評     価  

 
       
File No. 1126  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2009年12月26日  
       
製  作  国   イギリス / アメリカ  
       
監      督   ジャン=マルク・ヴァレ  
       
上 映 時 間   102分  
       
公開時コピー   18歳で即位し、英国を最強の国家に導いた若き女王。その愛と真実の物語。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   エミリー・ブラント [as ヴィクトリア女王]
ルパート・フレンド [as アルバート公]
ポール・ベタニー [as メルバーン卿]
ミランダ・リチャードソン [as ケント公爵夫人]
ジム・ブロードベント [as ウィリアム王]
トーマス・クレッチマン [as ベルギー国王レオポルド]
マーク・ストロング [as ジョン・コンロイ]
イェスパー・クリステンセン
ハリエット・ウォルター
ジュリアン・グローヴァー
マイケル・マロニー
ミケーラ・ブルックス
 
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あ ら す じ    19世紀のイギリス。のちにイギリス史上最も輝かしい時代を築き上げた女王と呼ばれたヴィクトリアは、病に冒されていつ倒れるかもわからないウィリアム王の王位継承者として、様々な思惑に取り囲まれながらも強い意志を持った女性として成長した。そんなヴィクトリアを意のままに操ろうと画策していたのが彼女の母ケント公爵夫人で、彼女は夫・侯爵の亡き後、その個人秘書であったジョン・コンロイと深い関係にあり、彼の思うままに娘に摂政政治を承認させようとしていたのだった。
 一方、ヴィクトリアの叔父にあたるベルギー国王レオポルドもまた、英国王朝との関係を堅固なものとするべく、次期女王の夫の座の候補者として甥のアルバート公をヴィクトリアの元へと送り込んだ。ところが、ヴィクトリアの美しさに強く惹かれたアルバートは、ヴィクトリアに対する駆け引きをやめて叔父の野望よりも自分の気持ちに素直に従うことを選んだ。そして、ヴィクトリアもまたアルバートに対して友人以上の好意を抱くのだった。アルバートはヴィクトリアに対して手紙を取り交わす約束を取り付けて、ドイツへと帰国していった。
 ウィリアム王がひとつだけ気にかけていたのは、ケント公爵夫人とコンロイの影響下からヴィクトリアを引き離して王位を譲ることだった。そんな王の思惑に乗じてヴィクトリアの信頼を得たのは、現首相のメルバーン卿だった。彼はヴィクトリアの個人秘書になることを申し出て、ヴィクトリアの周囲をすべて自分の息のかかった者で固めていく。そして、1837年6月20日、ウィリアム王が逝去しヴィクトリア女王が誕生した。しかし、女王として知識も経験もないヴィクトリアの執政はすべてメルバーンに頼りきりとなってしまう。
 ヴィクトリアに即位以来初めての危機が訪れた。政権が交代し、メルバーンが失脚してしまったのだ。そして、メルバーン色を一掃しようとした新首相のピールをヴィクトリアは感情的に拒絶してしまい、新聞は「憲法の危機」「女王が首相を無視」などと王室を攻撃し世論を煽った。そんなヴィクトリアの心の支えとなったのが、アルバートからの手紙だった。アルバートを呼び寄せたヴィクトリアは彼にプロポーズし、ようやく2人は晴れて結ばれたのだった。しかし、それでもなおヴィクトリアにとって夫のアルバートは、あくまで“女王の夫”に過ぎず、アルバートが政治に関わろうとしたことがきっかけで、2人の間に軋轢が生じるようになるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『サンシャイン・クリーニング』でエイミー・アダムス扮するローズの妹・ノラを演じたエミリー・ブラント主演の史実に基づく作品。史実だから展開を云々しても意味はないが、しかし脚本次第ではもっと違う印象を与える作品になったのではないか。エミリー・ブラントは前述のノラとは正反対の清純なイメージの役柄が似合っていたし、アルバート公を演じたルパート・フレンドの爽やかな演技も良かったのだが、今ひとつ盛り上がりに欠けるのが残念だ。
 そもそも私は、それほど世界史に詳しいわけではないから、ヴィクトリア女王が歴史上一体どういう役割を演じたのかもわからないのだが、この作品を観終えて「一体どこが世紀の愛なのだろうか?」と疑問に感じたのは事実。ヴィクトリアとアルバートの2人が互いに深く愛し合っていたのはわかるが、2人の恋には障害もなく誰はばかることなく愛をはぐくむことができたというのでは、何のドラマ性もなく寂しい限りだ。エンディングの字幕にはヴィクトリア女王が英国王室至上最長の在位期間64年を誇り81歳で死去したのに対し、アルバート公は42歳の若さでチフスのために亡くなったとあったが、であるならば最愛の夫を失ったヴィクトリアの悲しみまでを描いた方が良かったのではないか。そうすれば副題である『世紀の愛』も生きてきたと思うのだが。
 盛り上がりに欠けると感じたもうひとつの理由は、メルバーン卿は悪人なのか善人なのか、裏で己の私利私欲のために画策していたのかそれとも純粋にヴィクトリアのためを思ってアドバイスをしていたのか、その辺りがはっきりしない点にあるように思われる。私は善意に、つまり彼は善人でありヴィクトリアのために良かれと考えて行動していたと解釈したのだが、オフィシャルサイトの解説を読むとどうもそうではないらしい。しかし、作品を観た限りではハッキリと悪役と言えるのはヴィクトリアの実の母・ケント公爵夫人とジョン・コンロイだけだ。けれども、彼ら2人の影響力は女王に即位したヴィクトリアにはもはや及ぶこともない。これでは盛り上がりに欠けると感じてしまったのもやむを得ないだろう。
 ちなみに、私個人の希望としては、ヴィクトリア女王をズーイー・デシャネル、アルバート公をオーランド・ブルームあたりが演じてくれれば、それだけで星の数が増えていたかもしれない(笑)。