評     価  

 
       
File No. 0964  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年04月18日  
       
製  作  国   イギリス / アメリカ  
       
監      督   ダニー・ボイル  
       
上 映 時 間   120分  
       
公開時コピー   運じゃなく、運命だった。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   デーヴ・パテル [as ジャマール・マリク]
アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール [as ジャマール(幼少)]
フリーダ・ピント [as ラティカ]
ルビーナ・アリ [as ラティカ(幼少)]
マドゥル・ミッタル [as サリーム・マリク]
アズルディン・モハメド・イスマイル [as サリーム(幼少)]
アニル・カプール [as プレーム・クマール]
イルファン・カーン [as 警部]
 
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あ ら す じ    インド・ムンバイのスラムで育った無学の青年ジャマール・マリクは、世界最大のクイズショー「クイズ$ミリオネア」に出場し、あと1問正解すれば2000万ルピーという番組史上最高額の賞金を手にするという時に警察に逮捕されてしまう。無学の彼がここまで勝ち抜いたのは不正を働いたためだという疑いをかけられたからだった。
 幼い頃に母親を目の前で殺されて孤児になったジャマールと兄のサリームは、やはり両親をなくした少女ラティカと出会い、以来3人はいつも手を取り合って過酷な運命を生き抜いてきた。しかし、孤児たちを集めて搾取する組織に3人は捕らえられてしまい、そこから逃げ出す際に逃げ遅れたラティカと引き離されてしまう。
 次にジャマールがラティカと再会したのは、とある娼館だった。そこでサリームは、かつて彼らを捕らえた組織のボスを銃で射殺してまでラティカを救い出す。しかし、その時のサリームはすでに金と権力に囚われて以前の純粋さを失っていた。ラティカはサリームに奪われてしまい、ジャマールは再びラティカとの別れを余儀なくされてしまう。
 彼がそれまで生きて経験してきたすべてが、クイズの答えへと結びついていく。そして、クイズに次々と正解していく時にも、彼の胸にはいつもラティカへの想いがあった。そして、ついに迎えた最後の問題。答えを知らないジャマールは、最後のライフラインであるテレフォンを選択する。彼が電話をかけた相手とは?そして、運命は彼に対してどのような采配を下すのだろうか・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    オスカー受賞作が立て続けに公開されるこの週末、ショーン・ペンが主演男優賞を受賞した『ミルク』の次は、言うまでもない作品賞を受賞したこの作品で、初めてアカデミー作品賞を受賞した作品を虚心坦に懐面白いと感じたような気がする。無学の青年ジャマールがクイズ・ミリオネアに挑戦する、それはあくまでも本筋ではなく、作品の骨子は彼の歩んできた半生であり、ラティカとの間にはぐくまれた絆と愛情だ。幼少時代のラティカを演じたルビーナ・アリの大きな瞳と、現在のラティカを演じたフリーダ・ピントの美しさがジャマールの一途さに対する共感を生む。
 東宝系の劇場がメイン館だけに、地元のTOHOシネマズでは嫌というほどみのもんたが登場する予告編を見せつけられて少々食傷気味だったが、そんな懸念を吹き飛ばすような生命力に溢れた作品だ。舞台となるインドのムンバイにある、ジャマールが生まれ育ったスラム街。そこでの日常は、日本で暮らす私には正直想像を絶するものだった。そして、そこで生きる子供たちの生命力の強さには頭が下がる。ニセのガイドを務めるジャマールの客の車が、ちょっと離れた隙に金目の物はおろかタイやまでもが盗まれており、「これがインドだ」と言ったジャマールの言葉がすべてを象徴している。
 前述のみのもんたの登場する予告編では「なぜ無学の彼は正解できたか?」という問題が提示され、選択肢は A.インチキだった B.ついていた C.天才だった D.運命だった の4つだった。そして、同じ問題は作品本編でも投げかけられる。もちろん答えは「D.運命だった」であり、それが例えばジャマールが$100札の肖像は知っていても1000ルピー札の肖像は知らなかったことであり、あるいは最後の問題で三銃士の3人目の名前なのだ。なぜ彼が問題の答えを知ったかに絡めて、彼の人生を回顧していくその巧みな構成は見事だ。そして、彼の記憶の中には常にラティカの存在があった。彼がミリオネアに出場したのも金のためなどではない。ただラティカに会いたいがためであって、観ている私までが2度もジャマールからラティカを引き離した運命の非情さを呪いたくなった。果たして、三度目の正直で彼はラティカに三たび会うことができたのか?それは本編を観てのお楽しみにしておくべきなので伏せておきたい。
 余談になるが、昨年の『ノー・カントリー』に続き今年の『スラムドッグ$ミリオネア』と、いずれもメイン館はTOHOシネマズシャンテ(旧シャンテシネ)。立て続けにオスカー作品賞受賞作を東宝が引き当てたのは、これも運命だったのか?