評     価  

 
       
File No. 1074  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年10月09日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ニック・カサヴェテス  
       
上 映 時 間   110分  
       
公開時コピー   もう姉のドナーにはならない。
    
両親に訴訟を起こしたアナ、11歳。
しかし、その決断には
ある理由があった
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   キャメロン・ディアス [as サラ・フィッツジェラルド]
アビゲイル・ブレスリン [as アナ・フィッツジェラルド]
アレック・ボールドウィン [as キャンベル・アレグザンダー]
ジェイソン・パトリック [as ブライアン・フィッツジェラルド]
ソフィア・ヴァジリーヴァ [as ケイト・フィッツジェラルド]
ジョーン・キューザック [as デ・サルヴォ判事]
トーマス・デッカー [as テイラー・アンブローズ]
ヘザー・ウォールクィスト [as ケリーおばさん]
エヴァン・エリングソン [as ジェシー・フィッツジェラルド]
デヴィッド・ソーントン [as ドクター・チャンス]
 
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あ ら す じ    人は偶然生まれてくる。けれども、フィッツジェラルド家の次女アナは“創られて”生まれてきた。長女のケイトが白血病に冒されてしまい、長男の両親のブライアンサラ、それに長男のジェシーもケイトへのドナーとして適合せず、残された手段はドナーとして100%適合する子供を遺伝子操作でもうけることだった。娘を助けるためには手段を選ばないサラが、ケイトを助けるためだけに生んだ子供、それがアナだったのだ。そして、幼い頃からアナは何度もケイトのために体を提供し、その甲斐もあってその後ケイトは10年以上も生を繋いできた。
 アナが11歳の時。ケイトの病状は腎不全を併発して悪化し、アナは腎臓をひとつケイトに提供することを要求されていた。そのアナが、ひとり自分の意志で抜群の成功率を誇る弁護士キャンベル・アレグザンダーの事務所を訪れる。そしてアナはアレグザンダーに、自分が姉に体を提供するために生まれたことを告げ、そのことで両親を相手に訴訟を起こしたいと申し出たのだ。幼い頃から何度も姉のために手術を受けてきたアナの苦痛を察したアレグザンダーはアナの依頼を引き受け、両親の元にはアナの訴状が届けられた。このアナの突然の行動に対し、父ブライアンは娘の気持ちを察して理解しようとするが、母サラは激怒して頭ごなしにアナを叱るだけだった。
 サラはケイトの発病以来弁護士としてのキャリアも捨て、すべてを犠牲にしてまでケイトのためにあらゆる手を尽くしてきた。そして、家族の誰もが同じ思いでいるとばかり信じていたサラにはアナの行動は裏切りに等しいものであり、自ら弁護士としてアナと法廷で戦うことを決意した。しかし、一見身勝手に思えるアナの行動の裏には、姉のケイトには生きていて欲しいと痛切に願うアナの苦渋の決断があったのだが、ケイトを助けることしか眼中になく周囲が見えなくなっていたサラは、アナの辛い思いに気づいてやる心の余裕を失っていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    初めて母親役を演じたキャメロン・ディアス、親を相手に訴訟を起こす娘に『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンと、とかくこの2人に脚光が浴びせられがちだが、この作品の最大の功労者は白血病に蝕まれながらも健気に生きるケイトを演じたソフィア・ヴァジリーヴァだと私は思う。確かに幼い頃から姉のために手術を繰り返してきたアナの苦痛は察するにあまる。けれども、白血病に冒されたケイトの身にとっては、それはアナを上回る苦しみの連続だったことだろう。しかも、そのことで全快するならまだしも、単なる延命のための治療であって回復の可能性はなく、確実に死が待っているのだ。それでも家族の前で笑顔を絶やさないケイトが痛々しく、観る者にそう感じさせた彼女の演技は賞賛に値するだろう。
 白血病に冒されたケイトと、彼女を必死で支えるその家族。一見全員がひとつの目的に向かって一致団結しているようだが、実はそれぞれが様々な思惑を抱えているのがリアルに描かれているのがいい。病魔と闘いながらも自分のことよりも家族を気遣うケイト。姉のことが本当に好きで、絶対に生きていて欲しいと願いながらも、意に反した行動を取らざるを得ないアナ。そんな2人の娘が、自分の気持ちよりも周囲に気を配る姿が痛ましいだけに、娘のためを思いながら、いつの間にか自分の思いを通すことだけしか考えられなくなった母親サラのエゴが際立って見える。サラにとっては娘はケイトだけで、アナはどうなっても痛みを感じないかのようなその態度には反感すら覚えた。それだけ出演者が皆自分の演じるべき役割を完璧にこなしたということなのだろう。周囲では涙していた女性が少なくなかった。