評     価  

 
       
File No. 0996  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年05月30日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   熊澤 尚人  
       
上 映 時 間   119分  
       
公開時コピー   初めて好きになったのは、
あなたが生きている音でした。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   岡田 准一 [as 聡]
麻生 久美子 [as 七緒]
谷村 美月 [as 茜]
岡田 義徳 [as 氷室]
池内 博之 [as シンゴ]
市川 実日子 [as 由加里]
郭 智博
清水 優 [as 山賀]
とよた 真帆
平田 満 [as 荒木]
森本 レオ
 
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あ ら す じ    風景写真を撮りたいと思いながらも、高校時代からの友人であるトップモデルシンゴの専属カメラマンとしての自分を捨てきれない。フラワーデザイナーを目指して花屋でアルバイトをしながら、フランス留学を間近に控えた七緒。共に30歳で恋人のいない2人は、古いアパートの隣同士だったが挨拶はおろか顔を合わせたことすらなかった。けれども、薄い壁を隔てて聞こえてくる互いの生活音、七緒の鼻歌やフランス語のレッスン、加湿器のアラームや鉄火箸の風鈴の音、聡がコーヒー豆を挽く音や、キーホルダーの音、それらの音がいつの間にか互いに安らぎをもたらす音になっていた。
 平穏だった2人の生活に変化が訪れる。聡は本格的に風景写真に取り組むためにカナダ行きを考えるが、それが人づてにシンゴに伝わってしまい、シンゴが行方をくらましてしまう。そして、聡のアパートに見知らぬ女性の訪問客があった。彼女はシンゴの恋人で、妊娠三ヶ月だという。突然行方知れずになったシンゴが、必ず友人である聡の部屋に訪れると言い張る彼女は、シンゴが戻るまで強引に聡の部屋に居候を決め込んでしまう。そんな茜に、ある日聡は怒鳴りつけてしまうが、彼が茜に投げた言葉は実はすべて自分に当てはまることに気づき愕然とする。
 一方の七緒は、店に訪れた男性客から花束をオーダーされる。その男氷室は、まだ話したこともない相手にその花束を贈りたいといい、七緒がアレンジした花束を受け取ると、それをそのまま七緒に渡す。実は氷室は七緒が帰宅途中によく立ち寄るコンビニの店員で、彼が想う女性とは七緒のことだったのだ。突然の氷室の告白に戸惑いながらも、冷たくあしらうわけにもいかずに花束を受け取る七緒だった。しかし、やがて氷室の本心を知った七緒は深く傷ついてしまう。
 聡はシンゴのカメラマンという拘束を逃れ、ついにカナダ行きを決意する。そして七緒もまた、念願のフランス留学が直前に迫る。互いの音はよく知りながらも、幾度もすれ違い未だに顔を合わせたことのない聡と七緒だったが、やがて思いもかけない場所で遭遇することになるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    5月の公開スケジュールを更新する際にうっかりと欠落させてしまい、危うくこの作品の存在自体を忘れてしまうところだったが、たまたま某シネコンのスケジュールを見ていたら上映されていることがわかり、映画の日ということもあり急遽劇場へ行ってきた。1,000円だからハズレでも仕方ないなぁ、などと思っていたのだがとんでもない、思いっきり気に入ってしまった(笑)。
 麻生久美子は言うまでもないが、岡田准一も上手いと改めて痛感した。なぜ演技が上手いともてはやされているのかがまったく理解できない、同じ事務所の先輩の木○○哉や後輩の二○○也は、こういうのが上手い演技だということを勉強し直してほしいものだ。そして、この作品が気に入ったもうひとつの理由は脇役にあり、言うまでもない私が気に入っている谷村美月嬢の存在だ。彼女は私が推すティーン女優のランキングで、不動の1位・成海璃子に続く第2位だけあって(ちなみに、以下大後寿々花、志田未来と続く・・・・・なんてことはここでは関係ないか)、しかも得意の関西弁とあって、実に生き生きとした演技を披露してくれているのが嬉しい。
 舞台となるアパートはいかにも昭和の異物といった感じの古アパートで、だからこそ最近のアパートやマンションではあり得ないほど壁が薄く、あらゆる音が筒抜け状態だ。そして、顔は知らないが隣の住人の建てる音はよく知っていて、その音を聞くといつもと変わらない日常が実感できて、むしろ静寂よりも安心できる。身近な生活音というのは意外に重要。だから、この作品のタイトルも『お隣り』であり『音なり』なのだ。エンド・クレジットでキャストやスタッフの名前がロールする中、聡と七緒の声だけが聞こえ、聡がカナダへ、七緒がフランスへ行って戻った後の情景が想像できる。映像がなくて声だけなのも「音」を意識したこの作品ならではの演出だろう。