評     価  

 
       
File No. 0887  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2008年12月20日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   佐藤 嗣麻子  
       
上 映 時 間   137分  
       
公開時コピー   違う!オレは二十面相じゃない!  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   金城 武 [as 遠藤平吉]
松 たか子 [as 羽柴葉子]
仲村 トオル [as 明智小五郎]
國村 隼 [as 源治]
高島 礼子 [as 菊子]
本郷 奏多 [as 小林芳雄]
今井 悠貴 [as シンスケ]
益岡 徹 [as 浪越警部]
加賀 丈史 [as 謎の紳士]
 
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あ ら す じ    1949年、日本と米・英との平和条約により第2次世界大戦を回避した日本の首都・帝都。華族制度による極端な格差社会では、富の大部分が一部の特権階級に集中していた。そして、裕福な特権階級のみをターゲットにして美術品や骨董品を次々と盗んでいく“怪人二十面相”の存在が世間を騒がせていた。そして、サーカスの曲芸師である遠藤平吉は、相手の正体が二十面相であるとも知らずに、謎の紳士からの頼みを聞き入れるのだった。
 彼の頼みとは、近く行われる羽柴財閥の令嬢羽柴葉子と名探偵明智小五郎の結納の偽を撮影することだった。ところが、紳士から渡されたカメラは爆弾の起爆装置となっており、そうとは知らずにシャッターを押してビルを爆破した平吉は、二十面相として警察に捕らえられてしまう。
 平吉はサーカスの仲間で小道具作りの名手源治の仕掛けで助け出されるが、すでに彼の顔写真は街中に怪人二十面相として貼り出されていた。しかし、二十面相に拉致されそうになった葉子を助けたことがきっかけで明智小五郎を味方にできた平吉は、そのずば抜けた身体能力と頭脳を武器に二十面相に真っ向勝負を挑むのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    先に公開された『252 生存者あり』と並ぶ日テレ開局55周年の記念作品。まず最初に言っておきたいのは、こういう作品に仲村トオルを使っちゃいけないってこと。なぜならば、今までの彼が扮するキャラクターは表面上はいい人でもその実はすべて曲者ばかりというイメージが定着してしまっており、彼が登場したら裏を疑ってかかるのが当たり前になってしまっているから。つまり、彼の存在そのものがキャラクターに対する余計な先入観を与えてしまう畏れがあるのだ。たとえ、それが明智小五郎という誰もが認める名探偵であったとしても。
 作品自体は、江戸川乱歩の明智小五郎や怪人二十面相とは切り離して観るべきだ。乱歩の小説をイメージすると、この作品はどうしても邪道と受け取られかねない。あくまで乱歩の小説に登場するキャラクターを借りた痛快娯楽作であることを忘れてはならない。そして、その点を理解した上で観るならば、これは充分に楽しめる出来の佳作だと言えるだろう。そして、映画を見慣れない人が観たとしてもいつの間にか作品に引きずり込まれてしまう、それだけの訴求力を有した作品なのだ。
 つい先だっての『レッドクリフ』で諸葛孔明を好演した金城武が、やや覚束ない感のある日本語ではあるものの、主人公の遠藤平吉を熱演しているのがいい。そして、久しぶりに見る松たか子のちょっとトボケたお嬢様の演技が微笑ましくて、彼女の演じたキャラクターに初めて好感が持てた。彼女、ちょっと見ないうちに演技が随分上手くなったんじゃない?そして前述の曲者仲村トオルだが、この作品でも曲者なのかは別にして、特に金城扮する遠藤が変装した明智小五郎という微妙な役柄と本来の明智の演じ分けの巧みさは見物だ。
 二十面相の正体については、結構早い段階で私には想像がついてしまった。が、それは作品の評価する上でマイナス要因となるようなものではない。二十面相の正体を想像しながら観るも良し、二十面相と遠藤平吉の対決を楽しむのも良し、はたまた遠藤平吉と葉子の恋の行方を見守るも良し、作りが素直だけに色んな楽しみ方の余地を多分に残した佳作だと言っていいだろう。久しぶりに見終えて素直に「面白かった」と思えた作品だ。