評     価  

 
       
File No. 1068  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年09月19日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   畑村 貴之  
       
上 映 時 間   90分  
       
公開時コピー  
戻る時間から、戻れない
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   野上 敦美 [as 広田香奈]
中島 匡広 [as 片山直樹]
茂呂 真紀子 [as 千夏]
福井 智美 [as 遥]
大塚 大作 [as 山崎]
玉一 敦也 [as 匠]
田中 謙次 [as タクシー運転手]
大石 息吹 [as 亮太]
伊藤 雅彦 [as 亮太の父]
飯田 孝雄 [as お爺さん]
櫛部 哲史 [as 酔っぱらい]
 
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あ ら す じ    大学生の広田香奈は、友人の千夏との飲み会から帰宅し、翌日が締め切りのレポート作成に徹夜覚悟で取り組んでいた。すると、深夜の1時52分に大きな地震があり、それと共に強烈な閃光に包まれる。窓を開けてみると、何かの残り火らしい小さな光が見え、香奈は誰かが花火でもしたのだと思い、気を取り直してレポートに向かった。途中で、遥から彼氏のメールについて相談の電話があって中断しながらも、香奈は着々とレポートを書き上げていく。けれども、4時を回った頃に睡魔に襲われた香奈は、ついつい居眠りをしてしまう。
 すぐに気がついた香奈は再びレポートに取り組もうとしたが、テレビを観て我が目を疑った。1時52分に起きた地震の速報が報じられていたのだ。混乱する香奈の携帯が鳴り、出てみると遥からの電話で、先ほどの電話と寸分違わない相談の電話だった。なぜか同じ時間が繰り返されている、香奈直感でそう悟った。けれども、4時少し前に香奈は再び居眠りをしてしまう。
 目を覚ました香奈は、3たび1時52分の地震速報を目にする。そして、千夏に電話して彼女の部屋へ相談に赴いた。香奈の話が信じられない千夏は、その手の話題に詳しそうな物理学専攻の学生山崎を呼び出す。けれども、山崎からも解決策を引き出すことができなかったばかりか、「オカルトの掲示板で探した方がいい」と冷たく言い放たれてしまう。
 4度目の1時52分。香奈は山崎に言われたことを思い出し、ネットのオカルト掲示板に自分と同じように時間が繰り返される者がいないかどうか書き込みをしてみた。すると、すぐに香奈と同じように時間が繰り返されるという相手からのレスがあり、香奈は相手が要求するまま自分のアドレスを書き込んだ。ところが、次々に受信されたのは香奈を誹謗中傷するメールばかりだった。相手は冷やかしの愉快犯だったのだ。失望した香奈はメーラーを閉じようとした時、何通も届いた中傷メールに混じって、タイトルに“1時52分に”と書かれたメールがあるのに気づく。自分が書き込んでいない“1時52分”という時間を知っている相手は、冷やかしではなく自分と同じ状況に陥った人間に違いないと、香奈はそのメールに返信してみるのだった。
 香奈の思った通り、相手の男片山直樹も何度も1時52分から始まる時間のループの中にいた。そして、香奈と直樹はチャットで話した結果、この状況を元に戻すための一か八かの方法を実行することにした。その方法が正しいという確証は何もないが、時間がループする間隔は10分ずつ短くなっているために、試してみる時間の余裕はなかった。果たして、その方法は成功するのだろうか、そして、香奈と直樹は元の時間に戻ることができるのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    予告編で観て興味を持ったうえに、2日間限定のレイトショー上映で2日とも舞台挨拶があるとのことで、できれば避けたい都内でのレイトショーだったが、渋谷まで行って観ることとなった。舞台挨拶では、畑村監督と主役の香奈に分する野上敦美、それに彼女の友人・千夏役の茂呂真紀子、同じく友人の遥を演じた福井智美の4名の登壇で、出演者は丁寧に二度も役柄と名前を自己紹介してくれたにもかかわらず、私はいつものように右から左へ聞き流していて、そのことを帰宅してから後悔させられた。HPにアップしようとしたところ、公式サイトにも役名が掲載されていなかったために、あらすじが書けなくなってしまったのだ。彼女たちのオフィシャルページやブログを探してみても役名はどこにも書かれておらず、困り果てて作品の公式サイトの“コンタクト”にあったメールアドレスにダメもとで質問のメールを出してみた。「お気軽にお問い合わせください。」と書いてあったものの、おそらくは黙殺されるのだろうと思いながら。
 すると、メール送信から24時間もたたないうちに返信のメールがあり、開いてみると畑村監督から直々の返信で、私は返信をいただけただけでも充分で、中身は断りのメッセージでもやむを得ないと思っていた。ところが、中身は丁寧な返事に加えて、私が問い合わせた主なキャラクターのみならず、キャスト全員の名前と役名が書かれていたのには本当に驚いたし、大袈裟ではなく感激してしまった。そんなワケで、上のキャスト欄に書いた情報は、おそらくWeb上のどこを探しても手に入らないだろうと思われる内容となったわけだ。文面や対応の早さからして、おそらくは畑村監督は非常に真面目で観客を大事にする人柄なのだろうと思う。これで『LOOP_0152』という作品と、畑村貴之監督という名前は絶対に忘れることはないはず。次回作も必ず劇場で観ることになるだろう。
 さて、肝心の作品の中身だが、星8個を付けたことからもわかるように予想を上回る面白さで充分満足。香奈を演じた主演の野上敦美も、2年前の演技だから今の自分の演技を知る人は大目に見て欲しいと舞台挨拶で言っていたが、決して稚拙さを感じるような演技ではなかった。元の時間に戻るためのたった一度のチャンスを、あんな形で一任してしまうのは通常はあり得ないのだが、そういった“あり得ない”状況をあり得るものにしているのがループが10分ずつ短くなるという設定で、これがこの作品最大のキーポイントだろう。時間を忘れて観る者に香奈と同じ時間にいるかのように思わせる緊迫感も、すべてはそこから発している。これだけの作品が2日限定の上映とはもったいない気がしてならない。