評     価  

 
       
File No. 0761  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2008年06月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   松原 信吾  
       
上 映 時 間   116分  
       
公開時コピー  
ここには、忘れていた大切なものがある
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   大沢 たかお [as 赤城旬太郎]
田中 麗奈 [as 鏑木明日香]
伊原 剛志 [as 英二]
森口 瑤子 [as 千秋]
マギー [as 雅]
荒川 良々 [as 拓也]
江口 のりこ [as エリ]
温水 洋一 [as アルプスのマスター]
峯村 リエ [as アルプスのママ]
佐野 史郎 [as 漆原]
森下 愛子 [as 金谷順子]
鈴木 一真 [as 片岡十四郎]
甲本 雅裕 [as 駒さん]
田口 浩正 [as ハルオ]
六平 直政 [as 牛尾]
大杉 漣 [as 金谷]
柄本 明 [as 真田正治郎]
伊藤 四朗 [as 鏑木徳三郎]
 
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あ ら す じ    都内の商社に勤務する赤木旬太郎は、30代半ばで課長昇進を果たしたエリートサラリーマンで、恋人の明日香にプロポーズしようと考えている、公私共に満ち足りた生活を送っていた。ところがある日、専務の漆原から大規模なリストラの遂行を命じられ、対象者リストに元上司・金谷の名を見つけて動揺する。
 旬太郎は入社したての頃に世話になった金谷を敬愛しており、また、入院している金谷の妻順子をも頻繁に見舞う間柄だった。漆原が昇進祝いと称して旬太郎に酒を振る舞った席で、旬太郎は金谷をリストラの対象からをさらにはずすよう上申するが、漆原は全く受け付けない。そればかりか、金谷の妻・順子が末期癌であることを平然と吐いて、悪びれた様子も見せない。旬太郎はそんな漆原の下で働くことに、疑問を感じずにはいられなかった。そして飲み明かした翌日の早朝、旬太郎は夜明け前の街を自転車で走る明日香を見かけ、彼女の後を追う。彼女が行き着いた先は、築地の魚市場だった。
 明日香は実は築地の仲卸「魚辰」二代目・徳三郎の一人娘で、膝の手術のために入院している父に代わって店を手伝っていたのだった。装飾デザイナーとして徹夜続きだった明日香の体を案じた旬太郎は、強引に魚辰の手伝いを申し出る。ところが、玄人が集まりしのぎを削る魚河岸では、旬太郎は役に立つどころか他の店員の足を引っ張りかねなかった。負けず嫌いの旬太郎は、自腹で魚を購入して魚を知ろうと努力を重ね、その姿が魚辰の三代目と噂される英二の目に留まるのだった。
 会社ではリストラの宣告が開始され、旬太郎は辛い思いを抑えて金谷にリストラを言い渡す。これに対して金谷は、静かな笑顔で旬太郎の言葉を受け入れ、辞職願を提出する。田舎へ戻った金谷を訪ねた旬太郎は、金谷の「幸せは、自分の気持ちに嘘をつかずに生きることだ」という言葉に、ある大きな決意をするのだった。
 
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たぴおか的コメント    松竹が『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』の後を担う新シリーズで、案の定エンドクレジット終了後に「続編制作決定」とのメッセージが。しかしながら、今ひとつインパクトに欠けることも確かで、同じ週に公開の『ザ・マジックアワー』が37万人の動員に対して、この作品は4万人の動員と、あまりに寂しいお披露目となってしまったようだ。
 そうは言うものの、作品自体は決して悪い出来ではないと思う。シリーズ1作目とあって、様々なエピソードを欲張って盛り込み過ぎた感はあるが、それが散漫になることなく一つの作品として調和しているのは、あたかも新聞の写真が大小様々な黒い点の集まりであるかのようで、不自然さを感じさせない。また、日本人が感動しそうなポイントはしっかり抑えてあると感じるのが、あるいは金谷の妻のエピソードであり、あるいは英二と千秋のエピソードなのだ。特に、大杉漣扮する金谷が電車に乗る旬太郎を見送るシーンは、胸に迫るものがある。一方で、旬太郎が人間味を欠いた会社という組織に嫌気がさしたのには充分共感できるのだが、だからといって、ちょっと手伝っただけの築地魚河岸こそが自分の生きる場所だという思い込みには、思わず突っ込みを入れたくなってしまったのもまた事実。今後、どのようにシリーズを展開していくのか、あるいは早い段階で制作打ち切りとなるのか、作品の内容とは別の意味で今後が注目される作品だ。