評     価  

 
       
File No. 0889  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2008年12月20日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   リドリー・スコット  
       
上 映 時 間   128分  
       
公開時コピー   どっちの嘘が、世界を救うのか。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   レオナルド・ディカプリオ [as ロジャー・フェリス]
ラッセル・クロウ [as エド・ホフマン]
マーク・ストロング [as ハニ・サラーム]
ゴルシフテ・ファラハニ [as アイシャ]
オスカー・アイザック [as バッサーム]
サイモン・マクバーニー [as ガーランド]
アロン・アブトゥブール [as アル・サリーム]
アリ・スリマン [as オマール・サディキ]
 
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あ ら す じ    CIAの有能な工作員ロジャー・フェリスは、常に安全な場所から電話一本で命令を下す上司エド・ホフマンのもと、命がけの潜入工作を行っていた。今回の彼に与えられたミッションは、常に謎のヴェールに身を包みその正体すら不明である国際テロ組織のリーダー、アル・サリームの所在を明らかにすることだった。
 フェリスはイラクで情報提供者からアメリカへの亡命を条件に貴重な情報を得るが、ホフマンは情報提供者を保護するというロジャーの頼みも聞き入れない。結局フェリスは、情報提供者はおろか有能な部下までも失った上に自ら自爆テロに巻き込まれて重傷を負ってしまう。そして、傷も癒えないままに入手した情報に従ってヨルダンへと向かった。
 ヨルダンでロジャーが接触したのは、現地での諜報活動を仕切っているハニ・サラームだった。ホフマンからはハニに重要な情報を提供しないように命令されていたフェリスだったが、ハニの信用を得ることが必要不可欠と判断した彼は進んで情報をハニに提供し、やがてハニの信頼を得ることに成功する。そして、ハニは敵組織の一人をスパイに仕立てることに成功するが、その情報をキャッチしたホフマンがフェリスにすら内緒でそのスパイを捕らえて利用しようとしたために、フェリスまでもがハニの不信感を買ってしまう。
 やむなくフェリスは、次の作戦を考案する。それは、架空のテロ組織を作り上げ、アル・サリームが接触してくるよう罠を仕掛けることだった。そして、テロとは何の関わりもない一市民である建築家オマール・サディキが選ばれ、本人すら気づかないうちにサディキはテロ組織のリーダーに仕立て上げられるのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    原題の“BODY OF LIES”とは、直訳すれば「嘘の塊」。それに対して邦題の『ワールド・オブ・ライズ』とは、やはりニュアンスが随分違う気がする。『ボディ・オブ・ライズ −嘘の塊−』とでもした方がまだマシに思えるのは私だけだろうか。
 かつてはアメリカの敵国として描かれていたソ連に代わって、最近ではアメリカ的正義に敵対する悪として、特に“9.11”の悲劇以来それが当たり前のように描かれている、アルカイーダに代表されるイスラム原理主義の国際テロ組織。それはあくまでアメリカの主観的な正義の概念に基づくものであって、おそらくはアメリカをターゲットにするテロ組織もまた、彼らなりの正義観に則って行動しているのであろうから、テロ組織が無関係な国に対して危害を加えない限りは、一概に一方が「善」であり他方が「悪」であると決めつけることはできないだろう。そして、この作品はまさにそんなアメリカ主観の正義が描かれた作品であり、その象徴とも言うべき人物がラッセル・クロウ扮するエド・ホフマンなのだろう。有益な情報が入手できれば、後はその提供者がどうなろうが知ったことじゃない、正義は我にあり、という不遜で傲慢な態度はまさにアメリカという国家そのものだろう。そして、自ら目的を達成するためには、有能な部下すら危地に陥れて何ら悪びれることないその態度は正直不愉快この上ない。
 ホフマン評はともかくとしても、ディカプリオ主演でこの内容となるとどうしても『ディパーテッド』を連想してしまうが、同作よりは断然面白かったと思う。中東現地で孤軍奮闘するフェリスが繰り広げる頭脳戦、それが上司と現地の諜報員ハニ・サラームとの板挟みにあった時にどちらにどのような「嘘」をついて切り抜けるのかが見物。コピーには“どっちの嘘が、世界を救うのか。”とあるが、結局いずれの嘘も世界を救うことはできなかったという皮肉な結果が面白い。そして、ややもすると男臭い硬派な作品になりかねないところを、ロジャーが恋に落ちるアイシャという女性を配したのが効果的だ。彼女の登場は観る者に安らぎを与えると同時に、彼女の観に危害が及ぶのではないかというさらなる緊張感を与えるという相乗効果がある。