File No.0721
製作年/公開日 2007年 / 2008年04月18日 製  作  国 アメリカ
監      督 ロバート・レッドフォード 上 映 時 間 92分
公開時コピー
 何のために戦い、何のために死ぬのか
最初に観たメディア
 Theater  Television  Video
キ ャ ス ト
 ロバート・レッドフォード [as ステファン・マレー教授]
 メリル・ストリープ [as ジャニーン・ロス記者]
 トム・クルーズ [as ジャスパー・アーヴィング上院議員]
 マイケル・ペーニャ [as アーネスト]
 デレク・ルーク [as アーリアン]
 アンドリュー・ガーフィールド [as トッド・ヘイズ]
 ピーター・バーグ [as ファルコ中佐]
あ ら す じ  大統領への野望を抱くジャスパー・アーヴィング上院議員は、ある日旧知のジャーナリスト、ジャニーン・ロス記者に独占インタビューを持ちかける。その内容とは、現在膠着状態にあるアフガニスタンでの対テロ戦争を、勝利へと転換する新しい作戦の情報だという。アーヴィングは作戦を報道することによって、世論の支持を獲得することを目論んでいたのだが、ロスはこれが議員のプロパガンダであることを敏感に察知していた。
 大学教授ステファン・マレーは、自室に教え子の学生トッド・ヘイズを呼び出していた。優秀だったトッドが最近ではやる気を見せないことを疑問に思ったマレー教授は、ある優秀な学生2人の話を持ち出した。その2人、アーネストアーリアンは、教授の説得も空しく軍隊への入隊を自ら志願し、アフガニスタンでのテロ戦争に身を投じたのだ。それは、奇しくもアーヴィングがロスに情報を提供した作戦であり、2人の優秀な若者は今、陰謀の渦の中に巻き込まれようとしていたのだった・・・・・。
たぴおか的コメント  このところ頻繁に書いている気がする邦題への不満、この作品も例に漏れない。『大いなる陰謀』?作品の意図を少しでも理解したならば、絶対にあり得ないタイトルだ。原題の“Lions for Lambs”とは、第一次大戦中にドイツ軍兵士が勇敢なイギリス軍兵士を尊敬するとともに、その勇敢なイギリス軍兵士を無駄死にさせたイギリス軍最高司令部を揶揄した「このような愚鈍な羊たちに率いられた勇敢なライオンたちを見たことがない」という言葉からきている。「ライオンたち」を象徴するのがアーネストとアーリアンであり、「羊たち」を象徴するのが、トム・クルーズ扮するアーヴィング上院議員であることは明らかだ。そして、愚鈍な羊の命令に従って戦地へ赴き散っていくライオンたち。もしも青島刑事だったら、「戦争は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!」と叫んでいたことだろう(笑)。冗談はともかく、ライオンたちの犠牲に対して羊たちはこう語る。「敵は我々にかすり傷を与えたが、我々は間違いから学んでいく」と。このあたりにアメリカの抱える慢性的な病弊が潜んでおり、現ブッシュ政権の敗因もまさにこの点にあったのだ。アメリカが対処しなければならない問題は、外部のテロ組織ではなく自国内の獅子身中の虫なのだ。
 しかしながら、内容が重い割には尺が92分と短く、結局は問題を提起するだけしておいて回答は何一つ提示されていない。もっとも、これほどの壮大なテーマに1本の映画で答えを出すことなど、到底無理な話ではあるが。