評     価  

 
       
File No. 0925  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年02月21日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ガブリエレ・ムッチーノ  
       
上 映 時 間   123分  
       
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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ウィル・スミス [as ベン・トーマス]
ロザリオ・ドーソン [as エミリー・ポーサ]
マイケル・イーリー [as ベンの弟]
バリー・ペッパー [as ダン]
ウディ・ハレルソン [as エズラ・ターナー]
エルピディア・カリーロ
ロビン・リー
ジョー・ヌネズ
 
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あ ら す じ    ベン・トーマスは、国税庁の身分証を手にあちこちで人と会い、ある時は会話を交わし、またあるときは周囲から評判を聞いて、その人物を観察していた。そして、彼の考える条件を満たす7人に、彼らの人生を大きく変えてしまうであろう贈り物を渡そうとしていた。彼のそんな計画を知るのはただ一人、親友のダンだけであり、ベンは実の弟にすら打ち明けずに計画を進めていた。
 彼はその日候補者である7名の名前が記載されたリストに載っている一人の女性エミリー・ポーサと会った。心臓疾患のために余命わずかと医師から宣告を受けた彼女に国税庁の徴収官として会ったベンは、彼女が贈り物を渡すにふさわしい人物であることを確認した。ところがこの時、彼の完璧な計画に狂いが生じてしまった。異性としてのエミリーに心を動かされてしまったのだ。そして、それからはエミリーが入院すれば見舞い、退院すれば様子を見に、頻繁に彼女と時間を共有することとなった。
 そんな彼は心に、過去の出来事で受けた癒えることのない傷を負っていた。やがて再びエミリーが入院した時、担当医から危険度が最終段階に達したと告げられたベンは、いよいよ計画を実行すべき時が訪れたと判断し、エミリーが寄り添って眠っていたベッドを抜け出して行動を起こす・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『幸せのちから』に続きガブリエレ・ムッチーノ監督とウィル・スミスがタッグを組んだ作品。『幸せのちから』もそうだが、いささか感動の押し売り的な印象を受けるのは否定できないものの、ウィル・スミスが今までにない微妙な演技に取り組んでいることもあり、かなりハイレベルな作品に仕上がっている。異論は後ほど書くとして、主人公ベンの贈り物は何の見返りをも求めない無償の行為で、文字通り我が身を削る自己犠牲以外の何物でもない。そしてそれは、時として受け取る側にしてみれば理由がわからないだけに得体の知れない不安を感じさせる物でもあり、つまりそれは帰する処はベンの自己満足に過ぎないとも言える。「タダほど高い物はない」という諺はアメリカにはないのだろうか?
 ここからは完全にネタバレになるため、伏せ字にしておきたい。読みたい方は例によってマウスでドラッグするか、[Ctrl]+[A]を押していただきたい。
 彼はなぜ死に急ぐのか?それが作品を観終えての最大の疑問だった。肝臓や骨髄、肺を譲るのはまだしも、彼は最後に自ら命を絶ってまでエミリーに贈り物を贈った。既に彼には避けることができない死期が迫っているならともかく、エミリーの心臓がいよいよ危なくなってからでも遅くはないはず。そして、私に言わせれば自らの命を犠牲にしてまで誰かを助けようとするその行為は自己欺瞞とも言うべき行為で、それよりも生きてさらに多くの人を助けるという選択をするのが真の美談であり感動を呼ぶのではないだろうか。死を選ぶのは、一見困難に見えて実は最も手軽な手段でもある。なぜならば、死はすなわち現実からの逃避に他ならないから。そして、その選択は彼の弱さの現れでもある。本当に亡くなった7名に対して償うならば、生きて生きて生き抜くべきだ。死は決して償うことにはならず、それでもなお死を美談として描くならば、私はその点にだけは反感を覚えずにはいられないのだ。
 ネタバレはこのくらいで話を転じると、この作品の主人公のベンは一体何を意図して贈り物をするかの説明が一切ないために、最初はかなり戸惑いを覚えると思う。そして、その後の彼の行動やフラッシュバックで徐々に明らかにされていくにつれ、それまでのベンの意味不明だった言動が初めて意味を持ってくる。その意味では、極めて高度な注意力を要求される作品でもある。ただ、そういった細かな点に気づかなくとも、作品の本質は何ら損なわれることはないから、DVDがリリースされたら再度観直してみるのも面白いだろうと思う。