評     価  

 
       
File No. 1043  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年08月22日  
       
製  作  国   日  本 / 韓  国  
       
監      督   キム・ヨンナム  
       
上 映 時 間   114分  
       
公開時コピー   二つの孤独な魂は駆け抜けてゆく。
その 疾走の果てにある
かすかな光に向かって
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   妻夫木 聡 [as 亨]
ハ・ジョンウ [as ヒョング]
チャ・スヨン [as チス]
イ・デヨン [as ボギョン]
徳永 えり [as 奈美]
貫地谷 しほり [as 敦子]
江本 佑 [as 隆司]
あがた 森魚 [as 雑貨店主]
 
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あ ら す じ    日本で成功したボギョンに、韓国からの密輸品とキムチを届けるのがヒョングの仕事だった。そして、日本に着いたヒョングを出迎えるのは、ボギョンの息子隆司の妻奈美の兄であり、ボギョンの事務所で働くの仕事だった。ある日、珍しく亨の出迎えが遅れ、亨をボートで待つヒョングは珍しく船酔いし、そんな彼を海中から現れた長髪の女性が海へ引きずり込もうとし、ヒョングは首から提げたキムチもろとも海に落ちてしまう。ボギョンが楽しみにするキムチを台無しにしてしょげ返るヒョングをよそに、亨はキムチの壺を洗って白い粉の入った袋を入れ、その上から市販のキムチを詰めた。この時初めて、ヒョングは自分が麻薬を運ばされていたことを知るのだった。
 そんなヒョングに託された次の荷物、それは明らかに袋詰めにされた人間だった。ヒョングはいつものように出迎えた亨と共に、荷物を雑居ビルの空室へと運び込んだが、亨が去った直後に不審な男たちの襲撃を受けてしまう。ヒョングは火事を装って荷物を担いで男たちから逃れたものの、亨に連絡を入れている隙に荷物の中身が逃げ出してしまう。連絡を受けてやってきた亨と共に見つけた荷物の中身、それは韓国のとある保険会社の重役の娘チスだった。そして、チスはヒョングと亨に父親を見つけてくれたら2人に5,000万円ずつ払うと言い出す。ボギョンに利用されて横領を強いられていたチスの父は、日本へ2億という金を運んできた際に姿を消しており、父親をおびき出すためにチスはボギョンに誘拐されたのだった。
 亨はチスの申し出を受ける決心を死、迷うヒョングを抜き差しならない状況に追い込むため、事務所にはヒョングがチスを連れて姿を消したと嘘の報告をしたうえで、相手が奈美だとは知らずにヒョングが日本で女と寝た時のツーショット写真をボギョンに送りつけていたのだ。混乱するヒョングは、亨になぜそこまで金にこだわるのかを尋ねると、亨はその理由を見せるためにヒョングとチスを自宅へと連れ帰った。そこに暮らしていたのは認知症の祖母と奈美、そして奈美の3人の息子たちで、まだ赤ん坊の3男が隆司との間に生まれた子だという。そして亨は、その家族という重荷のために恋人の敦子とも別れたこと、金さえあれば普通の暮らしが手に入るとことをヒョングに打ち明けるのだった。こうして、亨とヒョングはチスの父親を探すために手を組むのだったが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    日本と韓国の合作で、日本の妻夫木聡に対するのは『チェイサー』で異常な連続殺人犯を演じたハ・ジョンウ。私は『チェイサー』の出演者と知ってまず思い浮かんだのはデリヘルの経営者ジュンホで、まさかあのこの上ない嫌悪感を催す殺人鬼のヨンミンを演じた俳優だなどとは夢にも思っていなかった。そして、『チェイサー』で良くも悪くもあれほどの存在感を見せつけた彼の持ち味が、この作品では発揮されておらず、今ひとつ平凡な役柄に落ち着いてしまっているのが残念だ。また、韓流俳優の体格の良さは定評があるが、この作品でも妻夫木と体格差は歴然としており、その演技力はともかくとして見栄えという点だけでは、あたかも大人と子供であるかのような錯覚すら覚えるほど日本人が見劣りするのが悲しい。これが江口洋介や佐藤浩市あたりだったらば、見た目では遜色ないのだろうが。
 家族(母親)に見捨てられたヒョングと、家族を重荷に感じながらも見捨てることができない亨の2人が、共通の目的のために手を組み、互いを知るにつれて絆を築き上げていく・・・・・これがこの作品の骨子だろうが、2人を見比べるにつけ亨の狡猾さというか姑息さが目についてしまう。「家族のため」と言っているがそれは単なる建前で、彼にとっては一種の義務感からそうしているだけであって、実は金さえあれば家族から解放されるというのが彼の本音であり、それはつまり自分のことしか考えていないエゴでしかない。それは、恋人の敦子と別れた原因が自分にあるにもかかわらず、家族という重荷から解放されればやり直せるなどと考える彼の安易さにも表れている。あれじゃ、オモチャが欲しいと言って泣いてダダをこねる子供と大差ないよ。そのため、どうしても亨に感情移入ができず、ヒョングの人の好さ(お人好し?)だけが目立って仕方なかった。
 そうなってくるとタイトルの『ノーボーイ、ノークライ』も的外れに思える。「泣かない男はいない」ということだが、この作品で泣くのは亨だけで、ヒョングが泣いたシーンは記憶にない。しかも、亨の涙に抱えているものの重さが全く感じられないのが致命的だ。特に感動するようなシーンもなく、今ひとつ盛り上がりに欠ける出来だったように思う。