評     価  

 
       
File No. 0949  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年03月28日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ロン・ハワード  
       
上 映 時 間   122分  
       
公開時コピー   楽園か荒野か
人生を賭けた闘いが始まった!
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   フランク・ランジェラ [as リチャード・ニクソン]
マイケル・シーン [as デビッド・フロスト]
ケヴィン・ベーコン [as ジャック・ブレナン]
レベッカ・ホール [as キャロライン・クッシング]
トビー・ジョーンズ [as スイフティー・リザール]
マシュー・マクファディン [as ジョン・バート]
オリヴァー・プラット [as ボブ・ゼルニック]
サム・ロックウェル [as ジェームズ・レストン]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    母国イギリスとオーストラリアでレギュラーのトーク番組を抱える人気司会者デビッド・フロストは、全世界で4億人が観たという第37代アメリカ大統領リチャード・ニクソンの辞任生中継の視聴率の高さに触発され、ニクソンとの1対1でのインタビュー番組を企画する。そして、ニクソンの代理人スイフティー・リザールを通じて出演依頼の交渉を開始したところ、ニクソン側はフロストが提示した50万ドルという莫大な額のギャラに、さらに5万ドルを上乗せすることを要求してくる。これに対してフロストは意を決して60万ドルを支払うことを確約し、契約は成立した。
 フロストはプロジェクトの仕切役を依頼した英国人プロデューサージョン・バーとと共にアメリカへ飛び、フロストは余裕綽々で機内でナンパしたキャロライン・クッシングを同伴してニクソンと初顔合わせをした。実はニクソンにはこのインタビューを利用して政界に復帰しようという目論見があり、その相手としてイギリス人の軟弱なトーク番組司会者はまさにうってつけだったのだ。そして、フロストをそんな目で見ていたのはニクソンのみならず、アメリカの3大ネットワーク局も同様で、彼らはフロストの企画への出資をことごとく拒否してきた。やむを得ずフロストは、ニクソンに対する前払ギャラの20万ドルを自腹で支払わざるを得なくなってしまう。
 4回に分けて行われるインタビューが始まるが、回を追うごとにインタビューはニクソンの独演会的色彩を強め、弁護士出身で権謀術数に長けたニクソンの前に、フロストは為す術もなく焦りと苛立ちを募らせるばかりだった。ところが、いよいよ最後のインタビューを翌日に控えた夜、フロストにかかってきた1本の電話がかかってきて、これが大きな転機となる。電話の主は、明日最後の闘いに臨もうというニクソンその人だった。
 ニクソンは勝利を確信したかのように、電話でフロストを挑発するかのような言葉を浴びせかけてきた。自分はフロストの最強の敵であり、最後にスポットライトを浴びるのは自分である、と。これを聞いたフロストの中で、絶対に負けられないという思いが燃え上がる。彼はウォーターゲート事件を再び調べ直し、最後のインタビューに挑むのだった・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    ニクソン大統領はウォーターゲート事件のため、アメリカの歴史の中でただひとり任期終了を待たずに辞職した大統領だ。ちなみに、ウォーターゲート事件とは、ニクソン政権の野党である民主党本部があるウォーターゲート・ビルに不審者が盗聴器を仕掛けようと侵入したことから始まり、当初ニクソン大統領は侵入者と無関係との立場をとっていたが、その後次第に政権の関与が明らかになったため、任期中にもかかわらず大統領辞任に追い込まれた事件だ。当時私はまだ詳しいことは何もわからない子供だったが、ニクソン大統領の名と意味もわからずにただ“ウォーターゲート”という単語だけは覚えていた。
 イギリスのバラエティー番組司会者であるフロストが、功名心からかニクソン前大統領のインタビュー番組を撮ろうとしたのが始まりだが、おそらくその時点ではフロスト自身はかなり安易に考えていたと想われるフシがある(それはニクソンも同様で、第3ラウンドまでは完全にフロストをナメていたようだ)。ところが、いざ対決してみると、政治家、それもトップに上り詰めた者の権謀術数にまんまと乗せられて、相手がいかに強大であるかを身をもって知る。その辺りのフランク・ランジェラの演技は貫禄充分で、立て板に水のごとく溢れるセリフが本物の政治家に遜色ない見事さ。そして、対する敗色濃厚となったフロストの、このままではいけないと分かっていながらも手も足も出ない、そんな焦燥感を見事に表現したマイケル・シーンもまた引けを取っていない。そして、クライマックスを迎えるまでの緊迫感と盛り上げ方、その構成・編集は特筆すべきだ。
 対決に敗れたことを悟ったニクソンの憔悴しきったような様子は、まさに「巨星堕つ」という言葉がふさわしい。そして、イギリスに帰国するフロストがニクソンを訪ねて交わす軽い会話が心地良い。ウォーターゲートを知らなくとも充分に見応えのある、重厚な秀作に仕上がっていると思う。結構オススメ。