評     価  

 
       
File No. 1034  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2009年08月08日  
       
製  作  国   アメリカ / イタリア / フランス  
       
監      督   クリスチャン・デュゲイ  
       
上 映 時 間   138分  
       
公開時コピー   私は流行をつくっているのではない。
スタイルをつくっているの
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   シャーリー・マクレーン [as ガブリエル・“ココ”・シャネル]
バルボラ・ボブローヴァ [as 若き日のココ・シャネル]
マルコム・マクダウェル [as マルク・ボウシエ]
サガモア・ステヴナン
オリヴィエ・シトリュク
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    幼い頃に母を亡くして妹と共に孤児院で育ったガブリエル・シャネルは、18歳の時施設を出て針子として働き始めた。そして、店の客である軍人のエチエンヌ・バルサンと知り合い、彼の強い求愛を受けたガブリエルは、店を辞めてエチエンヌのロワイヤリュにある邸宅で贅沢気ままな生活を始めた。彼女はエチエンヌから本名のガブリエルではなく“ココ”の愛称で呼ばれるようになったのも、その頃からだった。
 ロワイヤリュでの生活には不満はなかったものの、彼女に対して決して求婚しようとせず、家族にも紹介すらしてくれないないエチエンヌにココは疑問を抱くようになる。そんな折、イギリスから訪れたエチエンヌの親友ボーイ・カペルに出会い、彼に惹かれるようになる。そして、ついにエチエンヌとの関係に終止符を打ったココは、ボーイからの資金援助を受けパリに帽子店“シャネル・モード”をオープンした。彼女の帽子は、オペラの舞台でも使用されて話題に上り、店は成功を収めた。しかし、ボーイから求婚されたココは、自立できるまで結婚はしないと、彼の申し出を断ってしまう。そして、このことが2人の後の運命を大きく変えてしまうのだった。
 やがて第一次世界大戦が始まり、ボーイは母国イギリスへと帰ってしまう。やがて対戦が終わると、ボーイはイギリス貴族の未亡人ダイアナと結婚してしまう。そしてその2年後には、彼女に会うために車を走らせるボーイが、事故を起こしてこの世を去ってしまう。
 そんな数々の思い出が走馬燈のようにココの頭の中に甦ってくる。ココが71歳となる1954年、15年の沈黙を破って復帰コレクションを開催したが、結果は「過去から脱却できないシャネル」と酷評を受けてしまった。しかし、愛する者は彼女の元を去り、残されたのは仕事だけ、そんな思いがココを再起へと強く駆り立てるのだった・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    シャネルといえば、私は子供の頃は香水のメーカだと思っていたが、それは言うまでもない、あのマリリン・モンローの「寝るときはシャネルの5番だけ」という台詞の影響だ。そして、作品中にもシャネルの5番が登場するのは、ハリウッド版ならではのマリリンに対する一種のオマージュだろう。最近ではやっと数々の装飾品を扱うファッション・ブランドだという認識にまで拡がったものの、実は服飾メーカーであったことはこの作品を観るまでは知らなかったというのが正直なところだ。
 シャネルの母国であるフランスでもオドレイ・トトゥ主演でシャネルを描いた作品『ココ・アヴァン・シャネル』が制作さており、来月には公開されるのは偶然か。いい比較対象にあるだろうと思われ、個人的にはオドレイ主演版に軍配が上がりそうな気がする。その最大の理由は、シャーリー・マクレーンという大御所の起用にある。138分という尺の大半は若い頃のシャネルの描写で、主演のS・マクレーンが登場するシーンを圧倒的に上回っている。そして、演技というほどの演技も見られず、残念ながら彼女から感じられるのはかつての栄光を傘に着た尊大さ・不遜さと現在の自分を省みることのない老醜のみだった。
 また、前作『あの日の指輪を待つきみへ』でも気になっていたのだが、S・マクレーンの喫煙シーンが多すぎる。ココ・シャネル本人があれほどのチェーン・スモーカーだったのかは知らないが、S・マクレーンの喫煙のおかげで若い頃のシャネルを演じたバルボラ・ボブローヴァまでがやむなく喫煙させられている、そんなふうに邪推したくなってしまう。縫製所の中でのくわえタバコは、火事の原因になることはもちろんのこと、下手をすると生地にタバコの臭いが染みついてしまうおそれもあり、素人考えでは御法度だと思うのだが。そんな喫煙シーンはさておいて、バルボラ・ボブローヴァが演じた若き日のシャネルは非常に良かった。ショートヘアに生き生きとした力強さを感じる目が印象的で、ネームバリューや役者としての格を度外視すれば、この作品の主演は明らかに彼女だ。「オスカー女優」などを謳い文句などにせず、思い切ってバルボラにすべて演じさせた方がよかったのではないだろうか、と私は思う。最近のメイク技術を持ってすれば、おいた人間を若返らせるのは難しいにしても、若い人間に老いたメイクをすることなどは朝飯前だろうから。