評     価  

 
       
File No. 0993  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年05月30日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ジョー・ライト  
       
上 映 時 間   117分  
       
公開時コピー   奏で続けていれば、いつかきっと誰かに届く。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジェイミー・フォックス [as ナサニエル・エアーズ]
ロバート・ダウニー・Jr [as スティーヴ・ロペス]
キャサリン・キーナー [as メアリー・ウェストン]
トム・ホランダー [as グラハム・クレイドン]
リサゲイ・ハミルトン [as ジェニファー・エアーズ・ムーア]
 
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あ ら す じ    ロサンゼルスの殺風景な公園には不似合いの美しバイオリンの音色に、ロサンゼルス・タイムスの記者スティーヴ・ロペスは思わず足を止めた。演奏していたのはみすぼらしい服装の黒人男性で、彼の弾くバイオリンには弦が2本しかなかった。彼は名をナサニエル・エアーズといい、驚いたことに名門ジュリアード音楽院にいたという。ロペスはナサニエルに強い興味を持ち、彼を題材にコラムを書くべく身辺を調べ始める。
 ナサニエル・エアーズは確かにジュリアードに在籍していたものの、卒業できずに中退していた。しかし、彼にチェロを教えていた音楽教師は、ナサニエルが本気で音楽に取り組んだら、世界がひれ伏すほどの才能だと証言する。ロペスが書いたナサニエルのコラムは反響を呼び、感動した一読者からナサニエルへとチェロが送られてきた。早速チェロを届けると、ナサニエルは宝物をもらった子供のような喜びようで、その場でチェロを奏で始めた。その音色にロペスは、自分がどこか違う世界へ連れて行かれるかのような錯覚を覚えるのだった。
 天才チェリストのナサニエルがジュリアードを退学し路上生活者となった理由は、統合失調症と呼ばれる心の病で、そんなナサニエルのコラムを書き続けているうち、ロペスはジャーナリストとしてのモラルの枠を逸脱してまでも彼を助けたいと思うようになる。ロペスはL.A.フィルの主席チェリストグラハム・クレイドンにナサニエルのレッスンを依頼し、路上生活者支援センターのアパートを彼のために借りた。しかし、それらのことが原因で、ナサニエルはロペスの思惑とは逆に精神状態が次第に不安定な状態に陥ってしまうのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ジェイミー・フォックスとロバート・ダウニー・Jrの好演が光る。ジェイミー・フォックスはこの作品のためにチェロとバイオリンの猛特訓を積んだとのことで、この作品ではすべて吹き替えなしで見事な演奏を披露してくれている(ただし、その演奏が果たして「天才」と呼ぶに匹敵するほどの名演奏であるかは別問題だが)。主役の2人の熱演にもかかわらず、思ったほど気持ちを動かされるようなこともなくアッサリと終わってしまったのは、やはり脚本のせいだろうか。
 この作品のもっとも肝心な点である、ロペスとナサニエルの間に芽生える友情がいまひとつ伝わってこなかったのがその最たる理由だろうと思う。ロペスのナサニエルに対する言動からは、コラムのネタにしたいとう職業意識が強く感じられると同時に、無意識のうちにナサニエルを上の立場から見下ろすような接し方をしているように感じる。一方のナサニエルは、自分を物的面で助けてくれるロペスに対するうわべだけの儀礼的な感謝心は持っていても、それはあくまで相手の方が立場が上だという前提に基づいたもので、いわゆる対等な友情とは思えないのだ。その証拠が、ナサニエルの怒りがロペスに対して爆発した際の「自分はミスター・ロペスと呼んでいるのだから、ナサニエルと呼ぶな!」という台詞に如実に表れているように思える。