評     価  

 
       
File No. 0748  
       
製作年 / 公開日   2006年 / 2008年05月24日  
       
製  作  国   アメリカ / チ ェ コ  
       
監      督   ニール・バーガー  
       
上 映 時 間   109分  
       
公開時コピー   すべてを欺いても
手に入れたいもの、
それは君。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   エドワード・ノートン [as 幻影師アイゼンハイム]
ポール・ジアマッティ [as ウール警部]
ジェシカ・ビール [as 公爵令嬢ソフィ]
ルーファス・シーウェル [as 皇太子レオポルド]
エドワード・マーサン [as 興行師フィッシャー]
ジェイク・ウッド [as ヤルカ]
トム・フィッシャー [as ウィリグート]
アーロン・ジョンソン [as アイゼンハイム(少年時代)]
エレナー・トムリンソン [as ソフィ(少女時代)]
カール・ジョンソン [as 医師/老紳士]
 
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あ ら す じ    19世紀末のウィーン。ひとりの平民の少年と公爵令嬢が恋に落ちた。しかし、幼い恋は身分の壁に引き裂かれ、少年はウィーンを離れどこへともなく去っていった。それから15年後。世界を巡ってウィーンに戻った少年は、幻影師アイゼンハイムと名乗り、イリュージョニストとして絶大なる人気を誇っていた。
 ある日、彼の人気を聞きつけた皇太子レオポルドが劇場に訪れる。皇太子は婚約者を同伴していたが、その女性がかつて引き離された公爵令嬢ソフィであることを知り、アイゼンハイムは動揺する。それはソフィも同じで、皇太子の婚約者として自分を抑えていたたががはずれ、2人の恋は再燃するのだった。
 一方、アイゼンハイムのトリックを見破ろうと意気込むレオポルドは、アイゼンハイムを王宮に招いてイリュージョンを披露させる。これに対してアイゼンハイムは、敢えてレオポルドを挑発するような態度に出たため、逆上したレオポルドはウール警部にアイゼンハイムを追い落とすよう命じる。しかし、アイゼンハイムの人気は絶頂にあり、ウール警部も彼には一目置いていたため、素直に命令に従うことはできずにいた。ところが、そんな状況を大きく変える転機が訪れる。
 皇太子邸を出て行方が知れずにいたソフィが、他殺死体となって発見された。彼女はアイゼンハイムとの仲がレオポルドに知れたため、レオポルドとは結婚しないと啖呵を切って屋敷を出たところを、レオポルドに斬られてしまったのだった。しかし、アイゼンハイムはそんな状況にありながら、死者の幻影を蘇らせるという、前代未聞のイリュージョンを発表し、あろうことかソフィの幻影を蘇らせるのだが、実はそこにはさらに大きなイリュージョンが隠されていたことは誰ひとりとして気づくことはなかった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    実は、今月公開作の中で最も楽しみにしていたのがこの作品だったのだが、観てみると期待を遥かに上回る出来にただただ脱帽だった。それもそのはず、全米で公開時にはわずか51館だったのが、最大で1,400館を超えるまでに興行が拡大し、インディペンデント系の作品としては異例の22週にも及ぶロングランを記録しているのだ。
 アイゼンハイムに扮するエドワード・ノートン、そしてその幼馴染みのソフィを演じるジェシカ・ビール、それに皇太子の手先となりアイゼンハイムを追う警部ウールにポール・ジアマッティという、私のお気に入り俳優・女優が主役と脇役を固めているのがまずは気に入った。そして、エドワード・ノートンの深みのある抑えた演技が何よりも素晴らしく、キャスティングだけで半分以上はこの作品は成功していると言っていい。
 その脚本と構成の巧みさは特筆すべきで、ウール警部はもちろんのこと、逆上してソフィを殺したレオポルドもまた、アイゼンハイムの壮大にして計算し尽くされたイリュージョンの観客であり、同時にイリュージョンの小道具の一部に過ぎなかったのだ。そしてさらに、この作品自体が大きなイリュージョンとなっており、アイゼンハイムの最大のイリュージョンを目の当たりにするのは劇中の観客ではなく、スクリーンを観ていた私たち観客だったのだ。
 知らず知らずに彼の幻影の術中にはまり、見事に欺かれていたことを、観客はラストでウール警部と共に気づかされる。その時の気分は、スクリーンの中のウール警部のそれと全く同じで、やられたと!舌を巻くと同時に、心地よい爽快感を味わうことになるだろう。あのスティーヴン・キングをして「何度も観たくなる」と言わしめたらしいが、それはごく必然的な結果と言っていい。私も再度劇場で観てみたいと強く思っているから。