評     価  

 
       
File No. 1098  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年11月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   寒竹 ゆり  
       
上 映 時 間   119分  
       
公開時コピー   本気で恋したら、運命にぶつかった。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   佐々木 希 [as 小澤理央]
谷原 章介 [as 小澤光輝]
山本 ひかる [as 鮎川友子]
大石 参月 [as 田沼真樹]
七菜香 [as 松方未歩]
加賀美 早紀 [as 芝田奈緒子]
深水 元基 [as 田鍋佑二]
酒井 若菜 [as 潮田香里]
吹越 満 [as 下山昌男]
津田 寛治 [as 田代一喜]
笑福亭 鶴光 [as 大家]
若村 麻由美 [as 小澤絢子]
 
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あ ら す じ    14歳の少女小澤理央は、母に付き添われて病院に訪れていた。嫌がる理央は母に半ば無理矢理手を引かれて、病院の廊下でひとりの男性とすれ違った。彼の名は小澤光輝、脳外科の診察を受けに来ていた。医師は光輝に脳腫瘍を宣告し、しかもその腫瘍は手術でも完全に摘出することはできないとのことで、彼にとってそれは死の宣告でもあった。
 3年後。17歳になった理央は、そのひときわ目立つ美しさで注目を浴び、常に仲間の中心の存在だった。けれども、3年前のある事件をきっかけに他人に対して心を閉ざし、自分にとって利用価値のある人間とお金にしか興味を持てずにいた。そんな理央が、同じクラスの芝田奈緒子のいじめに遭っていた鮎川友子を助ける。しかし、それもある打算があっての行為で、決して友子のためを思っての行為ではなかった。
 ある日、理央はいつもの仲間田沼真樹松方未歩、友子らと共に撮った写真を広げていた。ところが、その写真は理央たち4人のものではなく、ひとりの男性のセルフポートレートと思われる写真だった。袋に書かれた名前は“オザワコウキ”、店員が“オザワ”間違いで写真を渡したのだった。しかし、それらの写真を見た理央は光輝に興味を持ち、さっそく連絡して写真を交換するために会う約束をする。
 光輝に会った理央はたちまち光輝に惹かれ、以来光輝が日本史を教える大学の研究室へ訪れるようになる。光輝もまた、他人との繋がりを作ることを頑なに拒否していたが、理央と触れるうちに次第に本気で理央との恋に落ちていく。けれども、頭の中に爆弾を抱えた光輝と理央との恋愛は、確実に終わりに向かって進んでいった。そしてある日、突然光輝は理央の前から姿を消してしまう・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    最近流行り(?)のケータイ小説を映画化した作品。ケータイ小説といえば、今まで『恋空』にしろ『赤い糸』にしろ、面白いと感じたためしがないのだが、この作品は少なくとも前述の2作品よりは遥かにまともな作品になっていると思う。そして、そう感じた最大の理由は、おそらく谷原章介の存在なのだろう。もしこれが佐々木希扮する主人公の主人公の理央の相手役が彼女と同世代の俳優であれば、評価は下がったのではないかと思う。そこへ敢えて年齢の離れた谷原章介を抜擢することで、作品全体が引き締まってメリハリも生まれたのではないだろうか。つまり、彼はこの作品において主人公の相手役であると同時に、作品全体の箍(たが)の役割をも果たしているのだと思う。
 とは言え、やはり中身は数多あるケータイ小説の域を出ていない。ケータイ小説に必ずと言っていいほど登場する「不治の病」や「レイプ」、「投身自殺」が、お約束のようにこの作品でも描かれていて、正直「またかよぉ・・・・・」と観ながら溜息をついてしまった。結局、ケータイ小説は携帯電話という誰もが持っているメディアで容易に読むことができる手軽さと、その内容の過激さ、これでもかとたたみ掛けるような事件の連続、それらによって読者を集めてはいるものの、中身はどれをとっても似たり寄ったりで死を絡めなければ読者の心を動かせないように思えて仕方ない。あの『あるジャーノンに花束を』を読んだ時の深い感動・感銘や、『家畜人ヤプー』を読んだ時の救いようのない嫌悪感など、良くも悪くも読者の気持ちを根底から大きく揺り動かすような力を持つ作品には出会えないのだろうな、きっと。
 けなしてばかりいるようだが、映画としての出来は星8個という評価からもわかる通り、決して悪くない。谷原章介に関しては上にも書いた通りさすがの演技達者ぶりを見せてくれているし、映画初主演の佐々木希の演技も悪くない(そう言えば佐々木希と谷原章介って、すでに『ハンサム★スーツ』で共演していたことに後になって気がついた)。ラストがこの手の作品にありがちな悲劇的な終わり方ではなく、一種の爽やかさを伴って終わっているのが印象的だった。