評     価  

 
       
File No. 0959  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年04月11日  
       
製  作  国   イギリス / イタリア / フランス  
       
監      督   ソウル・ディブ  
       
上 映 時 間   110分  
       
公開時コピー   18世紀にも、スキャンダル。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   キーラ・ナイトレイ [as ジョージアナ・スペンサー]
レイフ・ファインズ [as デヴォンジャー公爵]
シャーロット・ランプリング [as レディ・スペンサー]
ドミニク・クーパー [as チャールズ・グレイ]
ヘイリー・アトウェル [as レディ・エリザベス・フォスター]
サイモン・マクバーニー [as チャールズ・ジェームズ・フォックス]
エイダン・マクアードル [as リチャード・シェリダン]
 
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あ ら す じ    18世紀のイギリス。17歳の貴族の娘ジョージアナ・スペンサーは、最も裕福な貴族のひとりデヴォンジャー公爵からの求婚を受け、デヴォンジャー公爵夫人となることとなった。情熱的な性格のジョージアナは新生活に大きな期待を抱いていたが、公爵夫人としての生活は彼女の想像とは異なり味気ないものとなった。
 歳の離れた夫は妻に対して何ら関心を示さず、彼女に求めるのはただひとつ、後継者となる男の子を産むことだけだった。それでも彼女は、公の場では公爵夫人として魅力的に振る舞い、その斬新な衣装は社交界の話題の的となった。そして、賭け事にも興味を示した彼女は政治の世界にも足を踏み入れ、やがて彼女は美しく聡明な公爵夫人としてロンドン中に話題を振りまくようになった。
 そんな一方で、彼女の結婚生活に対する不満は募る一方だった。公爵は結婚前に愛人に生ませた幼い少女の面倒を彼女に押しつけたのに始まり、ジョージアナとの間に生まれた娘たちには一切関心を示さない。そればかりか、彼女にとってただひとりの親友で唯一心の安まる相手であったレディ・エリザベス・フォスターを愛人にしてしまうのだった。
 やがて、ジョージアナはついに待望の男の子を出産したが、公爵との仲は依然として冷えたままだった。しかし、そんな彼女の心はチャールズ・グレイとの再会で火が点けられる。民衆のための新しい政治を家を目指す彼は、夫とは正反対で一途な情熱を彼女にぶつけてきた。たちまち2人は激しい恋に落ちるが、その関係は社交界では大スキャンダルとなってしまい、公爵と母は彼女にチャールズとの恋を諦めるように忠告してきた。そして、ジョージアナは考え抜いた末にある決意を固めるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    私はこの時代の英国貴族というシチュエーションに身を置いたことは当然にないわけで、詳しいことはわからないが、私にはレイフ・ファインズ扮するデヴォンジャー公爵がそれほど悪人には思えない。いや、それどころか、自分を表現するのが苦手であるが故に、妻に対して必要以上に接触することを畏れ、それがさらに誤解を生んでいったという、公爵という立場の呪縛を受けた不器用な哀しい男に思えるのだ。
 もちろん、作品は原題“THE DUCHESS”が示す通りキーラ・ナイトレイ扮する公爵夫人が主人公であるから、観ているとどうしても夫人=被害者、公爵=加害者という図式に陥りやすいと思う。確かに、21世紀の現代にあんな男がいたとしたら、全女性はもちろんのこと男性からさえ非難が集中するのは間違いない。しかし、舞台は18世紀であり、日本はと言えば未だ徳川幕政時代で、この作品など比較にならないほど“異常な世界”がまかり通っていたことを考えると、公爵に異を唱えて手討ちならないだけはるかにマシかもしれない。
 冗談はさておいて、ジョージアナが嫁いだ時はまだ17歳、恋多き多感な少女であり、公爵にとって彼女はさぞかし得体の知れない生き物であったことだろう。恋に憧れた少女と、そんな時代は既に遙か昔に老いてきてしまった公爵、そのジェネレーション・ギャップが2人を隔てる越え難き壁だったのだ。そして、その壁を打破すべく、今まで自分のスタイルを強引に貫いてきた公爵が自らを語り始めるシーンが非常に印象的だ。結局、期待した打ち明け話はなく、「あれ?」とキツネにつままれたような気分ではあったが、それでもしゃがみ込んだジョージアナに手を差し伸べる、その単純な行為に及ぶのにも彼にとっては苦痛に満ちた譲歩の決断が必要だったのだろうと思われる。そして、それが解っていたからこそ、ジョージアナも彼の差し伸べた手を素直に受け入れたのだろう。
 それにしてもキーラ・ナイトレイは時代物の豪華な衣装が映える女優で、改めて振り返ってみると現代劇の彼女は『ドミノ』と『ジャケット』しか知らない。この作品もアカデミー以上デザイン賞を受賞しただけあって、絢爛豪華の当時のイギリス社交界を再現してくれており、その中でもひときわ輝いていたデヴォンジャー公爵夫人を見事に演じてくれている。