評     価  

 
       
File No. 0847  
       
製作年 / 公開日   2007年 / 2008年10月18日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   深川 栄洋  
       
上 映 時 間   110分  
       
公開時コピー   あの場所を過ぎると
懐かしくて恐いところでした
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   西島 秀俊 [as 真木栗勉]
粟田 麗 [as 水野佐似「]
木下 あゆ美 [as 浅香成美]
キムラ 緑子 [as 沖本シズエ]
北村 有起哉 [as 佐々木譲二]
尾上 寛之 [as 細見貢]
大橋 てつじ [as 秋田健]
永田 耕一 [as 柴田実]
小林 且弥 [as 赤坂栗生]
田中 哲司 [as 水野貞男]
松金 よね子 [as 飯田時子]
谷津 勲 [as 杉村一成]
利重 剛 [as 森本飽夫]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    古都・鎌倉の古びたアパートに住む、売れない小説家真木栗勉。現在連載の小説も最終回を書き終えた今、次の連載の話もやんわりと断らてしまい行き詰まってしまう真木栗。ところが、ある窃盗事件で被害に遭ったことに関して雑誌の取材を受けたことをきっかけに、官能小説連載の依頼が舞い込んだ。
 引き受けたのはいいが、今までに書いたこともない官能小説を3日という期限内に書けるはずもなく苦しんでいた真木栗は、隣室との境の壁に穴が開いていることに初めて気づく。覗いてみると、隣の若い男性の部屋が見て取れた。そして、その反対側で今は空き部屋となっている隣室との境の壁にもやはり穴があることを知る。真木栗はその穴から誰もいない部屋を覗きながら、アパートの前で出逢った日傘を差した清楚な女性を隣室の住人に仕立てて妄想を膨らませる。ところが、彼の妄想は現実となり、隣室の空き部屋に日傘の女性水野佐似「が転居してくるのだった。
 その日を境に、真木栗はその穴から隣室を覗き、見た内容それを小説に書いていく。ところが、隣室を訪れて佐似「と交わりを持った置き薬の営業マン細見と宅配便の配達員秋田の2人が、いずれも不慮の死を遂げてしまう。連載された真木栗の小説は好評を得るが、夢とも現実ともつかない幻想に知らずのうちに取り込まれていった真木栗は、新人で彼の担当の編集者浅香も心配するほど日に日に憔悴していく・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    私も最初どう読んでいいのかわからなかった作品のタイトルは「まきぐりのあな」で、真木栗とは主人公の名・真木栗勉(まきぐりべん:“つとむ”ではなく“べん”というのもまた奇妙だが)から来ているのは言うまでもない。
 昭和の時代を思わせるボロアパートを舞台に繰り広げられる、淫靡な雰囲気が漂う作品。こういった雰囲気は、私は決して嫌いではない。そして、その淫靡な空気に飲み込まれ、次第に幻想の世界にのめり込んでいく真木栗を演じる西島秀俊の演技はさすがだ。そして、キー・パーソンである佐似「に扮する粟田麗の、清楚さの中に影を感じさせる演技も悪くない。ただ、個人的には粟田麗よりも、新人の編集者浅香に扮する木下あゆ美の健康的な美しさに惹かれてしまったが。
 作品は、主人公の真木栗同様に観ている者も、どこまでが現実でどこからが幻想なのか、知らずのうちにその境目のない世界に取り込まれてしまう。こういう作品を観るにつけ、決まった尺の映像で表現できる世界には限界があるのではないかと感じてしまう。この作品を良く知るためには、やはり原作を読むしかないのだろうか。それにしても納得できないのが、この作品の「あの場所を過ぎると 懐かしくて恐いところでした」というコピーだ。正直、全く意味不明と言う他はない。作品を観た後にこのコピーを知り、他の作品のコピーと見間違ったのかと思ったほどだ。コピーを知ったのが作品を観た後で良かったと痛感した。