評     価  

 
       
File No. 1026  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年07月25日  
       
製  作  国   アメリカ / イタリア  
       
監      督   スパイク・リー  
       
上 映 時 間   163分  
       
公開時コピー   女神は<奇跡>を、
人に託した
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   デレク・ルーク [as オブリー・スタンプス二等軍曹]
マイケル・イーリー [as ビショップ・カミングス三等軍曹]
ラズ・アロンソ [as ヘクター・ネグロン伍長]
オマー・ベンソン・ミラー [as サム・トレイン上等兵]
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ [as ペッピ・“ザ・グレート・バタフライ”・グロッタ]
ヴァレンティナ・チェルヴィ [as レナータ]
マッテオ・スキアボルディ [as アンジェロ・トランチェッリ(少年)]
セルジョ・アルベッリ [as ロドルフォ]
オメロ・アントヌッティ [as ルドヴィコ]
ルイジ・ロ・カーショ [as アンジェロ・トランチェッリ]
ジョン・タートゥーロ [as アントニオ・“トニー”・リッチ刑事]
ジョセフ・ゴードン=レヴィット [as ティム・ボイル]
ジョン・レグイザモ [as エンリコ]
 
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あ ら す じ    ニューヨークの郵便局で働く定年間近な男ヘクター・ネグロンが、ある日訪れた男性客に突然発砲して死に至らしめた。ヘクターの経歴は真面目そのもので前科もなく、彼の部屋からは貴重な歴史的価値のあるイタリアの彫像が発見された。一体、何が彼を殺人に走らせたのか、そして、被害者とヘクターの間には何があったのか、その答えは1944年のイタリアに遡る。
 第二次世界大戦下のイタリアで、ナチスと戦いを繰り広げていたスタンプスビショップ、ヘクター、そしてトレインらアメリカの黒人部隊。ある時、トレインが砲火に巻き込まれていた一人の少年アンジェロ・トランチェッリを助ける。心優しいトレインは、足手まといになるという仲間の忠告を振り切って、アンジェロを同行することとなった。そして、周囲を敵に囲まれ孤立してしまった彼らは、少年が病に冒されたために、やむなくトスカーナの小さな村に立ち寄るのだった。
 自国アメリカでは黒人という人種であるが故に受けていた偏見からも解放され、彼らはそこで次第に村人たちとの間に絆を築いていく。しかし、パルチザンのペッピロドルフォがドイツ兵の捕虜を確保して村に訪れて以来、彼らとの間に不穏な空気が漂い始める。不安は的中し、ロドルフォは捕虜のドイツ兵を殺した上に、ペッピまでをも刺し殺して逃走してしまう。そして、追い打ちをかけるようにナチス軍が村に攻め入り、アンジェロを守るためにトレインがナチスの銃弾に倒れたのを皮切りに、ビショップ、スタンプスらが次々とヘクターの目の前で散っていくのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    作品を観て、一つの大きな疑問が残った。第二次世界大戦では、日本・ドイツ・イタリアは日独伊三国同盟を結んだ同胞国のはずなのに、なぜイタリアに対してナチスドイツが虐殺行為を行ったのか?そして調べてみたところ、実はイタリアでは1943年にファシスト党主であり首相でもあったムッソリーニが解任・逮捕され、これに変わるバドリオ政権は連合軍に対して既に全面降伏していたのだ。そして、王党派は連合国の一員としてドイツと交戦を開始したのに対し、ドイツはムッソリーニを救出して北イタリアにファシスト共和国を設立したため、イタリアは完全に南北に2つに分裂し内戦状態に陥ったとのことだった。
 作品から感じたのは、全般的に非常に丁寧に作られているという点。そのせいか尺も163分とかなり長めで、TOHOシネマズシャンテの4F、スクリーン1の座席の狭さでは、さすがに苦痛を覚えた。ラストのオチは予想通りとはいえ、そこにたどり着くまでの描写が延々と2時間以上も続くため、どこから過去の描写に切り替わったのかを忘れてしまっていた。そして、この作品のチラシを初めて見た時、鼻の欠けた彫像の印象が極めて強かったわりには、作品中では彫像の果たす役割は思いのほか大したことがなく、実は少年アンジェロが大きな鍵となっていた。そのアンジェロを助けようとしたのはトレインで、他の3人はどちらかというと消極的だったのにもかかわらず、そのトレインが真っ先に殺されてしまったのには驚いた。そして、そこで奇跡が起きてトレインが助かるのか、とも思ったが、残念ながらそんな都合のいい奇跡とは無縁の作品だった。
 タイトルには『セントアンナの奇跡』とあるが、私はこの作品中には神など存在せず、従って神が起こす奇跡などとも無縁であることを強調しておきたい。すべては奇跡ではなく、人が人を助け、あるいは、人が人の命を奪い、それらの因果が巡り巡って必然的な結果を導き出すという、極めて現実的な世界なのだ。ラストシーンではそれまで溜まりに溜まった鬱憤を晴らすかのようなカタルシスが用意されているが、それを享受したのは皮肉にもアンジェロを懸命に守ろうとしたトレインではなかった。人の運命とは紙一重、所詮そんなものなのかもしれない・・・・・。