評     価  

 
       
File No. 0916  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年02月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   生野 慈朗  
       
上 映 時 間   131分  
       
公開時コピー   君に届け いのちへの想い  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   松雪 泰子 [as 百田滴]
椎名 桔平 [as 百田良介]
林 遣都 [as 百田瞬太]
奥貫 薫 [as 保井きり子]
市川 実和子 [as 宮里光]
二階堂 智 [as 吉野晃三]
かとう かず子 [as 産科医]
宮崎 美子 [as 吉野秀実]
橋爪 功 [as 諸井 康平]
 
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あ ら す じ    大学病院の外科医百田滴は、結婚10年にして待望の子供を授かった。10年前に乳癌を患い右乳房を全摘出した滴は、同じ外科医で今は医者を辞めてカメラマンへと転身した良介と結婚したものの、すでに38歳になる今子供は諦めていたところに訪れた吉報だったのだ。滴は同じ病院に勤務する親友のきり子に打ち明け、その後満を持して夫・良介に妊娠したことを告げた。滴と良介にとって至福の時が訪れるが、その時の2人はこれから訪れる過酷な運命など知る由もなかった。
 間もなく滴は右胸の異変に気づく。それが癌の再発ではないかと危惧した滴は、病院の器具を使って自分で検査を行うが、結果は疑いなく10年前に患った炎症性乳癌の再発だった。そして、それがもはや根治の可能性がないことも、外科医である滴には痛いほどよくわかっていた。滴に残された選択肢は2つ。癌の治療をせずに子供を産むか、あるいは子供は諦めて治療に専念するか。いずれの選択肢を選んでも、自分で子供を育てるほど余命は残されていない、そのことが滴に子供を産むという選択を決意させた。
 良介に話せば反対される、そう考えた滴は、出産までは誰にも癌のことは打ち明けずにおこうと決心して辞表を提出した。折りもおり、良介に沖の鳥島での3ヶ月に及ぶ撮影の依頼が入る。3ヶ月の撮影に出れば滴の出産に立ち会うことはできないために良介は依頼を断ろうとするが、滴はそんな良介の背を押した。そして、良介に会えない心細さに耐えながら、やがて訪れる出産へとひとりで立ち向かうのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    主人公の滴が、演じる松雪泰子のイメージそのものでとにかく強い女性だ。出産を経験する女性は、男性よりも遙かに痛みに強いというのは事実だが、果たしてそれが精神的な痛み・苦しみに対しても言えるのかはちょっと疑問。さらに言えば、完全に女性中心の展開で男性である良介の立場や考え方が全く無視されているような気がしてならない。
 作品の原作が女性であることがその最大の理由だとは思うが、それにしてもあまりに独りよがりな滴の言動には反感すら覚えてしまった。良介にしてみれば、長い撮影から戻れば我が子に会える、その楽しみだけを支えにしてきたにもかかわらず、帰ってみれば愛する者が確実に死に向かっているという事実を突きつけられる。その絶望を考えれば、良介に癌の再発を隠したまま出産を迎えることなどはできないはず。
 自分はどうあがいても子供が育つまで生きていられない、だから自分が生きていた証として、自分の命を生まれてくる子供に引き継ぎたい、その気持ちはよくわかる。であるならばなおのこと、良介にちゃんと打ち明けて、反対されたならば熱意をもって説得した上で、良介も同意の上で出産に臨むのが本当の夫婦ではないのだろうか。一人で苦しみや痛みのすべてを背負い込むのが美談だとは、私には思えない。