評     価  

 
       
File No. 1149  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年02月05日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   レベッカ・ミラー  
       
上 映 時 間   98分  
       
公開時コピー   人生半分過ぎたら、やりたいことだけやろう。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ロビン・ライト・ペン [as ピッパ・リー]
アラン・アーキン [as ハーブ・リー]
マリア・ベロ [as スーキー・サーキシアン]
モニカ・ベルッチ [as ジジ・リー]
ブレイク・ライヴリー [as ピッパ・サーキシアン]
ジュリアン・ムーア [as カット]
キアヌ・リーヴス [as クリス・ナドー]
ウィノナ・ライダー [as サンドラ・ダラス]
マイク・バインダー [as サム・シャピロ]
ティム・ギニー
ロビン・ワイガート
ライアン・マクドナルド
ゾーイ・カザン
シャーリー・ナイト
 
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あ ら す じ    50歳のピッパ・リーは、30歳も年上のベストセラー作家である夫ハーブ・リーと2人の子供に囲まれて、一見何不自由ない幸せな生活を送っているように見えた。友人たちからも「理想の妻」と褒め称えられる彼女だったが、長年の付き合いの友人ですら本当の彼女のことを知る者はいなかった。そして、誰もが口にする「理想の妻」を演じ続けてきたことに、ピッパは疲れを感じるようになっていた。
 薬物中毒からくる喜怒哀楽があまりに激しい母親スーキー・サーキシアンに育てられたピッパは、10代のある日母と決別するために家を出る決意をする。彼女が頼った先は、レスビアンの叔母の元だった。そして、叔母の恋人カットの影響を受けたピッパは、やがて麻薬とセックスに溺れ自堕落な生活に陥っていく。そんな彼女の救いとなったのが、今の夫である出版王ハーブ・リーとの出会いだった。自分より30歳も年上の大人でありながら自由奔放なハーブを相手にに、ピッパは恋に落ちたのだった。
 しかし、当時既にハーブには妻ジジがいて、それはピッパの恋を実らせるにはあまりに大きな障害だった。ところが、皮肉にもジジの自殺という不測の事態によって、ピッパは念願のハーブとの結婚生活を手に入れた。やがて2人の子供にも恵まれ、幸せな結婚生活を送るピッパだったが、事件はピッパの心に深いトラウマとなってその後も彼女を苦しめるのだった。
 そしてピッパが50歳になった時、ハーブが心臓発作で何度か倒れたことをきっかけに、住み慣れたマンハッタンを離れてコネチカットにあるコミュニティに移り住んだ。そこは第一線を退いた引退者が集うコミュニティで、高齢者ばかりの住民の中で50歳のピッパは明らかに浮いて見えた。そんなピッパの前に現れたのは、近所の女性の息子で35歳の“生焼け”ことクリス・ナドーだった。次第にピッパはクリスに興味を持つようになり、一方ではハーブがよりによってピッパの友人のサンドラ・ダラスと浮気している現場を目の当たりにしてしまう。
 ハーブからは財産をすべて渡すからと離婚を迫られ、今までピッパが信じてきた「幸せ」はあっという間に崩壊してしまった。そして、途方に暮れるピッパに追い打ちをかけるように、ハーブが再び心臓発作で倒れ、医師からはこのまま意識が戻ることはないと宣告されてしまう・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ポスターを見私はてっきり何組かのカップルの恋愛をオムニバス形式で描いた作品だと勘違いしていたのだが、実は一人の女性の半生を描いた作品だった。そんな勘違いをした理由のひとつは『50歳の恋愛白書』という的外れなタイトルで、「恋愛白書」というからには複数の50代の恋愛が描かれていると勘違いするのもやむを得ないだろう(←自己弁護^-^;)。まぁ、私の「白書」という言葉に対する一方的な思い込みなのかもしれないが、少なくとも原題を直訳して『ピッパ・リーの私的な生活』とでもした方がよっぽどマシじゃないかな。
 主人公ピッパ・リーを演じたのは、オスカー俳優ショーン・ペンの妻ロビン・ライト・ペンで、撮影当時43歳の彼女だが、50歳という設定でも全く違和感を感じないのは巧みなメイクのおかげに加えて、アップを多用して皺を強調したためだろうか。面白いのは、35歳でピッパより15歳下という設定のキアヌ・リーヴス扮するクリスが、実年齢は10歳も上の45歳であるにもかかわらず、やはりごく自然に見えることだ。確かにキアヌは年齢不詳の顔をしているのは事実だけど(笑)。
 豪華なキャストをチョイ役(とは言えないかな?)で惜しげもなく起用したキャスティングは特筆すべきだろう。前述のキアヌ・リーヴスに加え、イタリアの宝石モニカ・ベルッチ、私の友人が昔「これほど綺麗な女性は見たことがない」と絶賛していたウィノナ・ライダー、そしてジュリアン・ムーアにマリア・ベロと、錚錚たる顔ぶれだ。彼女たち全員が脇役として主役のロビン・ライト・ペンを引き立てることに甘んじているかと思うと、あまりにもったいなく思えるほどだ。
 誰でも外面と内面に異なる側面を持っているもので、それは決してピッパに限ったことではない。むしろ二面性を持たない者はとどのつまり「公私をわきまえない者」であって、そんな輩は世間から爪弾きにされてしまうだろう。もしその二面を演じることが苦痛になったとしたら、引きこもりにでもなるしかない。ピッパがそんな自分に疑問を持ったとしたら、それは実は夫ハーブとの生活自体に疑問を感じたことに他ならない。ハーブとの結婚生活は確かに幸せだったかもしれないが、果たしてそれが自分にとって最上の選択であったのか、生活が落ち着いて心に余裕が生まれると得てしてそんな事を考えてしまうものだ。おそらくそれはハーブにとっても同じ事で、その現れがサンドラとの浮気(いや、本気?)だったのだ。
 それまで長い年月をかけて築き上げてきた生活、それはこの上ない安住の地であると同時に、倦怠をも生んでしまうものなのだ。ピッパはそこから次のステップへと踏み出すか否かを迷っていたに過ぎないのだ。そんな彼女の背中を押したのがハーブの浮気であり、さらには彼が心臓発作で倒れたことだ。今までの迷いを吹っ切ったピッパは新しいステージへと踏み出すことになったが、その先に何が待っているのか、それは当のピッパ本人にすらもわからないのだ。