評     価  

 
       
File No. 1029  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年07月25日  
       
製  作  国   ド イ ツ / フランス / ハンガリー  
       
監      督   ヘルマ・サンダース=ブラームス  
       
上 映 時 間   109分  
       
公開時コピー   シューマンとブラームス、
二人の天才が魅せられた女神
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   マルティナ・ケデック [as クララ・シューマン]
パスカル・グレゴリー [as ロベルト・シューマン]
マリック・ジディ [as ヨハネス・ブラームス]
クララ・アイヒンガー [as マリー・シューマン]
アリーネ・アネシー [as エリーゼ・シューマン]
マリーネ・アネシー [as オイゲニー・シューマン]
サッシャ・カパロス [as ルートヴィヒ・シューマン]
ペーター・タカツィ [as ヴァジレフスキー]
ヴァルター・タイル [as リヒャルツ医師]
 
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あ ら す じ    コンサートホールでピアノの演奏を終えたクララ・シューマンは、夫ロベルト・シューマンと共にホールが割れんばかりの拍手を浴びていた時、一人の若い男性に呼び止められる。彼は、後の大作曲家ヨハネス・ブラームスだった。彼は自らが作曲した楽譜を夫妻に託していたのだが、2人は直接彼の演奏を聴くために、波止場の薄暗い酒場へと足を運ぶ。そして、ブラームスの演奏するピアノを聴いたクララは、かれにもまた非凡な音楽の才能の持ち主であることを見抜いた。
 その頃、ロベルトの持病である頭痛はますます悪化し、やむなくアヘンに頼るようになる。そんな夫妻の元へ、ある日ヨハネスが訪れる。明るく気さくなヨハネスはたちまち子供たちに気に入られ、ロベルトもヨハネスの並々ならぬ才能を気に入り、シューマン夫妻は彼を同居人として迎え入れることとなった。そして、クララに対する愛情を隠すことのないヨハネスは、一方では楽団に馴染めないロベルトの良き理解者となった。こうしてシューマン家に穏やかな日々が訪れるが、それも長くは続かなかった。ロベルトは頻繁に頭痛に襲われ酒に溺れるようになり、音楽界にヨハネスを「自分の後継者」と紹介した。この、自ら死期を悟ったようなロベルトの言動に耐えきれず、ヨハネスはシューマン家から去ってしまう。
 ロベルトは楽団の音楽監督の地位を奪われてしまい、ライン川へ身を投げて自殺を図る。幸いにも一命をとりとめたロベルトは、ボンで開業するリヒャルツ医師の治療を受ける決心をし、単身家を離れた。こうして、妊娠中のクララはロベルトという支えを失ったままひとりで出産を迎えることとなったが、そこへ偶然にもヨハネスが戻ってくる。そして、ついにクララにロベルトが危篤であるとの知らせがもたらされるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ロベルト・シューマンといえば、知っている曲は「トロイメライ」「子供の情景」といったピアノ小品のみで、彼の作曲した交響曲や協奏曲は恥ずかしながら1曲も知らなかった。まして、その妻がピアノ奏者としてこれほどまでに有名であったことや、シューマン一家とブラームスが一緒に生活していたなどとは当然知る由もないわけで、晩年のシューマンを知るだけでも観る価値はあると思う。
 クララを演じたマルティナ・ケデックは、以前『善き人のためのソナタ』でお目にかかっているのだが、正直その時は印象に残ることもなく記憶はまったくない。しかし、この作品の彼女は、そのピアノの見事という他はない演奏(吹き替えにはどうしても見えず、だとしたらその腕前は完全にプロ級だといえる)と共に、極めて強いインパクトを与えてくれた。彼女が破滅型の天才ロベルト・シューマンと、正反対に大らかで生命力にあふれるヨハネス・ブラームスという2人の天才を惹きつけたのもわかる気がする。
 作品のメガホンをとったのは、その名前からも察しがつく通り、奇しくもブラームスの末裔である女流監督ヘルマ・サンダース=ブラームス。惜しまれるのは、クララにとってのブラームスの存在の重さが、今ひとつ軽く感じられることか。2人の天才の板挟みにあうクララの苦悩や葛藤といった感情が、観る者に伝わってこないように思える。そのせいか、どちらかというとクララという女性を描いた作品ではなく、単なるロベルト・シューマンの伝記物を見せられたような余韻が残っている。
 ところで余談だが、クララとロベルトが2人で指揮をする場面を観て、『敬愛なるベートーヴェン』のエド・ハリスとダイアン・クルーガーを連想してしまったのは私だけだろうか?