評     価  

 
       
File No. 1135  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年01月16日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   行定 勲  
       
上 映 時 間   131分  
       
公開時コピー   夫婦には「さよなら」の前に、やらなければならないことがある。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   豊川 悦司 [as 北見俊介]
薬師丸 ひろ子 [as 北見さくら]
水川 あさみ [as 吉沢蘭子]
濱田 岳 [as 古田誠]
城田 優 [as 西田健人]
津田 ェ治
奥貫 薫
井川 遥 [as 井川ゆり]
石橋 蓮司 [as 原文太]
 
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あ ら す じ    カメラマンの北見俊介は、実力もありかつては売れっ子としてもてはやされてこともあったが、今はまともに仕事もせずに怠惰な生活を送っていた。駄目亭主の俊介に文句を言いながらも、妻のさくらは今まで俊介に連れ添ってきた。それでも俊介は、1年前のクリスマス直前に沖縄を旅行して以来、1枚も写真を撮ることをせずに、彼を諫めるさくらに対して悪態すらつく始末だった。
 ある日、さくらが友達と箱根旅行に行く準備をする中、俊介の携帯が鳴った。相手は女優の卵の吉沢蘭子で、バーで知り合った時に彼女の写真を撮ることを約束したのだ。旅行に出かけたさくらと入れ替わりに蘭子が訪れると、鬼の居ぬ間に蘭子と・・・・・などと考えて彼女にシャワーを浴びさせるまでにこぎ着けた俊介だったが、そこへさくらが帰ってきてしまった。電車の時間を1時間間違えていたというのだ。結局俊介は蘭子との浮気を諦め、写真撮影も助手の古田誠に任せてしまう。
 さくらが箱根旅行に行っている間、気ままな独身生活を送っていた俊介も、何日経ってもさくらが帰ってこないことに苛立ち始める。誠や北見家に出入りしているオカマの原文太は俊介をやきもきしながら見守っていたが、そんな俊介の気持ちに拍車をかけたのは、さくらを訪ねてやってきた青年西田健人の存在だった。以前からさくらと手紙のやりとりをしていた西田は、俊介に対して堂々とさくらへの思いを吐き出すのだった。
 そんな折、突然帰宅したさくらは俊介に「1年前から好きな人がいるから別れて欲しい」と切り出す・・・・・
 
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たぴおか的コメント    「最近観なくなったな」と思っていたのだが、久しぶりにこのパターンの作品に遭遇することとなった(どのパターンかはネタバレになるため想像にお任せします)。最近ますますオヤジキャラに磨きがかかった感のあるトヨエツは、金髪が全然似合ってない(笑)。対する妻のさくらを演じた薬師丸ひろ子だが、実を言うと私はこの作品で初めて彼女が可愛いと感じてしまった。実は、映画『野生の証明』でデビュー以来同年代の男性を虜にし、彼女が受験のために駿台に通ったという情報が入れば受験生も浪人生も駿台に殺到し、彼女の入学がそれまではほとんど無名に近かったような玉川大学に決まると、突如玉川大入試の競争率が驚異の140倍にまで膨れあがるなど、数々の神話を作り出してきた彼女だったが、私は普通の女の子だとは思えても、予備校や大学に一緒に入りたいなどと思うほど彼女を可愛いと思ったことは一度もなかったのだ。
 そんな彼女がこの作品ではたまらなく可愛く見えたのは、やはり彼女の演技の上手さに起因していることは間違いない。それに加えて、トヨエツ扮する俊介のあまりにぞんざいな妻に対する態度に腹が立ち、彼女に同情してしまったことも理由の一つではある。そんな俊介の態度に我慢の限界を越え、薬師丸ひろ子扮するさくらが家を出てしまい、初めて俊介がさくらの大切さを知る・・・・・おそらくはそんな展開だと予想していたら、これが実はとんでもない方向へと展開したのだ。もっとも、途中「もしかして?」とうすうす感じてはいたのだが。
 この作品で最も驚かされたのは、あの強面の石橋蓮司がオカマを演じていることだ。そして、硬派軟派なんでもあれの彼の演技力はさすがだと改めて感心させられた。俊介の助手・誠からは「ブンさん」、俊介からは「オッサン」と呼ばれる、石橋扮するオカマの文太と俊介との関係についての説明が一切ないのだが、それにも理由があったことが後半明らかになる。そう、ブンさんと俊介は意外な関係だったのだ(と言っても、俊介とブンさんが恋仲だったなどというギャグ的な関係ではない)。そして、その関係が明らかになって初めてなぜブンさんがあれほど俊介に肩入れするのかも理解できるのだ。
 これは夫婦の関係以外にも言えることだが、「相手が大切だと思っている気持ちは相手に通じている」と思うのは極めて独善的な思考であって、相手が大切であればそれを言葉か態度に表して相手に伝えなければならない。そして、もしその気持ちが相手に伝わっていないならば、それは相手を何とも思っていないのと同じことなのだ。そして、俊介がさくらに自分の思いを告げた時はすでに手遅れだった・・・・・いや、ギリギリ間に合ったと言っていいのだろうか?