評     価  

 
       
File No. 0980  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年05月09日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   廣木 隆一  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー    生きること。愛すること。命のメッセージを伝えるために。  
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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   榮倉 奈々 [as 長島千恵]
瑛太 [as 赤須太郎]
手塚 理美 [as 加代子]
安田 美沙子 [as 花子]
柄本 明 [as 長島貞士]
大杉 漣 [as 赤須敏郎]
津田 寛治 [as 岡田]
田口 トモロヲ [as 奥野]
 
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あ ら す じ    イベントコンパニオンの長島千恵はとある展示会場で、会場を間違ったことから赤須太郎と知り合う。その後何度か一緒に過ごした末、千恵は太郎から正式に交際を申し込まれるが、一瞬千恵は返答を躊躇してしまう。彼女はその時既に医師から乳癌と診断されていたためだった。けれども、悩みながら始まった太郎との交際は、千恵にとってはこの上ない幸せな時間だった。しかし、太郎に隠してきた癌のことを打ち明けなければならない日が、やがて訪れる。
 抗癌剤の影響で毛髪が抜けたことに太郎に気づかれてしまった千恵は、自分が乳癌に冒されていること、胸を切除しなければならないことをついに告白した。そして、太郎に置き手紙を残して千恵は姿を消してしまう。千恵は自分の母親を癌で亡くしており、癌と闘病する周囲の者の辛さをわかってからこそ、敢えて太郎と別れることを決断したのだった。
 千恵は太郎から聞かされていた屋久島を訪れていた時に、自分を追ってきた太郎と再会する。そして、太郎の強い思いに動かされた千恵は、再び太郎と生きていくことを決意した。そして、お互いに変わらずに一緒にいることを2人は約束するのだった。
 しかし、千恵と太郎にとって幸せな時間はつかの間で、やがて千恵の癌が再発する。千恵は入院を余儀なくされ、太郎は千恵に付き添って介護する決意を父親の敏郎に打ち明けるが、敏郎からは冷たく突き放されてしまう。しかし、それも実は太郎はもちろんのこと、千恵の辛い気持ちまでをも気遣ったことの表れだった。
 そしてある日、太郎は千恵の父貞士や叔母の加代子と共に千恵の主治医に呼ばれ、哀しい宣告を受けた。千恵の余命は1ヶ月かそれよりも短くなるという。残された時間は少ないことを知った太郎は、千恵にウェディング・ドレスを着せてやりたいと強く決意するのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    エンド・クレジットを観て驚いたのは、トップが瑛太で次に安田美沙子の名前が登場し、てっきり榮倉奈々は最後かと思ったらキャストの列記が終わってしまったこと。一体どうなっているのかと疑問に思ったら、最後の最後に監督の名前が表示され、さらにその後にやっと榮倉奈々の名前が。そこからも分かる通り、この作品の出来・不出来はすべて榮倉奈々の演技にかかっていたと言っていい。そして、その点が観る前に私が最も不安を感じた点でもあった。もしかしたら、シリアスなドラマが彼女の下手な演技のために、コメディになってしまうのではないか、そう危惧されたのだ。
 初めて彼女にお目にかかったのは松潤と共演した『僕は妹に恋をする』で、その時は強いインパクトを受けたものの、続く『渋谷区円山町』やドラマ『プロポーズ大作戦』で彼女の演技力の拙さが見えてしまい、以来彼女にはそれほど魅力を感じなくなっていた。そんな状態で臨んだこの作品の榮倉奈々だったが、ちょっと観ない間に見違えるほど演技が上手くなったというのが正直な感想だ。もちろん、観る人が観ればまだまだ下手に映るかもしれないだろうが、以前の彼女と比較すれば格段の進歩だと私には思えた。
 唯一の不安要素がなくなって、瑛太の演技は期待通りだし、ベテランの柄本明、大杉漣、手塚理美らが周囲を固めており、安心して観られる作品だと言えるだろう。これがもしドキュメンタリーであれば、あまりの痛々しさに目を背けたくなるシーンもあるだろうが、映画にしたことで一種のオブラートに包まれたような効果があるのは助かる。そして、描かれているのはあくまで事実だからこそ、下手な作り話からは感じられないような圧倒的な説得力をもって観る者に訴えかけてくる。若くして散っていった長島千恵さんのご冥福を、心からお祈りします。