評     価  

 
       
File No. 0793  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2008年08月02日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   阪本 順治  
       
上 映 時 間   138分  
       
公開時コピー   これは、事実か、真実か、現実か
幼児売買春、臓器密売の知られざる“闇”が今、明らかになる
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   江口 洋介 [as 南部浩行]
宮ア あおい [as 音羽恵子]
妻夫木 聡 [as 与田博明]
佐藤 浩市 [as 梶川克仁]
豊原 功輔 [as 清水哲夫]
鈴木 砂羽 [as 梶川みね子]
プラパドン・スワンバーン [as チット]
プライマー・ラッチャタ [as ナパポーン]
 
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あ ら す じ    日本新聞社バンコク支局の記者南部浩行は、東京本社の社会部からある調査を依頼される。それは、タイで行われているという臓器移植に関するものだった。早速現役を引退した臓器売買の仲介者と接触した南部は、彼から驚くべき事実を聞き出す。脳死患者から臓器が提供されるのではなく、子供たちから生きたまま臓器が摘出されるというのだ。そのことを知った南部は、さらに取材を続けることを決意する。
 NGO職員の音羽恵子は、バンコクの社会福祉センター“バーンウンアイラック”に訪れる。大学で社会福祉を学んだ彼女は、アジアの子供たちのために自分にできることをしたいと考え、タイを選んだのだった。“バーンウンアイラック”の所長ナパポーンはバンコクのスラム街視察に恵子を伴い、そこでアランヤーという少女の親を訪ねた。センターに読み書きを習いに通っていたアランヤーが、最近姿を見せないことが気になっていたのだ。けれども、ナパポーンと恵子はアランヤーの父親にとりつく島もなくを追い返されてしまう。しかし、偶然にセンターへ取材に訪れていた南部から臓器移植の話を聞いた2人は、アランヤーも何らかの事件に巻き込まれているのではないかと危惧するのだった。
 2人の心配は的中した。センターにアランヤーが書いたものと思われる救いの手紙が届けられたのだ。アランヤーはチェンマイにある外国人相手の売春宿に売り飛ばされており、そこで大勢の子供たちと一緒に役をとらされていたのだった。子供たちは、時同性愛者の相手をさせられるのみならず、依頼があると臓器提供者にさせられてしまい、病気になるとゴミ同然に袋に詰められて捨てられてしまうのだった。南部はアランヤーを救うためにナパポーンから共闘を持ちかけられるが、今捕らえられている子供を救っても、また別の子供が同じ目に遭うため、元を絶たなければならないという考えから、別行動をとることにする。やがて、その考えの違いは南部と恵子の間にも溝を生じていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    重いテーマの作品であると同時に、江口洋介扮する南部がただ正義感のために臓器移植を暴こうとしているのではなく、彼の心の中にある闇との葛藤があり、その葛藤が悲惨な結末をもたらしてしまうという、ある意味救いのない終わり方の作品だ。人の命を救う手段として臓器移植は必要不可欠であることはまぎれもない事実なのだが、そのために臓器提供者が犠牲になることは許されない。おそらくは、作品に登場するアランヤーの親も好きこのんで娘を売り飛ばしたわけではないだろう。が、そうしなければ生きて行けない、そうすることが当たり前となって何の疑問も生まれない、そういった東南アジア各国の低所得層の如何ともし難い現実を変えない限り、命の売買という許されない行為は闇に横行することだろう。そして、それは決して臓器を提供する側だけの問題ではなく、それを買う者が存在するからこそ需要と供給の関係が成立する。児童買春にとどまらず、子供の命さえも金さえあれば買うことができてしまうのだ。  そんな闇の世界と背中合わせに生きている子供たち、その事実が正直言って作品を観終えたときにはにわかには信じ難い。本当に、こんなことが実際に行われているのか?と。自分の心臓をえぐり取られるために病院に連れて行かれた子供、その子は果たしてまもなく自分の身に何が起きるか知っているのだろうか。知っているとすれば、一体どういう心境なのだろうか。主人公の南部と同様に、臓器ブローカーに手を引かれて病院に入る女の子の姿が目に焼き付いている。