評     価  

 
       
File No. 0908  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年01月24日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   君塚 良一  
       
上 映 時 間   118分  
       
公開時コピー  
殺人犯の妹となった少女と彼女を守る刑事の逃避行が始まる
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   佐藤 浩市 [as 勝浦卓美]
志田 未来 [as 船村沙織]
松田 龍平 [as 三島省吾]
石田 ゆり子 [as 本庄久美子]
佐々木 蔵之介 [as 梅本 孝治]
佐野 史郎 [as 坂本一郎]
津田 寛治 [as 稲垣浩一]
東 貴博 [as 佐山惇]
冨浦 智嗣 [as 園部達郎]
木村 佳乃 [as 尾上令子]
柳葉 敏郎 [as 本庄圭介]
 
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あ ら す じ    両親と18歳の兄に15歳の妹のごく平凡な4人家族の船村家。ある日、未成年である長男が小学生の姉妹殺害容疑で逮捕され、家族の置かれた状況は一転する。両親は一旦離婚し、今度は妻の籍に夫が入る婚姻を行って苗字を変える。娘の船村沙織は就学義務免除の手続きをとらされ、家族とは引き離されて警察の保護下に置かれることとなった。彼女の保護を命じられたのは、東豊島署の刑事勝浦卓美三島省吾だった。
 船村家の周囲は警官と大勢のマスコミ、そして野次馬によって幾重にも取り囲まれた中、沙織は勝浦に連れられて車でホテル、勝浦のアパート、それに勝浦の主治医である精神科医尾上令子のマンションと居所を転々とするが、マスコミは執拗に居所をかぎつけてどこまでも付きまとってくるのだった。そんな中、沙織は彼氏の園部達郎からの電話で、母親が自殺を図ったことを知ってしまう。沙織は母を失ったやり場のない憤りを勝浦にぶつけるしかなく、勝浦もそれを黙って受け止めるしか術がなかった。
 翌日、勝浦は沙織をマスコミから遠ざけるために東京を離れ伊豆のとあるペンションに向かう。そのペンションは、皮肉にも彼が離婚を決意した妻と和解する最後の機会である家族旅行で宿泊する予定だった場所であり、ペンションを経営する本庄圭介久美子の夫婦は、3年前に勝浦が担当した事件で幼いひとり息子を亡くしていたのだった。ペンションに着いた勝浦は、本庄に事情を説明し、本庄夫妻は快く彼と沙織を受け入れてくれた。
 ところがその翌日、三島からの電話でインターネットを見た勝浦は呆然となった。すでに彼らがいるペンションが掲示板に公開されており、外には野次馬たちが集まっていたのだ。そして、意外なことに居場所を外部に漏らしたのは沙織本人だった。彼女が達郎に電話で居場所を教えていたのだ。そして、その夜達郎が沙織を訪ねてペンションに訪れる。唯一の味方を得た思いの沙織は、その翌日の早朝に達郎と2人でペンションから姿を消してしまう・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    モントリオール映画祭で最優秀脚本賞を受賞したとあって、フジテレビの代表作ともいえる『踊る大捜査線』シリーズとは一線を画した秀作だった。被害者の家族に焦点を当てた作品は少なくないが、この作品では加害者の家族に事件が及ぼす影響を描いた点で目新しい。「罪を憎んで人を憎まず」という言葉があるが、現実には罪を犯した本人のみならず家族にまで驚くべき迫害が加えられるようだ。特に恐ろしいのはネットの掲示板で、もしもこの作品に描かれているような書き込みが実在するならば、ハッキリ言って殺人を犯した少年よりもカキコしているお前らの方がよっぽど悪質な犯罪者だと言ってやりたい衝動に駆られる。犯罪者側の人間が一転して被害者に陥る、そんな状況を作り出す興味本位の無責任な大衆による扇動には、勝浦の言葉を借りるまでもなく「背筋が凍る」思いがした。
 また、そういったドキュメンタリー的な側面だけではなく、加害者の家族、加害者の妹沙織を守る刑事の勝浦の家族、そして、息子を殺害された被害者である本庄の家族それぞれの物語が巧みに織り込まれ、ヒューマンドラマとしても十分に鑑賞に堪える内容になっている。とりわけ、警察のミスで息子を失い、それが勝浦には罪がないと理性では納得しながらも感情を抑えきれないという、複雑な心境の本庄圭介を演じたギバちゃんこと柳葉敏郎が光っている。そして、事件によって家族の絆を失った沙織を家族との絆を断たれる寸前の勝浦が守るという対比が面白い。
 この手の作品では、どうしても演じる俳優の力量に左右されるところが大きいものだが、被害者の妹を演じる志田未来に彼女を守る刑事の佐藤浩市と、共に演技達者だけあって期待通りの演技を見せてくれている。特に、天才少女としての呼び声も高い志田未来は、15歳とは思えない堂々とした臆することのない演技には脱帽せざるを得ない。また、正直あまり好きではなかった松田龍平も、この作品では初めて「人臭さ」が感じられてちょっとばかり見直した。