評 価
File No.
1131
製作年 / 公開日
2009年 / 2009年11月21日
製 作 国
日 本
監 督
篠原 哲雄
上 映 時 間
84分
公開時コピー
あっちやこっちから風が吹いて来て、
それがくるりと一つのつむじ風になる
。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
八嶋 智人
[as 私]
月船 さらら
[as 橘奈々津]
下條 アトム
[as 帽子屋の主人・桜田]
スネオヘアー
[as 喫茶店のマスター・タブラ]
芹沢 興人
[as 果物屋の店主]
田中 要次
[as 古本屋の親方]
朝加 真由美
[as 喫茶店の客]
入江 若葉
[as 私の母]
生瀬 勝久
[as 私の父]
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あ ら す じ
函館の月舟町のとある十字路の角にある、ちょっと風変わりな食堂。
私
が店に入ると、そこには毎夜といっていいほど集う常連客たち、同じアパートに住む売れない舞台女優の
奈々津
さん、
古本屋の親方
、
果物屋の店主
らの中で、
帽子屋の桜田
さんがただの万歩計を“二重空間移動装置”だと称して演説を打っていた。彼は今、その装置のおかげで実はコペンハーゲンにいるという。
雨降りについて研究し皆から「先生」と呼ばれる私には、幼い頃に行方知れずとなった売れない手品師の
父
がいた。父の記憶は、通称
タブラ
さんの喫茶店でエスプレッソを飲んで「苦い、旨い」と言ったこと、そして、その父が最後に見せてくれた自分自身を完全に消し去るという手品だった。
ある日、私はいつものように食堂に行った際に、奈々津さんを怒らせてしまった。いつまでたっても主役が回ってこない彼女に渡すように頼まれた、脇役で出演する芝居のチラシを渡してしまったことに加えて、私がメニューを決めるのに躊躇してしまったことが原因だった。どうやら彼女は優柔不断な人間が嫌いなようだ。怒って食堂を出て行ってしまった奈々津さんだったが、後日その彼女から頼み事をされることになるとは思ってもみなかった。
その日、私が帰宅するとドアの前で奈々津さんが私を待ち受けていた。彼女を部屋に招き入れると、「お願いがある」と言って切り出したのは、自分のために一人芝居の脚本を書いて欲しいということだった。どうやら、食堂で学生時代に演劇の脚本を書いた話をしたのが、桜田さんから奈々津さんに伝わったようだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
上映館であるユーロスペースに行かなければと思いつつ忙しさに紛れて、気がついたら公開が終了してしまっていた作品だったが、偶然年明けから地元のシネコンで公開が始まったために何とか劇場で観ることができた。異国情緒が漂う函館の街での、ほんの些細な取るに足らない出来事を描いた大人のファンタジーで、観ていてなぜか非常に心地のいい気持ちが暖まるような作品だった。
八嶋智人の主演作は『秋深き』に続いて2作目となるが、前作よりもさらに彼のアクの強さが押さえられていたのが良かった。自分の役回りを的確に把握して演技できるという、彼の演技力の高さの表れだと言えるだろう。そして、久しぶりのお目見えとなった下条アトムの演じる、お得意の飄々としたキャラクターの桜田さんの言葉が、台詞を喋っているというよりは彼自身の言葉として淡々と語られていて、それが故に実に味わい深く感じる。
売れない女優の奈々津を演じた月船さららは初めて観る女優だったが、実は宝塚の男役出身らしい。月船さららという芸名は、この月舟町が舞台となるこの作品からの命名なのだろうか。可愛いと言っては失礼に当たるかもしれないが、彼女が演じる橘奈々津というキャラクターは本当に可愛く見えて、彼女の存在がこの作品の要であったことは間違いないだろう。そして、いつも不気味で強面なキャラが多い田中要次や、顔つきに似合わない繊細なキャラクターの果物屋主人らが相俟って出来上がった作品は、それぞれのキャラが旨く調和して上質の一品となっている。