評     価  

 
       
File No. 0919  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年01月31日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   園 子温  
       
上 映 時 間   237分  
       
公開時コピー  
237分の衝撃
実話をベースに描く、無敵の“純愛”エンタテインメント
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   西島 隆弘 [as 角田ユウ]
満島 ひかり [as ヨーコ]
安藤 サクラ [as コイケ]
尾上 寛之
清水 優
永岡 佑
広澤 草
玄覺 悠子
堀部 圭亮 [as ヨーコの父]
板尾 創路 [as コイケの父]
渡辺 真起子 [as カオリ]
渡部 篤郎 [as 角田テツ]
 
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あ ら す じ    敬虔なクリスチャンの家庭に育った高校生の角田ユウは、今は亡き母と交わした約束を胸に、聖母マリアのような理想の女性に出会える日を夢見ていた。そんなある日、神父である父テツの前に奔放な女性カオリが現れ、テツは聖職者にあるまじき行為でありながらもカオリに没頭していく。しかし、神父であるテツが結婚できないのに痺れを切らしたカオリは、わずか3ヶ月で他に男を作って出て行ってしまう。それ以来優しかったテツは人が変わってしまい、ユウに毎日懺悔を強要するようになった。
 毎日のように犯してもいない罪の告白を強いられたユウは、自ら進んで罪を作るようになる。そして、ひょんなことから父が許さない性に関する罪、中でも盗撮の世界に足を踏み入れ魅了されるようになる。盗撮しても性的興奮を覚えることもなく、ただ罪を作るために盗撮を重ねるユウ。そんなユウはある日、仲間との盗撮の腕比べに負け、罰ゲームで女装して女性をナンパする羽目になる。そして、仲間と共に街にくり出したユウは、不良に囲まれていた女子高生ヨーコを助ける。彼女が今まで探し続けてきた“マリア”であると直感したユウはたちまちヨーコに恋に落ち、男を嫌悪し敵視していたヨーコは自分を助けてくれた謎の女性に恋をしてしまう。正体を明かせなくなったユウはサソリと名乗り、携帯の番号を交換してヨーコと別れるのだった。
 ヨーコとの出会いから間もなく、テツがユウに会って欲しい人がいると打ち明ける。そして、レストランでテツと2人、相手の女性を待っていたユウの前に現れたのは、なんとあのカオリだった。しかし、次の瞬間ユウは奈落の底に突き落とされるようなショックを受けた。カオリには連れ子がおり、それがあのヨーコだったのだ!以来、同じ屋根の下でヨーコと暮らしながらも、同い年だが生まれ月が早いユウはヨーコに妹として接しなければならなくなった。サソリとしてはヨーコに恋されながら、兄としてはヨーコに毛嫌いされるユウ。しかし、そんな関係も長続きはせず、事態はある人物の登場によって思わぬ方向へと向かっていく。
 その頃、テレビでも報道されていた謎の新興宗教の団体ゼロ教会の幹部コイケが、信者を一気に増やすために、多くの信者から信頼を得ていた神父であるテツに目をつけていた。彼女はテツとヨーコが通う高校の同じクラスに転入し、自分がサソリだと偽ってヨーコをユウから引き離し始めた。そして、コイケはユウの盗撮を学校やヨーコ、テツやカオリにまで暴露してしまったため、ユウは学校を退学になり、テツやカオリからは叱咤され、ヨーコからは憎悪される始末だった。居場所をなくしたユウは家を飛び出してしまうが、コイケはユウのいない隙にテツとカオリ、ヨーコの3人をゼロ教会に入信させ、洗脳始めるのだった。そのことを知ったユウは、ヨーコや家族を救い出すために単身ゼロ教会の本部に乗り込むのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    次から次へとめまぐるしくシーンが展開するジェットコースター・ムービーで、ほぼ4時間の長尺にもかかわらず「退屈」などという言葉とは全く無縁だった。もしも観る前に眠気に襲われていたとしても、作品が始まったら眠気など忘れてしまうと思われる、それほど桁外れにパワフルな作品だ。クリスチャン、聖母マリア、盗撮、女装、ヘンタイ、同性愛、新興宗教、洗脳などなど実に盛りだくさんの内容が怒濤のように押し寄せてきて、バカバカしいけど真剣で、エロだけども純愛で、それらすべてが気づいてみると愛という最大のテーマに見事に収斂されている。この尺の長さでは、通常の作品と比べると明らかに回転率は半分以下に堕ちる訳で、大抵の劇場は上映に二の足を踏むのではないかと思われるところを、あえて上映に踏み切ったユーロスペースの英断に拍手を贈りたい。
 全編を通して出ずっぱりの西島隆弘と満島ひかりの熱演が素晴らしく、ラストシーンでは彼らの熱に感染したかのように不覚にも目頭が熱くなってしまった。特に、つい先日『プライド』でもお目にかかった満島ひかりは、下着シーンやパンチラ、果ては自慰シーンなど、結構キワドイシーンも少なくないにもかかわらず見事演じ切った役者根性は賞賛すべきで、2作続けて彼女にカウンターを食らわされた感がある。そして、2人を取り巻く渡部篤郎の堅実な演技、渡辺真起子のキレっぷり、安藤サクラの取り憑かれた表情の演技が作品の幅をさらに拡げている。おそらくは、この作品を超える邦画は当分は登場しないであろうと思われる、私にとっては非常に衝撃的な体験だった。