評     価  

 
       
File No. 1161  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年02月20日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   荒戸 源次郎  
       
上 映 時 間   134分  
       
公開時コピー   墜ちていくほど、美しい。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   生田 斗真 [as 大場葉藏]
伊勢谷 友介 [as 堀木正雄]
寺島 しのぶ [as 常子]
石原 さとみ [as 良子]
小池 栄子 [as 静子]
坂井 真紀 [as 礼子]
森田 剛 [as 中原中也]
石橋 蓮司 [as 平目]
室井 滋 [as 寿]
大楠 道代 [as 律子]
三田 佳子 [as 鉄]
 
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あ ら す じ    貴族院議員でもある、地元津軽では有名な資産家を父に持つ大場葉藏。何不自由ない生活とひときわ目立つ端麗な容姿に恵まれた彼が周囲と馴染むための処世術、それは道化だった。しかし、彼のそんな道化がクラスメイトの竹一に見抜かれてしまう。葉藏は彼の自宅に訪れた竹一に自分が描いた絵を見せ、葉藏はきっと偉い画家になると言った竹一の言葉を嬉しく思うのだった。
 上京して高等学校へ進んだ葉藏は、公園で写生をしている時に、同じく画家を志す堀木正雄と知り合う。遊び人の堀木に馴染みのマダム律子が営むBAR青い花へ連れて行かれた葉藏は、そこで酒を覚えるようになる。詩人の中原中也と知り合ったのもその店でだった。やがて葉藏は酒に溺れるようになり、堀木と共に放蕩を重ねる自堕落な生活に陥っていく。
 そんな葉藏でも、何かにつけて部屋に訪ねてくる下宿先の女性礼子や金もないのに酒を飲ませてくれるカフェの女給常子らに囲まれ、女に不自由することはなかった。そして、ある日葉藏は自分と同じ寂しさをまとう常子を誘い鎌倉の海に出かけた挙げ句、そこで心中を図った。ところが死んだのは常子だけで、一命をとりとめた葉藏前にも増して生きることのわびしさを感じるようになるのだった。  その後も子持ちの女記者静子の家に居候になるが、相変わらず酒浸りの日々を送る葉藏だったが、そんな彼の人生を大きく変える転機が訪れる。BAR青い花の向かいにあるタバコ屋の娘良子に惹かれ、彼女と所帯を持つことになったのだ。葉藏は良子と共にそれまでにない幸せで穏やかな時間を過ごすが、そんな日々も長くは続かず、やがて彼を再び破滅へと陥れるような出来事が起きるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ズバリ言わせてもらえば、面白くないし尺の長さをかなり苦痛に感じてしまった。主演の生田斗真はドラマ『魔王』の時よりも(髪型のせいか)美形に見えて、主人公・葉藏のイメージにより近いと思われるし、演技も充分に及第点をあげられると思う。また、脇を固める俳優陣も個性派揃いで、本来であれば退屈することなどないように思えるにもかかわらず、やっぱり退屈するのだ。
 私は意図したわけでもないのだが、今まで太宰治の小説に接する機会がなく、これをきっかけに『人間失格』の文庫本でも買って読んでみようかとは思っている。ちょっと面白いと思ったのは、私の聞き違いや勘違いでなければ、作品中にあの『黒い雨』の井伏鱒二や昨年映画化された『蟹工船』の小林多喜二らが登場していたはず。太宰自身は大場葉藏という架空の人物として描かれているのに、井伏や小林、そして森田剛扮する中原中也らは実名を使っても大丈夫だったのだろうか?
 太宰に関してはズブの素人である私だが、そんな私の目から見ても、この作品が太宰の世界観を反映しているとはとても思えない。また、脚本と演出の拙さは否定できず、シーンがあまりに小間切れで切り替わるために、何かのダイジェスト版を観ている程度の感慨しか残らない。例えば、記者の静子と出会うシーンでは、帰り道が同じという理由で静子と葉藏が連れだって堀木宅を辞するのだが、次のシーンでは既に静子の家に居候を決め込んでいたり、タバコ屋の良子に酒を断つと約束したものの守れず、次のシーンでは2人が祝言をあげていたり。2時間という限られた尺の中であれもこれもとあまりに欲張りすぎて、結果的にはそのすべてを台無しにしてしまっている。これはどう考えても、『空へ−救いの翼−』に続く角川映画の失敗作だろう。森田剛扮する中原中也がこの作品を観たならば、「凡庸、凡庸」(作品の中では本当は「茫洋、茫洋」なのでお間違いなく)と言ったであろうことは間違いない(笑)。