評     価  

 
       
File No. 1004  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年06月13日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ダーレン・アロノフスキー/td>  
       
上 映 時 間   109分  
       
公開時コピー   人生は過酷である、ゆえに美しい。  

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   ミッキー・ローク [as ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン]
マリサ・トメイ [as キャシディ]
エヴァン・レイチェル・ウッド [as ステファニー]
マーク・マーゴリス
トッド・バリー
ワス・スティーヴンス
ジュダ・フリードランダー
アーネスト・ミラー
ディラン・サマーズ
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    1980年代に全米No.1のレスラーとしてその名を轟かせたランディ・“ラム”・ロビンソン。それから20年が経過し50代になった今もなお、スーパーマーケットでバイトをしながら、かろうじてプロレスを続けていた。妻とは離婚し、娘からも見放された彼の唯一の心の拠り所は、彼と同じく峠を越えたストリッパーのキャシディだった。
 ある日、ランディは試合後に控え室で嘔吐してそのまま意識を失ってしまう。目を覚ました彼は病院のベッドの上で、心臓発作のためにバイパス手術を受けた後だった。そして、担当医はランディに、軽い運動はできるがプロレスは無理だと告げたが、それは彼にとっては死亡宣告に等しいものだった。何もかもをかなぐり捨て、家族までも顧みずに打ち込んできたプロレスを禁じられた彼には、もはや何も残されていなかった。
 引退を余儀なくされたランディは、一人娘ステファニーとの関係を修復したいと考え、キャシディに相談した。そして、キャシディに付き合ってもらい選んだ服をプレゼントに娘に会ったランディの想いは通じ、ステファニーの頑なな心は解きほぐされたかに思えた。しかし、娘と交わした食事の約束をすっぽかしてしまい、それまで以上にステファニーはランディを拒絶するようになってしまう。一方で、ランディはキャシディに想いを打ち明けるが、キャシディはストリッパーとその客という一線を越えることを拒み、ランディの想いを受け入れてはくれなかった。
 すべてを失ったランディに残された場所、それはプロレスだけだった。引退を撤回したランディは、20年前に行われた記念すべき試合の再試合に臨む決意を固める。そして試合当日、場内はランディに対する観客の熱い声援で満たされ、仕事を放り出してまで駆けつけたキャシディの制止すら、もはやランディには届かなかった・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    私は今までミッキー・ロークという俳優は正直言うと嫌いなタイプの役者だった。ハリウッドのトップ・スターだった1980〜90年代、天狗になった彼の高慢さ・傲慢さはは鼻持ちならず、その頃の良からぬ印象があまりに強かったためにどうしても好きになれなかったのだ。もっともそれは私に限ったことではなく、今年のアカデミー賞でも演技自体は高く評価されていながら、その当時の彼を知る業界人は少なくないため、結局票が集まらなかったようだ。彼自身も俳優としての現在の衰退ぶりは身から出た錆と自覚しているようで、そのためかこのところの彼の作品に対する真摯な取り組み方には目から鱗が落ちる思いだ。
 かつては全米中にその名を轟かせた、という点でこの作品のランディとミッキー自身が重なる部分は大きい。とはいえ、『シン・シティ』の時に既に感じてはいたのだが、以前のの典型的な優男のイメージをかなぐり捨て、筋肉の塊の怪物とも言える体に鍛え上げるのは並大抵の努力ではなかっただろう。今はもう“猫パンチ”と揶揄された時のイメージは微塵も残っていない。そして、役柄に対するのめり込み方も半端じゃなく、血まみれの場外乱闘までをスタントなしでこなす姿を観ると、彼自身に対してはもちろんのこと、実際のプロレスラーに対してさえも畏敬の念すら感じずにはいられない。
 ランディは過去の栄光に縋り付いて生きてきたわけではなく、彼にとってはプロレスこそが生き様であり、唯一生きて行ける場所だったのだ。だからこそ、一時は絆を取り戻したかに思えた娘のステファニーから愛想を尽かされ、想いを打ち明けたキャシディにも拒絶された彼には、生きていく場所はプロレスしか残されていなかったのだ。一度は決意した引退を翻し、命の危険をも顧みずにキャシディの制止をも振り切ってリングに立ったランディは、たとえその試合で命を落とすことになっても本望だったのだろう。命がけであるからこそ、その勇姿は神々しいばかりに輝いて見える。
 ランディが心を寄せるストリッパーのキャシディに扮したマリサ・トメイがまた素晴らしい。この作品に出演当時の実年齢は44歳なのだが、30代前半にしか見えないくらい若い!ストリッパーという役柄上トップレスになるシーンもあるが、惜しげもなく披露されるボディ・ラインが美しい。そして、それ以上に素のパムに戻った時の(こう言っては失礼かもしれないが)あどけない笑顔が本当に魅力的だった。