評     価  

 
       
File No. 1077  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年10月10日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   佐藤 東弥  
       
上 映 時 間   130分  
       
公開時コピー   考えろ、裏をかけ。
そして未来を手に入れろ。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   藤原 竜也 [as 伊藤開司]
天海 祐希 [as 遠藤凛子]
香川 照之 [as 利根川幸雄]
山本 太郎 [as 船井譲二]
光石 研 [as 石田光司]
松山 ケンイチ [as 佐原誠]
松尾 スズキ [as 大槻太郎]
佐藤 慶 [as 兵藤和尊]
 
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あ ら す じ    伊藤カイジは26歳になりながら未だに定職にも就かず、金持ちをやっかみながら高級車を見つけては蹴りを入れて憂さを晴らし、熱の入らないコンビニのバイトでなんとか食いつなぐその日暮らしの生活を送っていた。彼は誰が見ても完全に人生の「負け組」に定着していたが、本人はそのことを決して認めようとはしなかった。
 そんなある日、彼はいつものように自宅近くに停められていたベンツに、持ち主が乗車していることに気づかずに蹴りを入れてへこましてしまう。車から降りてきた女性遠藤凛子は、あろうことか借金の取り立てにやってきた悪徳金融の社長だった。カイジは以前友人に借金の保証人を頼まれたのたが、その友人が返済をせずに姿をくらましてしまったために、カイジが支払う羽目に陥ってしまったのだ。借金の総額は元金の数倍に膨れあがった202万円、とうていカイジにそんな大金を返済する能力はなかった。そんなカイジに遠藤は、一夜にして借金は帳消し、それどころか上手くすれば大金持ちになれるという眉唾物の話を持ちかけるのだった。
 その夜、カイジは晴海埠頭から豪華客船エスポワール号に乗船した。中に集まっていたのは、皆カイジと同じように借金を背負った負け犬たちばかりだった。そこへ大手金融帝愛グループの幹部・利根川と称する男が現れ、「勝つことがすべて、勝たなきゃゴミだ。ここでまた負けるような奴のことは、俺は知らん!」と言い捨ててゲームは始まった。グー、チョキ、パーが各4枚ずつ計12枚のカードと星3個が配られ、相手を選んでジャンケンをし、勝ったら相手の星を奪い負けたら奪われる。30分以内にカードをすべて使い切って、星を3個以上持っていれば無事生還できるが、そうでなければ別室送りとなり、その先に何が待ち受けているのかはわからなかった。
 ゲームが始まり、カイジは船井と名乗る男から話しかけられる。2人で結託して12枚すべてをあいこにすれば、2人揃って生還できると船井は言う。カイジはこの話に乗ってジャンケンを始めたが、途中から船井はカイジに勝つカードを出すようになった。船井の真の目的はカイジを騙して星を奪うことにあったのだ。気づいた時にはカイジの星は残りひとつ。カイジはこの先にさらに過酷な運命が待ち受けていることなど、知る由もなかった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この日3本目の映画ということでかなり疲れていたため、途中で寝てしまうのではないかと危惧していたのだが、そんな心配は吹き飛んでしまうほどの出来だった。先日の『プール』ではメガホンを執り心地よい眠りに誘ってくれた大森美香だったが、やはり彼女の脚本は秀逸であることをまざまざと見せつけられた思いだ。そしてなんといってもキャスティングがいい。主役の藤原竜也も頑張っていたし、彼の脇を固める俳優陣が適材適所に配されていた。利根川を演じた香川照之はさすがに演技達者で、特にEカードでの勝負の時に見せた緊迫感は最大の見せ場だった。また、天海祐希は『アマルフィ』で見せた娘を誘拐された母親などよりは、断然この作品のような役柄の方が似合っているし、彼女自身も遥かに生き生きと演じているように見える。そして、負け犬ながらも狡猾に生き残りを狙う船井を演じた山本太郎、いかにも小心者で負け犬根性が抜けない石田を演じた光石研、それに何を演じさせてもソツなくこなすマツケンが特別出演で参加しているのも見物だ。
 この手の作品にこんな疑問を持ち出すのは反則かもしれないが、そもそもカイジがEカードの勝負で最後まで諦めずに利根川に挑み、最後は頭脳対頭脳の勝負で利根川に勝てるほどの資質を持っていたならば、ハナから負け犬組に属することはなかったんじゃないだろうか?それに、得体の知れない闇金から金を借りるような友人の保証人になどなるとはとても思えない。それとも、本当に彼は「勝ち組」に属するべき人間で、ただ「そのうちに・・・・・」「いつかきっと・・・・・」訪れるであろうと信じていたチャンスがまだ到来していなかっただけなのか?「勝ち組」「負け組」のいずれに属するかの違いは、所詮人生の随所に訪れる分岐路で正しい選択をできるか否かという、ほんの些細な差の積み重ねだと思う。そもそも「いつかきっと・・・・・」訪れると信じていたような大きなチャンスなどは幻想に過ぎないと私は思うが・・・・・それじゃこのストーリーは成り立たないか(笑)。