評     価  

 
       
File No. 0958  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年04月10日  
       
製  作  国   アメリカ / 中  国 / 日  本 / 台  湾
韓  国
 
       
監      督   ジョン・ウー  
       
上 映 時 間   144分  
       
公開時コピー   赤壁の激戦!連合軍、絶体絶命!!  

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   トニー・レオン [as 周瑜]
金城 武 [as 孔明]
チャン・フォンイー [as 曹操]
チャン・チェン [as 孫権]
ヴィッキー・チャオ [as 尚香]
フー・ジュン [as 趙雲]
中村 獅童 [as 甘興]
リン・チーリン [as 小喬]
ユウ・ヨン [as 劉備]
ホウ・ヨン [as 魯粛]
バーサンジャプ [as 関羽]
ザン・ジンシェン [as 張飛]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    赤壁で長江を隔てて対峙する劉備孫権の連合軍5万と、曹操率いる80万の軍勢。その曹操軍を探るために、孫権の妹尚香がひとり男装して潜入していた。曹操の陣営ではなれない風土のためか疫病が急速に拡がっていた。そして、曹操は遺体を即刻火葬にすべきだという進言を却下し、ある一計を講じる。それは、遺体を船で対岸の連合軍へ流すというものだった。
 何も知らない連合軍の兵士たちは、流れ着いた遺体から金目の物や武器を物色したため、たちまち疫病に感染していく。この曹操の卑劣な手段に憤りを感じる連合軍だったが、劉備は自らの民や兵士の命を重んじるあまり、同盟を反故にして撤退を決意する。しかし、劉備軍の軍師である孔明はただひとり、連合軍に留まるのだった。
 残された孫権や周瑜は、劉備なき後もなお曹操軍と戦う意志を翻すことがなかったが、劉備軍が4万本の矢を持ち帰ってしまったために矢が著しく不足していた。そして、その責を負うこととなった孔明は、周瑜に3日で10万本の矢を手に入れられなければ自らの首を差し出すと公言した。そして周瑜もまた、水上戦に長けた敵の武将二名を排除できなければ自分を斬れと宣言する。互いに命を賭けた宣言に肝を冷やす周囲の心配をどこ吹く風と、孔明は10万本を越える矢をまんまと曹操軍から手に入れ、周瑜もまた曹操を疑心暗鬼に陥れることによって敵将二人の暗殺に成功した。ところが、この戦いの一因ともなった周瑜の妻小喬は、ある思いを胸に秘めて一人で曹操の元へと赴くのだった。
 様々な条件が複雑に交錯する中、いよいよ歴史に残る“赤壁の戦い”の幕開けは刻一刻と近づいてくる・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    前作に引き続き、そのとてつもないスケールには圧倒される。がしかし、1作目と合わせてほぼ5時間(289分)という長尺にも関わらず、描かれているストーリーを要約してみると、もっと短い尺で充分収まる内容であることに気づく。例えるなら、冷凍食品のエビフライのように、肝心のエビが貧弱であるのを必要以上に衣で覆って誤魔化しているような、そんな印象すら受けてしまう。
 まず言っておきたいのは、この作品は歴史大作ではなく、あくまで三国志をモチーフに描いた、ジョン・ウーが得意とするアクション大作であることだ。そもそも、赤壁の戦いはとてつもない死傷者を出した血みどろの戦いのはずで(その証拠に80万とも言われた曹操軍はほぼ全滅している)、周瑜をして「この戦いに勝者はない」などという綺麗事を言わせるような戦いではない。そして、小喬や尚香にまつわるエピソードはハッキリ言って邪魔なだけで、必要性はまったく感じない。加えて言わせてもらうならば、小喬は「絶世の美女」と謳われているが、中国人と日本人である私との美人に対する感性の違いか、演じるのがリン・チーリンでは説得力がゼロに等しい。これが例えばチャン・ツィイーが演じたならば納得もできるだろうが(笑)。
 そんな中、私がこの作品で特筆すべきと感じたのは、金城武扮する孔明の存在だ。策士にふさわしい物事に動じない不貞不貞しさを金城が実に見事に演じていて、特に10万本の矢を手に入れるくだりや風の動きを読む辺りは、劉備をして三顧の礼をさせたほどの得難い軍師であることを充分に証明している。金城武のあれほどまでに強い目の光には、未だかつて遭遇した記憶がない、それほど強い印象となって焼き付いている。対すトニー・レオン扮する周瑜だが、少なくともこの作品では単に「曹操に横恋慕される小喬の夫」に過ぎないように受け取れる。まして、戦場で孔明が恐れるほどの存在であるなどとは、到底思えないのだ。また、曹操を典型的な粗野な悪役として描いていること、劉備や孫権があたかも孔明や周瑜の部下であるかのような端役程度の描き方にも不満が残る。作品の壮大なスケールとその迫力のみを愉しむならば、充分に評価できる作品ではあるのだが・・・・・。