評     価  

 
       
File No. 1134  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年01月16日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   板尾 創路  
       
上 映 時 間   94分  
       
公開時コピー   その逃亡、ワケあり。
救世主板尾創路が放つ、“獄”上クライム・ラビリンス!
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   板尾 創路 [as 鈴木雅之]
國村 隼 [as 金村]
ぼんちおさむ
オール巨人
木村 祐一
宮迫 博之
千原 せいじ
阿藤 快
津田 ェ治
笑福亭 松之助
石坂 浩二 [as 上羅]
 
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あ ら す じ    昭和初期。単なる無銭飲食の罪での逮捕にもかかわらず、曰く付きの囚人として刑務所へ移送されてきた男がいた。男の名は鈴木雅之、後に脱獄王と呼ばれるほど、その驚異的な身体能力と意表を突く手段を使って脱獄を成功させる男だった。刑務所に移送されたのも、実は拘置所を二度も脱獄したことが理由だった。
 鈴木に関する曰くを知る看守たちは、口々に「ここは拘置所とは違う」と鈴木が脱獄することなど予想だにしていなかった。しかし、収容されてから1時間もたたずに、鈴木は見度と脱獄を成功させてしまう。ところが、簡単に捕まって再び刑務所に連れ戻されてしまう鈴木。そんな鈴木の脱獄を見て疑問を抱いていたのは、看守長の金村だった。鈴木の経歴を調べ、いつも脱獄後は線路沿いという発見され安い場所で捕まるべくして捕らえられていたのだ。そして、前回の脱獄は単なるデモンストレーションだとばかり、再び鈴木は刑務所の脱獄を果たす。そして、金村が予想した場所、すなわち前回と同じ線路沿いでやはり確保されるのだった。
 やがて日本は太平洋戦争に突入した頃、金村は司法省の上羅に引き抜かれて政府高官の一員となっていた。そして金村はふと目に留まった書類に鈴木雅之の名が監獄島送りの対象者として記されているのに気づく。監獄島とへ収容される囚人たちは戸籍からも抹消され死ぬまで島を出ることができないという「最後の刑務所」だった。今回は鈴木ですら脱獄は不可能だと金村には思えたが、実は鈴木にとってはそれこそが目的だったのだ。果たして、鈴木は監獄島で一体何を企てようとしていたのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    『星の金貨』のように主人公が聾唖障害者であるとか、あるいは動物が主人公の作品であるならともかく、一応は人間の健常者である主人公の台詞がまったく一言もない作品を観たのは、おそらくこれが初めてだと思う。板尾創路扮する脱獄王・鈴木雅之(元ラッツ&スターのボーカルと同姓同名なのは偶然?・・・・・だろうな)が無口な男という設定はわかるが、あれでは無口を通り越して完全に“死んだハマグリ”だ(笑)。今まで板尾創路の演技は何度も観てきたが、私には演技達者だと見えた彼のこと、吉本の某お笑い芸人で昨年監督2作目が公開になった松○人○だったらいざ知らず、台詞を削る必要は彼の場合は全くない。そして、台詞が一言もないが故に何かひとつの目的に取り憑かれたように脱獄を繰り返しているのはわかるが、それ以外の感情が一切伝わってこないのはツラいところだ。
 作品は徹底的に笑いの要素が排除され、鈴木が脱獄する様子とその後なぜかすぐに捕獲されてしまう顛末が描かれている。観る者に「脱獄が目的ではない。何かある」と思わせておいて、一気にクライマックスへと転じる構成は上手いと思う。そして、ラストのクライマックスでは鈴木の目的が明らかになり、「えっ、ただそれだけのこと?」と以外にアッサリした終わり方に物足りなさを感じたのも束の間、実はとんでもない大どんでん返しが用意されていたとは・・・・・。映画にまでオチをつけたくなるのは、やはり吉本の習性なのだろうか。それまでがシリアスに展開してきただけに、その間抜けさに笑っていいものか、それともその虚しい結末を悲しんでいいものなのか、判断に苦しんでしまう。あの終わり方は、おそらくは賛否両論に分かれるのではないだろうか?國村隼扮する金村の最後の台詞「鈴木、間違ってるぞ」が非常に滑稽でいい味を出していたのが、強く印象に残っている。