評     価  

 
       
File No. 0702  
       
製作年 / 公開日   2007年 / 2008年03月15日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ジョエル・コーエン / イーサン・コーエン  
       
上 映 時 間   122分  
       
公開時コピー   純粋な悪にのみこまれる  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   トミー・リー・ジョーンズ [as エド・トム・ベル保安官]
ハビエル・バルデム [as アントン・シガー]
ジョシュ・ブローリン [as ルウェリン・モス]
ウディ・ハレルソン [as カーソン・ウェルズ]
ケリー・マクドナルド [as カーラ・ジーン]
ギャレット・ディラハント [as ウェンデル]
テス・ハーパー [as ロレッタ・ベル]
 
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あ ら す じ    1980年代のテキサス。狩りをしていたルウェン・モスは、偶然夥しい死体に囲まれたトラックから、大量の麻薬と200万ドルもの大金を発見する。モスは生命が危険に晒されることを知りながら、その金を持ち去ってしまう。しかし、再び現場を訪れたところを追っ手に見つかってしまい、命からがら自宅へと逃げ帰る。現場に残したトラックの検査証から、簡単に自分の身元が割れると判断したモスは、妻のカーラ・ジーンを実家へ帰し、現金の入った鞄を持ってほとぼりが冷めるまでの逃亡の旅に出る。
 モスを追うのは、コインの裏表で殺しを決める冷酷無比な殺人者アントン・シガーだった。彼は圧縮空気のボンベを手に、目的を達するために障害となる人物を、表情ひとつ変えることなく排除していく。そして、奪われた札束に仕掛けた発信器の信号を追って、ついにモスにたどり着くのだった。
 エド・トム・ベル保安官は、麻薬取引がこじれたと思われる現場で、夥しい死体と共に検査証プレートがはずされたモスのトラックを発見する。ベルは命が狙われているモスを保護するため、そして、モスをを狙っている常軌を逸した殺人者を確保するために動き出す。しかし、やがて殺人者の圧倒的な力の前に、自らの無力さを思い知らされることになる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    言わずと知れた、2007年度アカデミー作品賞・助演男優賞・監督賞・脚色賞の4冠を達成した作品。観てみると、強烈なボディ・ブローを食わされるような凄まじいインパクトで迫ってくる。原題“NO COUNTRY FOR OLD MEN”は直訳すると「老人たちに国はない」となるが、言うまでもなく「この星の住人は・・・・・」で一躍有名になったトミー・リー・ジョーンズ扮するベル保安官がその「老人」の象徴だ。彼は、自ら誇りに感じていた保安官という職務を全うする自信を喪失していく。もはや彼には守るべき国など存在しないのだ。そして、彼をそこまで追い込んでいくのが、見事アカデミー助演男優賞を受賞したハビエル・バルデムが扮する冷酷非情なことこの上ない殺人鬼アントン・シガーだ。ハビエル・バルデムには以前『海を飛ぶ夢』でお目に掛かっているが、そのときの穏やかなイメージが焼き付いているだけに、俳優という人種はこうまで違う人格を演じられるのかと、空恐ろしさすら覚えた。徹底してサウンドトラックを排除した、その静寂からくる比類のない緊迫感と恐怖感。そして、この作品をもって単なるクライム・サスペンスと見るか、あるいは深読みしてその裏側に深遠なテーマが存在するか、解釈が分かれるところだろう。意図してか偶然か、観る者に想像する余地を多分に提供する作品となっている。