評     価  

 
       
File No. 1008  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年06月19日  
       
製  作  国   アメリカ / ド イ ツ  
       
監      督   スティーヴン・ダルドリー  
       
上 映 時 間   124分  
       
公開時コピー   わずか1ページで終わった恋が、
永遠の長編になる
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ケイト・ウィンスレット [as ハンナ・シュミッツ]
レイフ・ファインズ [as マイケル・バーグ]
デヴィッド・クロス [as マイケル・バーグ(青年時代)]
レナ・オリン [as ローズ・メイザー/イラナ・メイザー(現在)]
アレクサンドラ・マリア・ララ [as イラナ・メイザー(1966年)]
ブルーノ・ガンツ [as ロール教授]
 
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あ ら す じ    1958年のドイツ。15歳の少年マイケル・バーグは、突然猩紅熱に襲われたところを助けられたことがきっかけで、路面電車の乗務員を務める30代の女性ハンナ・シュミッツと知り合い、激しい恋に落ちる。ある時、マイケルはハンナに本を読んで聞かせたところ、それからは必ずハンナは本の朗読を頼むようになり、いつしかそれが2人の間での儀式となる。ところが、その真面目な仕事ぶりが認められ事務職への昇進を言い渡されたことをきっかけに、ハンナは突然姿を消してしまった。
 1966年。法学科の大学生となったマイケルは、ある日セミナーのロール教授に連れられて裁判の傍聴に訪れた。そして、そこで8年ぶりにハンナに再会するが、皮肉にもハンナはその裁判の被告人として裁かれる立場にあった。ハンナは戦時中に犯した罪を数名の女性被告人と共に問われていたが、他の被告人はすべての罪をハンナに着せようとしていた。ハンナに他の被告人たちの不当な証言を撤回する機会が与えられるが、彼女はある秘密を守るために甘んじて受け入れてしまう。この時、傍聴していたマイケルはハンナが守ろうとした秘密を知るたった一人の人間だったが、それを公にすることは出来なかった。結局、他の被告人たちは4年の懲役を言い渡されたのに対し、ハンナ一人が責任者に仕立て上げられてしまい無期懲役を宣告されてしまった。
 1976年。弁護士となったマイケルは、再びハンナの朗読者になることを決意していた。彼はハンナとの思い出の小説を筆頭に、次々とテープレコーダーに朗読を吹き込み、獄中のハンナへと送るのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ご存じ、ケイト・ウィンスレットが初のアカデミー主演女優賞に輝いた作品。ちなみに、エンド・クレジットではもちろん彼女の名前がトップだったし、米国・英国のアカデミー賞も共に主演女優賞だが、ゴールデン・グローブと放送映画批評家協会賞では助演女優賞と、この作品における彼女のポジションに対する認識が異なっているようだ。私個人としては、同じ2008年の作品でも『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』の演技の方が遥かに凄みがあるとは思うが、いずれにしても単なるフロックではなく、客観的に見ても(と言いつつ、かなり私情が絡んでいる気もするが)順当な受賞だと言っていいと思う。
 作品自体は少々残念な内容で、全世界500万人が原作を読んで涙したほどの作品とは、申し訳ないが思えない。そしてそれは、多分映画としての出来の良し悪しという以前に、原作となった小説に起因していると思う。舞台が20世紀初頭ならともかく、現代のドイツにおいて果たしてハンナ・シュミッツのような完全に文盲な人物が存在するのだろうか?それが最大の疑問だ。彼女が家族と一緒に生活しているならともかく、全く字が読めない・書けない状況で一人で生きていくなど、絶対にあり得ないと思う。そして、彼女が文盲だという事実がこの作品のいう“秘密”なのだが、かなり早い段階でそのことはうすうすと察しがついてしまい、その後は面白いほど予想通りに展開してしまい、底の浅い作品であることが露呈してしまう。
 とは言っても俳優陣は、ケイト・ウィンスレットはもちろんのこと、成人したマイケルを演じたレイフ・ファインズの静かな中にも多彩な表情を使い分ける、含みのある演技が実に味わい深く、その点では充分観応えがある。それに加えて、実質的な主役と言っても過言ではない若い頃のマイケルを演じたデヴィッド・クロスが、新人とは思えない演技達者ぶりを発揮しているのも見所だ。ハンナの勤務態度があまりに真面目だったために仕事を辞めざるを得なくなり、そこからは坂道を転がるように墜ちていってしまう、そんな運命の皮肉を感じる作品だった。