評     価  

 
       
File No. 1147  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年02月05日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   クリント・イーストウッド  
       
上 映 時 間   134分  
       
公開時コピー   ひとつの願いが、
ほんとうに世界を変えた物語。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   モーガン・フリーマン [as ネルソン・マンデラ]
マット・デイモン [as フランソワ・ピナール]
トニー・キゴロギ
パトリック・モフォケン
マット・スターン
ジュリアン・ルイス・ジョーンズ
アッジョア・アンドー
マルグリット・ウィートリー
レレティ・クマロ
パトリック・リスター
ペニー・ダウニー
 
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あ ら す じ    1964年に反アパルトヘイト活動により国家反逆罪で終身刑を言い渡され、ロベン島に収監されたネルソン・マンデラは、ついに1990年に27年間に及ぶ獄中生活から解放される。そして、1994年に行われた南アフリカ共和国初めての全人種参加選挙で勝利したマンデラは、初の黒人大統領に就任する。当時の南アフリカでは、アパルトヘイトが撤廃されたとはいえ依然として白人と非白人間の対立は何ら変わることなく存続しており、国家は分断された状態にあった。難問が山積している国政を執るにあたり、マンデラは最優先して取り組むべき問題が国民の融合であると考えていた。そしてそんな彼が目を付けたのは、翌年に南アフリカで開催されるラグビーのワールドカップだった。
 当時の南アフリカ代表チームのスプリングボクスは国の恥とまで蔑まれ、長らく国際試合からも遠ざかり、その弱体化には目を覆うものがあった。マンデラが観戦した試合では、白人は人はスプリングボクスを応援するが、黒人は敵チームを応援するような有様だった。マンデラはスプリングボクスがワールドカップで勝ち抜くことにより白人と非白人がひとつにまとまることができると確信し、チームの主将フランソワ・ピナールを官邸に招いた。そして、国をひとつにまとめるためにはワールドカップでスプリングボクスが優勝することだと静かだが熱くフランソワに訴えかけた。マンデラの人柄に心を打たれたプランソワは、チームのメンバーを鼓舞し、やがて開催されたワールドカップでは、評論家の下馬評を覆して決勝にまで駒を進めるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この作品を最初に知った時、おそらくは南アのアパルトヘイトからの脱却を描いた社会的な作品かと思い、劇場で観るかDVDで済ませようか思案していたのだが、監督が御大クリント・イーストウッドと知り、早速初日のレイトショーで観ることとなった。先日の『ラブリーボーン』のコピーには「ラブリーボーンで初泣き」とあったが、私の場合は「インビクタスで初泣き」とでも言うべきか、特に後半は目頭が熱くなり放しだった。それまで白人とカラードを隔てる深い溝が取り払われ、人種や言葉に関係なく全国民が歓喜する、そんな光景を観て感動しない人間がいるだろうか。
 齢79歳にして制作意欲が衰えるどころか、ますます意気盛んになっているようにすら思えるイーストウッドのモチベーションは一体どこからくるのだろうか?凡庸な監督が撮れば途中で間延びしてクライマックスにたどり着く頃には飽きさせてしまいかねないところだが、この作品では観る者の興奮が徐々に高められていきクライマックスで一気に解き放たれる、その時の爽快感は喩えようがない。
 モーガン・フリーマンはマンデラ役としてこの上ないキャスティングだったと言える。観る前はフォレスト・ウィッテカー辺りが演じても良かったのではないかと思ったが、作品を観てみるとそんな考えは完全に消し飛んでしまった。穏やかな中にも強い意志と不屈の精神を秘め、相手に与える赦しこそが何にも勝る最大の武器であると説くマンデラを演じられるのは、モーガン・フリーマン以外にはいないとさえ思える。そして、マンデラからW杯優勝という難題を課せられたフランソワ・ピナールを演じたマット・デイモンの熱演も見事だった。
 それにしても、これほどまでにストレートなスポーツ映画といい、観る者の興奮を確実に高めていくような手法といい、イーストウッド監督作品には珍しいタイプの作品ではないだろうか。そこには、過去の実績に決して満足することなく、常により上を目指すという彼の飽くなき映画への探求心が表れていると言っていいだろう。ひとつだけ欲を言うならば、エンド・クレジットでラグビーに興じる南アの子供達の映像が映されるが、黒人の子供達だけだったのが残念で仕方ない。