容を想像していたのだが、観てみると予想とは全く違う、深刻で重い内容の作品だった。いつも言うことだが、邦題の付け方をもっと考えて欲しい。もっとも、原題の“BRODRE”は英語では“BROTHERS”つまり兄弟で、ミカエルとヤニックを指しているのだが、これは決して2人の兄弟関係が主題に鳴っている作品ではないから、それをそのまま邦題にされてもまた困るのだが。
 あれほど穏やかで人格者ともいうべきミカエルをさえ別人のように変えてしまった、戦争の悲惨さと恐ろしさ。特に、ミカエルが経験した捕虜生活は、彼に想像を絶する狂気を体験させる。そして、その狂気は彼が家庭に戻ってからも、ほんの些細なきっかけから堰を切ってあふれ出してくるのだ。おそらくは平静を装って狂気を抑圧することで精一杯だったことだろう。そんなミカエルに怯えながらも、彼を信じて暖かく接するサラが健気で美しい。そして、彼女の優しさはミカエルの頑なな心を次第に解きほぐしていく。わずかながらも希望の光の兆しが見えたような、そんな終わり方が印象的だった。久しぶりに心に残る秀作を観た気がした。