評     価  

 
       
File No. 0891  
       
製作年 / 公開日   2007年 / 2008年12月20日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   クレイグ・ギレスピー  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   彼が恋に落ちたのは・・・等身大のリアルドール!  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ライアン・ゴズリング [as ラース・リンドストロム]
エミリー・モーティマー [as カリン]
ポール・シュナイダー [as ガス]
ケリ・ガーナー [as マーゴ]
パトリシア・クラークソン [as ダグマー・パーマン医師]
 
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あ ら す じ    とある小さな田舎町。優しくて純粋な青年ラースは町の誰からも愛されていたが、彼に好意を寄せる同僚のマーゴからも逃げてしまうような極端にシャイな性格が災いして彼女が出来なかった。そんな彼を兄のガスや、とりわけその妻カリンは心配して手を尽くすのだが、ラースはそんなカリンの気遣いからさえも逃げる始末だった。
 そんなある日、ラースが兄夫婦の家に訪れ、「紹介したい人がいる」と告げる。ガスとカリンが喜んだのも束の間、ラースが連れてきた女性ビアンカはなんと等身大のリアルドールだった。ビアンカは宣教師で世界を旅していること、スーツケースや車椅子を盗まれて困っていることなどを楽しそうに話すラースに対し、2人はただ呆然と返す言葉も見つけられずにいた。困ったガスとカリンはダグマー・パーマン医師に相談すると、医師は周囲の人間がラースの世界を受け入れること、つまりはビアンカを人として扱うことが解決につながると助言した。こうして、町ぐるみでビアンカを生身の女性として接することになった。
 ところが、ビアンカが町の皆にとけ込んでいくにつれ、ラースの心境に変化が生じていく。ビアンカと2人だけの時間がなくなることに苛立ち、一方でマーゴに恋人が出来たことが気になって仕方がなかった。そしてついに、ビアンカが重病に倒れてしまう。パーマン医師は、すべてラースの医師がそうさせているのだと言う。果たして、ラースとビアンカはこの先どうなってしまうのだろうか?
 
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たぴおか的コメント    観る前は、人付き合い特に女性との付き合いが苦手な主人公を描いたコメディか、あるいは主人公とリアルドールの恋愛を描いたファンタジーだと思っていたが、予想に反して真面目に作られた作品だと感心した。ラースを演じるのは、『きみに読む物語』で一人の女性への愛を貫き通したひたむきな青年ノアを演じたライアン・ゴズリングだ・・・・・と知ったのは実は作品を観終えた後オフィシャルサイトを閲覧してのことで、上映中はどこかで見たことがあるような俳優だとは思いながらも、彼だとはまったく気づかなかった。
 この作品でのラースという人物の描き方が面白い。彼は伊達や酔狂でリアルドールを恋するふりをしているわけではなく、本気で彼女=ビアンカを愛しているのだ。しかしながら、彼も気づかない無意識の中ではちゃんとそれを現実逃避と認識していて、現実から逃避している自分との間で葛藤しているのだ。そんな彼を現実に引き戻した物、それはビアンカからは決して得られない物だった。ラースから手を差し伸べることはあっても、ビアンカは決して彼に手を差し伸べてくれない。そして決定的だったのが、おそらくはボウリングの後にマーゴと交わした握手だったのだと思う。彼女の手から伝わる温もり、それは彼女が生きている証であって、ビアンカからはその温もりが感じられることは絶対にないのだ。
 そんなラースを見守る人々がいい人ばかりで悪人が皆無なのも、逆に気持ちがいい。観客の笑いをとりながらも弟を真剣に心配する兄・ガスと、自分の事以上にラースを気使うその妻・カリンの温かさ。そして、ラースを否定することなく穏やかに見守るパーマン医師。久しぶりに観た後に心がじ〜んと暖かくなるような、そんな秀作だ。ちなみに、あれほどのキャパを誇るシネクイントがほぼ満席状態だった。