原題の“NAISSANCE DES PIEUVRES”とは直訳すると『タコの出生』。それは果たして、大人への一歩を踏み出す少女がハッキリとした形をとらない、いわば軟体動物のような存在であることを意味するのか、あるいは、タコが墨を吐くように体内からどす黒いものを排出させることを意味するのか。いずれにしても、大人への一歩を踏み出す少女たちが瑞々しく描かれているのだが、もう少し長い尺でじっくりと見せて欲しい気がした。少女たちの内面への切り込みも物足りない気がしたし、フロリアーヌがマリーを呼び出して男と会い、一体何をしていたのかも謎のままだ。シンクロというスポーツをモチーフに選んだのは絶妙で、水の上では優雅に見せる少女たちが実は水面下では必死に足で水を掻いている、その姿は彼女たちの人生の縮図にほかならない。そして、それをマリー、フロリアーヌ、そしてアンヌという三者三様の少女を通して描いたセリーヌ・シアマ監督は、本作がデビュー作とのことだ。個人的には、フロリアーヌを演じたアデル・ヘネルにすっかり目を奪われてしまったが、今年3月に開催されたフランス映画祭2008で来日した素顔の彼女はやはりずば抜けた美しさだったらしく、今更ながらにその時にお目にかかれなかったことを残念に思っている。