評     価  

 
       
File No. 1075  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年10月10日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   吉田 大八  
       
上 映 時 間   112分  
       
公開時コピー   嘘のない
恋愛なんて、
退屈でしょう?
  
実在した結婚サギ師。滑稽だけど、なぜか切ない。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   堺 雅人 [as ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐]
松雪 泰子 [as 永野しのぶ]
満島 ひかり [as 浅岡春]
中村 優子 [as 須藤未知子]
新井 浩文 [as 永野達也]
児嶋 一哉 [as 高橋幸一]
安藤 サクラ [as 木下理香]
内野 聖陽 [as 藤原]
 
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あ ら す じ    弁当屋社長の永野しのぶは今、ひとりの男に夢中になっていた。その男とは、アメリカ海軍第五空母航空団パイロットのジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。父親はカメハメハ大王の末裔で母親はエリザベス女王の妹の夫のいとこだという彼は、実は次から次へと女性を騙す稀代の結婚詐欺師だった。しかし、クヒオがちらつかせる「結婚」という二文字に冷静な判断力を失っていたしのぶは、クヒオに言われるがままに金を貢ぐのだった。
 ある日クヒオは宿泊先の近くにある博物館の学芸員浅岡春に狙いを定め、声をかけた。そして、連日博物館を訪れては春に自分の素性や経歴をアピールし、その甲斐あってか恋人の高橋幸一と別れたばかりの春は、次第にクヒオに興味を持ち始める。しかし、しのぶと春だけでは満足できないクヒオは、さらに銀座のホステス須藤未知子に触手を伸ばし、イギリス王室の人間にしか加入が許されないファンドに投資しないかなどと言葉巧みに誘いをかけて金を引き出そうとするのだった。
 ところが、そんなクヒオの嘘が次第に綻び始める。しのぶにかけた電話に出た、彼女の弟永野達也にいとも簡単に素性がバレてしまい、しのぶからもらった金を自分に返すよう脅迫される。また、未知子はクヒオに騙されたふりをしながら、逆にクヒオと2人で住むためのマンション購入したいからその資金を出して欲しいとせがまれてしまう。さらには、クヒオが語った友人の話が映画からのパクリであることが春にバレてしまい、春からも詰め寄られてタジタジとなるクヒオ大佐。こんな四面楚歌の状態の先に、一体どんな運命が彼を待っているのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    どうやら私は吉田大八監督作品と相性が悪いらしい(^-^;。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』もそうだったが、悲劇なんだか喜劇なんだか判別しかねる内容で、もちろん個々のシーンでは笑いもあるものの腹の底から笑うことは出来ず、終わってみれば結婚サギ師となった男の悲哀だけが強く印象に残っていた。それが吉田監督の持ち味なのかもしれないが、私個人としては喜劇なら喜劇、悲劇なら悲劇でもっと単純明快な作品にして欲しかった。そうすれば、もっと堺雅人の持ち味も生かせたのではないだろうかと思う。また、ご大層に第1部と第2部に分けた構成になっているが、第1部に導入部としての意味があったとは到底思えず、ハッキリ言ってカットしてしまった方がよっぽとスッキリすると思う。ちなみに、最初私はてっきり別の作品の予告編だと思ってしまった。
 その主役・クヒオ大佐を演じた堺雅人の怪演は悪くない。付け鼻を装着しての熱演で、鼻が高くなっただけでもどことなく日本人離れして見えるものだ。そして、観ている私の視線は、どうしても彼の鼻に行ってしまう(笑)。そして、彼が完璧なサギ師ではなく、どこかちょっと間が抜けていて憎めないキャラクターなのが堺のイメージに合っていると思う。特に、しのぶの弟・達也とのやりとりには笑わせてもらった。“Kill you!”と脅されて“Don't kill you!”と応えるアメリカ人はいないだろう(笑)。また、彼のターゲットとなった3人の女性がそれぞれ個性的なのも見所だ。松雪泰子がクヒオ大佐に騙されて尽くす女性というのは、ちょっとイメージが違うような気もするが、いつもの強い女性とは違った彼女の一面を観るのも新鮮だった。ただ、完全に騙しきったのは彼女だけで、他の2人、春と未知子には簡単に正体を見破られてしまうのが情けなくて、却って好感が持てたりする。特に銀座のホステスの未知子の場合は、騙されている振りをしながらクヒオから金を搾り取ろうとは、さすが銀座のホステス、それも海千山千のナンバークラスともなると、クヒオよりも役者がはるかに上だったようだ。もっとも、名刺のスペルを3カ所も間違うようでは、誰だって怪しむとは思うが。また、『愛のむきだし』で熱演を見せてくれた満島ひかりと安藤サクラが同僚役として共演しているのも面白い。