評     価  

 
       
File No. 1146  
       
製作年 / 公開日   2007年 / 2010年01月30日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   オーレン・ペリ  
       
上 映 時 間   86分  
       
公開時コピー   これ以上の映画を作ることはできない。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ケイティー・フェザーストン
ミカ・スロート
マーク・フレドリックス
アンバー・アームストロング
アシュリー・パーマー
 
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あ ら す じ    同棲を始めて3年になる、若いカップルのケイティーミカ。ケイティーは教師を目指す大学生で、ミカはデイ・トレーダーだ。ある日ミカは、最新のビデオカメラを購入した。目的は、ずっとケイティーを悩ませ続けてきた不思議な現象を録画して、原因を解明することだった。そしてその日以来、ミカは終日ビデオカメラで録画ケイティーを撮影し、夜も寝室にカメラをセットして寝るようになった。
 そんなミカの行動に触発されるように、次第に不思議な現象はエスカレートしていく。最初は誰もいないはずの部屋で物音がするだけだった怪現象だったが、今ではケイティーは明らかに何かがいる気配や息づかいまでを感じるようになった。2人は霊能力を研究する専門家に相談するが、やがてその専門家すらも自分の専門外だと恐れをなして逃げ出してしまう。夜になると落ち着いて眠ることができずに次第に憔悴していく2人だったが、特にケイティーは昼夜を問わずに何物かの存在に怯えるようになる。そして、やがて衝撃の結末が訪れるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    わずか15,000ドル程度の制作費で作られたにもかかわらず、話題が話題を呼んでついに全米興行成績1位にまで昇りつめ、興行収入も1億ドルを超えたという、前評判だけが異様に先行した感のある作品。掲示板を見ていると日本でのあまり評判はよろしくないようで、私も結論を先に言わせてもらえば怖いか怖くないかと尋ねられれば正直怖くないと答えるしかない。ただ、単なる駄作だったらさすがに全米1位にはなれないわけで、金を使わない代わりに知恵を使い工夫を凝らしたであろうことは間違いない。そして、『ブレアウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド』に続いて柳の下のドジョウを狙ったような姑息な作品ではないだろう。
 『ブレアウィッチ・プロジェクト』はこの手のジャンルではパイオニア的な作品であるが、それと比較するとやたら『B.W.P.』ではハンディカメラの映像が揺れるのに対して、この作品では固定カメラで撮影されたという設定のために落ち着いてスクリーンに集中できると同時に、その設定が別の大きな効果を生み出している。最初はわずかな物音がする程度の怪現象が次第にエスカレートしていくために、観客は「次は何が起きるんだろう?」と好奇心を刺激され、ほんの些細な動きすら見逃すまいと知らず知らずのうちに目がスクリーンに釘付けになってしまう。これは固定カメラで撮影された映像であればこそで、ドアがわずか数センチ動いたりとか、ベッドのシーツが膨らんでめくれ上がったりとか、そんな取るに足らないような変化にも過敏に反応してしまうのだ。
 ただ、心理的ホラーにしてもあまりに見せ場が少ないというのは如何ともし難い事実。何か起きそうで何も起きない、そんな観客のじらし方は良くも悪くもこの作品の真骨頂なのであって、じらしにそのまま引きずられて行けばいいのだが、それを退屈だと感じてしまったら最後、私もよく陥る「金返せ」モードに突入してしまうんだろうな。そんな「見せない」テクニックが最も生かされているのがラストシーンで、階下に降りていったケイティーの悲鳴を聞いたミカが、それまでは必ず携行していたカメラも置き去りにケイティーのもとに駆けつけてしまい、絶叫が聞こえるだけで何が起きているのかがわからない。そこで下手なCGの映像を見せつけられて幻滅することもなく、「見せない」ことを観客が不自然に感じないように上手くかわしている。犯罪捜査に喩えるならば状況証拠ばかりで物的証拠が何もないような状況であって、観客はそれぞれ妄想を膨らませ、自分が作り上げた妄想に怯えることになるわけだ。ちなみに、作品のラストではビデオの映像が途切れ、その後エンド・クレジットが流れるのかと思ったら、その後何分かの間何も写っていない暗闇のようなスクリーンを見せられ、超常現象が起きる時のBGMだけが微かに流れていて、その間の緊張感だけが実はメチャクチャ怖かった。何も映っていないスクリーンをあれほど身動きもできないまま凝視させられたのは初めての経験だった。