評     価  

 
       
File No. 1064  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年09月19日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ウェイン・クラマー  
       
上 映 時 間   113分  
       
公開時コピー   アメリカを守る正義か。
人々を救う正義か。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ハリソン・フォード [as マックス・ブローガン]
レイ・リオッタ [as コール・フランケル]
アシュレイ・ジャッド [as デニス・フランケル]
ジム・スタージェス [as ギャヴィン・コセフ]
クリフ・カーティス [as ハミード・バラエリ]
サマー・ビシル [as タズリマ・ジャハンギル]
アリシー・ブラガ [as ミレヤ・サンチェス]
アリス・イヴ [as クレア・シェパード]
メロディ・カザエ [as ザーラ・バラエリ]
ジャスティン・チョン [as ヨン・キム]
メリク・タドロス [as ファリード・バラエリ]
 
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あ ら す じ    ロサンゼルス。I.C.E.(移民税関調査局)の捜査官マックス・ブローガンは、ある日不法就労者の一斉検挙を行った際、メキシコからの不法入国者ミレヤ・サンチェスからひとり息子がいることを告げられ、居所を書いたメモを託される。一旦はメモを投げ捨てたマックスだが、同僚から「人道的すぎる」「処分が甘い」などと揶揄されるその優しさから、彼女の息子ホアンを探し出して、メキシコのミレヤの両親宅まで送り届けた。ところが、強制送還されたミレヤは、ひとりで国境へ向かったまま消息を絶ってしまっていた。
 マックスのパートナー、ハミード・バラエリは、不倫相手と一緒にいた妹のザーラ・バラエリを、相手の男共々何者かに射殺されてしまう。男の上着に残されていた偽のグリーンカードから、マックスは不法移民相手の違法ビジネスの可能性を感じ、失意のハミードには告げずに独自の捜査を開始した。
 ユダヤ人学校の教職に就いたばかりの青年ギャヴィン・コセフは、ユダヤ教徒でないのにもかかわらず、宗教関係者としてグリーンカードを申請していた。彼の恋人クレア・シェパードはオーストラリア出身の女優の卵だったが、やっとチャンスが巡ってきた矢先にビザの延長手続きが取れず、困惑していた挙げ句に車で衝突事故を起こしてしまう。相手の車を運転していたコール・フランケルの職業は運命の悪戯か移民判定官で、彼はある交換条件を持ち出してクレアにグリーンカードを付与すると言う。
 バングラデシュ出身の高校生タズリマ・ジャハンギルは、ある日の授業で9.11に関する意見を述べたことが原因で危険分子だと見なされてしまい、彼女の家はI.C.E.とFBIの家宅捜査を受けるはめに陥る。コールの妻で人権派の弁護士デニス・フランケルはタズリマの弁護に取り組むが、彼女の奔走も虚しく一家は揃って強制送還か、あるいは片親とタズリマのみ国外追放という二者択一を迫られる結果となってしまう。
 弟と両親の家族4人で暮らす韓国人のヨン・キムは、不良グループの誘いを断り切れず、リカーショップ強盗の仲間に加わることとなった。一団が襲撃したリカーショップに偶然居合わせたハミードは、店員を殺した強盗を射殺したのを皮切りに次々と一味を倒していき、最後には人質をとったヨンが残された・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ハリソン・フォードも老けたもんだなぁ・・・・・これがこの作品を観ての最初の正直な感想だ。彼も御年67歳、もはや“おじいちゃん”と呼んでも失礼にあたらない年齢になったとは・・・・・時の流れは早いもので、それと同時に自分も同じように歳を重ねていることに寒気を覚えてしまう。そして、何度も言うようだが邦題の付け方をもう少し考えて欲しいものだ。「正義」なんて所詮何の普遍性も持たない概念でしかなく、特定の国や宗教、さらには個々人の置かれた周囲の状況に応じていくらでも都合良く作られるもの、それが「正義」だと私は思っている。だから、作品中で少女タズリマが語っているように、9.11の自爆テロは人道的に見れば多くの罪もない人々の命を奪った残虐な大量殺戮であったとしても、イスラム原理教たちにとっては彼らの信条に則った確信犯であり、まぎれもない「正義」なのだ。そして、そんな「正義」という言葉が何の考えもなしに使われているこの邦題は、安直だと言わざるを得ない。
 今までメジャースタジオの娯楽作品でヒーロー的な役柄を演じることが多かったハリソン・フォードだが、これが初のインデペンデント系作品への出演となった。そして、この作品で扱われている題材は、今全米に1,000万人以上もいるという不法滞在者の問題だ。これがもし日本だとしたら、不法滞在者は総人口の1割というとてつもない数字になるわけだ。それだけ、アメリカが門戸を広げて誰をも受け入れてくれる、自由とチャンスの国だというイメージが全世界的に定着していることだろう。そして、それは事実ではあるものの、アメリカも来る者拒まずで受け入れていては国家が破綻するのは自明の理であり、正規な法的手続きを経た者にのみ滞在を許可するというのは至極当然であって、これはもう正義がどうこうといった以前の話だ。しかし、そこには必ず法の網をかいくぐる、弱者の弱みにつけ込むような裏ビジネスが生まれてしまう。諸悪の元凶は不法滞在者たちではないとわかりながらも、法に則って彼らを取り締まらなければならない、そんなI.C.E.のジレンマがマックスを通じて描かれている。不法滞在者にいくつかのケースを並行して描きながら、それが雑然とならずに複雑に絡み合いながらも一つの作品としての調和が保たれており、非常に巧く作られた秀作だと思う。