評     価  

 
       
File No. 1143  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2010年01月30日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   コートニー・ハント  
       
上 映 時 間   97分  
       
公開時コピー   ニューヨーク州最北部
2人の母親は家族のために
凍てついたセント・ローレンス川を渡り、
犯罪に手を染めていく・・・
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   メリッサ・レオ [as レイ・エディ]
ミスティ・アッパム [as ライラリトルウルフ]
チャーリー・マクダーモット [as TJ]
マーク・ブーン・ジュニア [as ジャック・ブルーノ]
マイケル・オキーフ
ジェイ・クレイツ
ジョン・カヌー
ディラン・カルソーナ
マイケル・スカイ
 
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あ ら す じ    カナダとの国境であるセント・ローレンス川に面する、ニューヨーク最北の町。2人の子供を抱える母親レイ・エディは、念願だった新しいトレーラーハウスの購入資金をギャンブル依存症の夫トロイに持ち逃げされてしまう。夫の行方を探すレイは、夫が行きつけだったビンゴ会場で夫の車を運転する女を見つけて後を追った。たどり着いた先はモホーク族の保留地で、その女ライラ・リトルウルフは、車を盗んだのではなくキーが付け放しだったので拾ったと主張する。
 ライラには1歳になる子供がいたが、義理の母に強引に引き取られていた。子供と一緒に暮らすためにもまとまった資金が必要だったライラは、ビンゴ会場の受付という仕事の他に、アジアからの不法移民を密入国させるという危険な裏仕事に手を染めていた。移民を運ぶには車が必要だったライラは、レイに車を$2,000で売らないかと持ちかけてくるのだった。
 ライラの申し出につられて車で訪れた先は、ライラが手を染めていた裏仕事の依頼人の元だった。ライラは白人が運転する車は警察の検問を受けないことに目を付け、レイを裏仕事のパートナーに引き込もうとする。夫に持ち逃げされた新居の購入代金を稼がねばならないレイは、移民ひとりにつき$1,200の報酬という誘惑に抗しきれず、ライラに協力して2人の不法移民を運ぶ決意をする。移民をトランクに乗せたレイの車は、厚く凍りついたセント・ローレンス川を車で渡り、無事不法移民を送り届けることに成功した。
 互いに不信感を抱きながらも、レイとライラはクリスマスの夜に再びペアを組んで移民を運ぶことになった。ところが、移民がパキスタン人夫婦だと知ったレイは、預かったバッグの中身が危険物ではないかと疑い、道中でバッグを道ばたに捨ててしまった。ところが、夫婦を送り届けた先で、バッグの中身が赤ん坊だったことを知らされた2人は、やむなく来た道を引き返しバッグを回収に向かった。
 幸いバッグは見つかったものの、極寒の雪上に置き去りにされた赤ん坊はすでに息をしていなかった。ところが、ライラが助手席で抱きかかえていた赤ん坊が息を吹き返し、赤ん坊が戻ったことにパキスタン人夫婦は泣いて喜んだ。そして、この事件をきっかけにライラの態度に変化が起きた。少しでも早く我が子を取り戻すために、まともな職に就いて裏仕事から足を洗ってしまったのだ。
 一方のレイは、2人の子供のためにもどうしても新居を諦めきれず、もう危ない仕事はしないと渋るライラを「これが最後だ」と約束して半ば無理矢理引きずり込んで、最後の裏仕事に望むのだった。ところが、この最後の仕事には、思いがけない運命の罠が待ち構えていたのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    子供2人を抱えて夫に家の購入資金を持ち逃げされた母親と、夫を失い子供を義理の母に取られてしまった母親・・・・・私にはこの手の設定に対する免疫が未だにないらしい。レイは新居(と言ってもトレーラーハウスだが)のために貯めておいた資金を持ち逃げされてしまい、せっかく運んできた新居をそのまま持ち帰ろうとする業者に「近く1ドルショップの副店長になるから」とまで言ってすがりつく、その姿があまりに悲しい。その実は、確かにキャリアからいったら副店長に昇格してもいいものの、店長からはあくまで腰掛け程度にしか見られておらず、副店長への昇格など夢のまた夢だ。しかも、たかだか1ドルショップのパートのこと、もらえる給料もたかがしれている。そんな先の見えない、いわゆる“Hand to mouth”の生活を送る彼女からは“希望”の二文字は見えてこない。
 一方のライラだが、彼女の根底には人種の違いというコンプレックスが強く根付いていて、そのために無意識に白人を警戒し敵視さえする。2人に共通するのは子供を抱えた夫のいない母親だというだけで、そんなレイとライラの出会いは当然ながら友好的になどというわけにはいかない。しかし、2人に唯一共通する子供のためという強いモチベーションから、呉越同舟のような共同戦線を張ることになる。辛うじて均衡を保っているような2人の関係からは、いつバランスが崩れ破綻してもおかしくないような不安定さが多分に感じられ、そこからくる適度の緊張感が作品にメリハリを与えている。
 最初はレイの立場に立って作品を観ていた私は、当然ながら彼女の夫の車を勝手に使ったあげくそれを正当化するようなライラに強い反感を覚えたのだが、それが途中からは逆転してしまい、いつしかライラに共感を覚えるようになっていた。それは、子供を取り戻すために苦手な眼鏡を買ってまでもちゃんとした職に就こうとした彼女の決心が健気に思えたためであり、そんなライラに再び密入国者を運ぶ仕事をさせようとするレイへの反感からの気持ちの動きだ。そして、そんな観客の心の動きを計算し尽くしたようなラストシーンが非常に強く印象に残っている。レイのトレーラーハウスを訪れたライラが見せた安堵の微笑みに、初めて将来への微かな明るい兆しが見えたような気がした。