評     価  

 
       
File No. 0985  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年05月16日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   深川 栄洋  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー   語り尽くせないほどの「ありがとう」
夫から妻へ、妻から夫へ。
日本中で交わされた86,441通の愛の実話、映画化!
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   中村 雅俊 [as 立花孝平]
原田 美枝子 [as 立花ちひろ]
井上 順 [as 佐伯静夫]
戸田 恵子 [as 長谷部麗子]
イッセー尾形 [as 松山正彦]
綾戸 智恵 [as 松山光江]
星野 真里 [as 橘マキ]
内田 朝陽 [as 八木沼等]
石田 卓也 [as 北島進]
金澤 美穂 [as 佐伯理花]
佐藤 慶 [as 京亜建設会長]
原 沙知絵 [as 根本夏美]
石黒 賢 [as 麻生圭一郎]
 
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あ ら す じ    大手建設会社・京亜建設の重役として定年を迎えた橘幸平は、社を出て向かった先は妻ちひろが待つ我が家ではなく、恋人の夏美のマンションだった。ちひろとは合意の上で離婚し、夏美が経営する建設事務所の共同経営者として今までの経験を存分に生かすつもりでいた。けれども、馴染みの取引先から言われた「うちが付き合ってきたのはあなたじゃない、京亜建設だ」という一言にすべての自信が瓦解する。
 夫と別れて時間を持て余すちひろは、翻訳家・長谷部麗子のマンションで家政婦として働くこととなった。ちひろが作った料理を気に入ったことがきっかけで、ちひろは麗子と食事を共にするようになる。そして、麗子に誘われて人気ミステリー作家麻生圭一郎のパーティに出席したちひろは、麻生から食事に誘われ、やがて麻生と個人的に親しくなっていく。
 魚屋を営む松山正彦光江の夫婦。正彦が糖尿を患って以来、主治医のく佐伯静夫の指示に従い、夫のために口うるさいまでに食事制限を徹底し、毎夜のウォーキングを共にこなす光江。正彦はそんな光江が叱咤する言葉を聞き流しながら、通り道にある楽器店のウインドウに飾られているギターの名器マーチンの前でいつも足を止める。ところが、佐伯からやっとアルコールの許可が下りて喜んでいた矢先、光江の脳腫瘍が発覚し正彦はショックを受ける。「俺より先に逝ったら許さない!」そう言って手術に向かう光江を見送った正彦は、帰宅して押し入れの中に光江が買っておいたマーチンを見つけ、ギターを抱えて泣きじゃくるのだった。
 5年前に妻を亡くし、高校受験を控える娘の理花と2人暮らしの佐伯静夫は、出世コースからもはずれて冴えない人生を送っていた。しかし、翻訳家の長谷部麗子から海外の医療小説の監修を頼まれて以来、麗子に会えるのを楽しみにしていた。麗子もまた、得意分野の話になると我を忘れて熱弁をふるう静夫の実直さに好感を抱いていた。ところが、監修のお礼に静夫と理花を食事に招いたところ、麗子の振る舞いに亡き母とのあまりのギャップを感じた理花は、父親の静夫には不釣り合いな相手だと悪態をつき部屋から飛び出してしまう。
 60年近い人生を歩んできた3組のアラ還世代の男女が、それぞれの今までそしてこれからを紡ぎあげていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    予想通りだったことは、集まった観客では私が最年少らしかったこと。予想外だったのは、これほど感動させられるなどとは夢にも思っていなかったこと。これが若い世代の恋愛を描いた作品であれば何の変哲もないラブストーリーに終わってしまいそうだが、この作品の登場人物にはそれぞれに歩んできた長い道のりがあり、幾重にも刻んできた年輪がある。そのために若者のように思うままに振る舞えない、思ったことをストレートに口にできない、そんな“経験”に邪魔をされたもどかしさがにじみ出ていて好感が持てる。
 個人的には、イッセー尾形と綾戸智恵が演じる魚屋の夫婦のエピソードが非常に気に入った。普段は口うるさい妻の光江も、実は心の底では夫を思いやる気持ちにあふれていて、正彦が欲しがっていたギターをこっそりと買っておくなんていう心遣いには胸にグッとくるものがあり、正彦がギターを抱いて涙する気持ちもよくわかる。そして、正彦も妻の気持ちに応えて、光江の病室で2人の思い出の曲であるミッシェルを弾き語りする姿が、その歌が決して上手くないだけに余計に感動を誘う。
 それに比べると、中村雅俊扮する橘孝平と原田美枝子扮するちひろの夫婦は、イッセー尾形夫婦とは反対で思っていることを互いに口に出さずに、一種の仮面夫婦のような最近ではよくあるタイプの夫婦だ。そして、妻をないがしろにして顧みない孝平の一方的な身勝手さが鼻について仕方ない。そこまでして仕事に打ち込んで築き上げてきたものが、定年退社して初めて何の役にも立たないことを知ると同時に、今まで妻が自分を支え続けていてくれたことに気づく。他の2組がハッピーエンドなのだから、妻を失って初めてその大切さに気づいたが時すでに遅く、妻は他人のものに・・・・・なんて終わり方が1組あってもいいのではないかと思ってしまった。